見出し画像

羅刹の紅(小説投稿)第九十七話

○あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃つことになった。
 体育大会当日、一般部と赤虎組の戦闘が始まった。苦戦を強いられることを予想し、切風は一般部の三人に次の作戦を指示する。だが、ここで赤虎組が仕掛ける。赤虎組の幹部である御影と燿華が単独で学校に侵入をしたのだ。切風はこれを止めようとするがそこに同じく幹部である有坂が切風を食い止める。そして、御影と燿華はついに金庫にたどり着こうとしていた。

〇本編

結果から言おう。御影の能力により駐輪場の地面には人一人入れるぐらいの穴が開いた。そして、目の前には鉄の板が存在していたのだ。
「これは・・・・どういうことだ!」
 燿華は驚きながら近づく。
「・・・これは金庫の一部だ。金庫はおそらく二百メートル平方はある。これはその一部に過ぎない。」
「すげーー!やべーーー!」
 燿華ははしゃぎながらまるで子供のように(実際子供だが)嬉しがった。
「これで赤虎組は救われる!よっしゃー!」
 彼はもはや勝ちを確信している。
「・・・油断するな。恐らく今の爆発音で学校の奴らが来る。その前に金庫から金を回収するぞ。」
「おけーー!」
 そう言うと御影は再び地面に手を置き、今度は鉄の板を壊した。
 するとどうだろう中には大きな空間が存在していた。そして、輸入の時に使うようなコンテナがいくつも存在していた。もはやその中にお金があるのは確定だろう。
「・・・勝った。」
 御影と燿華は静かに大きな金庫の中に入っていった。中には湿度を保つための加湿器やエアコンなどを除いてすべて鉄でできたあじっけのない構造だ。
「・・・こいつらを俺の能力で運ぶ。これで終わりだ。」
 時間がないからか御影はすぐさま作業にかかった。御影は両手に赤い光を集めるとそのままそれをコンテナの下に放った。そうするとどうだろうか、何と軽々とコンテナが浮いたのだ。
「え!まじかよ!」
「・・・俺は周りの空気を操っているだけだ。そうすればこんなコンテナも動かすことは容易だ。」
「まじかよ!やっぱりあんたすげーーな!」
「無駄口叩いている暇があったらお前は俺のことを護衛しろ。・・・この状態だと俺は両手がふさがってコンテナを移動させるだけで精一杯になってしまうからな。」
「へーー・・・そういうことか・・・」
 燿華はまた何か企んだのか、面白そうな顔をした。

 なら今の状態なら俺が御影さんを倒すことも可能って事っすね

そう言うと燿華は持っている拳銃を御影に向けた。
「・・・なんのつもりだ。」

「いや、もしここであんたを殺せば赤虎組の次期組長の候補を一人潰せるなーと思って。そしたらワンちゃん俺が組長なれるかも!みたいな。」
 燿華はヘラヘラしながら言う。
「多分だけどあんたには勝てる未来はないでしょ?だったら能力を使ってかつ両手が使えない今しか殺せる時はないでしょ!」
「・・・面白い。やってみろよ。」
 正直この状況、有利なのは燿華だ。御影の手にある赤い光は周りの空気を操るためにできている。それを解除するには三秒ぐらいの時間がかかる。一方、燿華は持ってる拳銃の引き金を引くだけだ。それだけで正面にいる御影は死ぬだろう。
「というわけでごゆっくり。」
 燿華は何の躊躇もなく御影の顔に向かって発砲しようとした。
 しかし、順序というのは残酷だ。もしもこのまま燿華が発砲したら本当に今後の物語で御影はいなかったかもしれない。しかし、わずか一秒、いやそれでも長いぐらいの時間差で御影は死なずに済んだ。それも助けたのは味方ではなく敵である。なんとも奇妙なことが起こるものだ。

 お前たちに金はやらん!!!!

 なんともカッコ悪い登場セリフと共に、金庫の端から三人の生徒が別方向から一斉に御影と燿華に向かって走り出した。彼らはそれぞれ武器を持っている。どうみても異常な集団だ。
「な!こいつらどこから湧いてきやがった!」
 燿華はすぐさま拳銃を生徒の内一人に向けた。ただ彼は三分の一ではずれを引いてしまった。向けた先には女子であるにもかかわらず何十本ものナイフを持ち合わせた狂人であるからだ。
雪愛はナイフを燿華に向かって投げた。矢のように速いそのナイフはそのまま燿華の左肩をかすめた。
「っく!」
 燿華も発砲したが、左肩の痛みで照準がずれてしまい弾は外れてしまった。
「・・・何だ?こいつら。」
 御影もすぐさま能力を解除させてコンテナを地面に置き、向かってくるうちの一人に再び手を赤く光らせ、そこに集まった圧縮された空気を放とうとした。しかし、その前に生徒のうち一人が容赦なく拳銃を御影に向けたのだ。そして彼は本音を漏らしながらその拳銃で確かに敵を倒そうとするのだった。


「僕の普通を奪うな!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?