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羅刹の紅(小説投稿)第九十七話

○あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃つことになった。
 体育大会当日、ついに一般部と赤虎組の戦闘が始まった。苦戦を強いられることを予想し、切風は一般部の三人に次の作戦を指示する。だが、ここで赤虎組が仕掛ける。赤虎組の幹部である御影と燿華が学校に侵入を試みたのだ。切風はこれを止めようとするがそこに同じく幹部である有坂が切風を止める。


〇本編

有坂は切風と並走するように近づくとそのまま拳で切風の横腹を殴ろうとした。それを察してか切風は日本刀で有坂の腕を斬ろうとした。
 
 カーーーン

 凄まじい金属音が鳴り響くとともに切風と有坂はその場で立ち止まった。
「金属バンテージか?」
「えぇ、特注品です。」
 なんと有坂は両手に金属で作られたバンテージを巻いていたのだ。これは切風も思考の範囲外であった。
「・・・なるほど。あくまで私を通さないと。」
「そういうことです。おそらくあなた以外で学校に向かった二人に立ち向かえる人はいないでしょう。それならあなたを止めればいいだけの話です。そして、私はそれをするだけの力がある。」
 そういうと有坂は背中に背負っていた刀を取り出した。おそらくだが刀の長さは切風よりの大きいだろう。そんな大太刀を有坂は何の不自由なく構えた。
「それは私への嫌味か?」
「まさか、ただこれが私にとって扱いやすいだけです。」
「・・・」
「一応言っておくとこの大太刀は刃長百八十センチ、重量は四十キロぐらいあります。私はこれからこれを素早く動かしますので当たったら多分死にますよ。」
「馬鹿言え、そんなものを持ちながら動ける奴なんて人間ではないよ。」
「それはどうでしょうか?」
「さっさと終わらせるわよ!」
そう言うと切風は有坂に対して先制を取った。彼女は身体を回転させ、勢いをつけてから日本刀を有坂の額に向かって振り落とした。しかし、それを有坂は金属バンテージをつけている左手で受け止める。
「ぐっ!」
 さすがにきついのか、有坂はらしくない声を上げる。それと共に二人の周りには旋風と言えるぐらいの風が吹き荒れる。
 しかし、今度は有坂が右手に持っているその大太刀で小柄な切風に向かって振り回した。
「片手で!」
 まさか片手でその大太刀を使うとは思わなかったらしく切風の口から本音が漏れた。しかし、一瞬のうちに冷静になった切風は右足を有坂の胸につけてそのまま横に飛んだ。そのお陰でなんとか攻撃を回避する。
「・・・厄介だな。」
 切風はやや離れた場所から有坂を見つめる。
「やれやれ、わがままなお子さんですね。服もこんなに土まみれにして・・・」
 有坂は切風に踏まれた胸元をハンカチで拭った。こんな場所でも彼は紳士である。
「さすがに参ったね。このままだと確実にあの二人が広星高校に侵入してしまう。」
「まぁ、わざわざ一か所からしか攻撃しなかったのはこのためでもあるのですよ。おそらくあなた方は人手不足のため全勢力がここにいるはず。」
「分かっているね。その通りよ。」
「なら、あの二人を止めることはできませんね。あなたも私が止めている。もう我々の勝ちです。どうです?あれを使わないのですか?」
 有坂が何かを知っているかのように質問した。
「なんでそれを知っている。」
「御影から聞きました。商店街の裏路地で日本刀を使う人間が特別な能力を持っていると。あれは多分あなたですよね。」
「・・・ここでは使えない、残念ながら。」
「そうなのですか。それは詰みですね。」
「まだ分からない!」
 切風はそう言いながら有坂に再び攻撃を仕掛けた。
場所は高校に移る。もちろん学校へ向かった二人は御影と燿華である。彼らは個別に高校に侵入し、金庫から金を手に入れる算段である。
「でもよー、本当に二人で大丈夫なのかよ。多分現金だぜ。」
「・・・知っている。」
「ってことはさ。帰りどうやって持ち帰かえればいいわけ?」
「・・・お前は俺の能力を知らないのか?」
「あー知っている知っている。なんか赤い光を使って敵を倒すやつでしょ。」
「・・・あれを工夫して使えば作戦はうまくいく。お前は黙ってついてこい!」
 御影は相当イライラしていた。ここ最近、燿華の態度が気に食わないのだ。これは教会での失敗が主だ。彼は何としてもこの作戦を成功させたいのだ。
「はいはいわかりましたよ、死神さん。」
 燿華は飽きたのかそれ以上は聞かなかった。



 二人は広星高校に侵入した。
「この後は?ここからは監視カメラがありますよ。」
「問題ない。もはや我々赤虎組の仕業を隠す必要がなくなった。」
 そう言うと御影は近くにあった監視カメラに向かって例の赤い光を手に収縮させ、そのままそれを放つ。監視カメラはその瞬間壊れた。
「それにしても本当にすごいっすね、その能力!どうやって手に入れたのか教えてくださいよ!」
「・・・俺も知らん。」
 そう言うと御影は歩き始めた。
 体育大会であるためほとんどの学校関係者は外にいた。そして、校内にいるのは警備員数人と休憩するため一旦教室に入った生徒ぐらいしかいない。そのため、特に怪しまれることなく彼らは駐輪場に到着した。
「ここは何っすか?どう見ても駐輪場でしかないけど。」
 電動キックボードがたくさん置いてある場所に御影静かにその手を地面に置いた。
「ここの下に金庫がある。」
「マジっすか!」
「・・・お前、有坂の話聞いていたのか。」
「いや、忘れた。」
 御影は今すぐ燿華と別行動したくて仕方がなかった。彼の苦手なタイプであることには間違いないのだがこういう本当なのか嘘なのか分からない冗談を言う燿華が気に食わないのだ。もちろん、燿華は駐輪場の下にあることを知っている。
「・・・行くぞ。」
そう言うと御影は手に赤い光をこれでもかというぐらい集め、そのまま地面に大きな穴をあけた。それと同時にとんでもない爆発音が周りに轟いた。
「うおおおーーーーーーー!」
 ものすごい風圧と共に燿華は身体が吹っ飛んでしまうと思い、身体を地面に這いつくばった。御影はこうなることを予想していたのかその場でしっかりと地面に固定できるように服と地面をワイヤーで固定した。

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