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暮らしの薬学【ヘアカラーリング剤】~④パッチテスト・かぶれについて

美容院でもヘアカラーリングをするときはパッチテストされますよね。ヘアカラーリング剤は酸化重合という化学反応で発色する成分がアレルギーをおこすことがあるためです。一度かぶれたらヘアカラーはできません。

パッチテストとは?

パッチテストとは、ヘアカラーに含まれる酸化染料にかぶれる体質かどうかを調べる皮膚アレルギー試験です。食品や医薬品などでアレルギー反応をおこす人がいるように、まれにヘアカラーで重篤なアレルギー反応をおこす人がいます。また、他のアレルギーと同じで過去に異常のなかった人でも、体調の変化などによって、かぶれる場合もあります。

パッチテストの方法

1.パッチテスト用混合液・クリームを用意。 1液(1剤)と2液(2剤)を指定の量ずつ取り、綿棒で混ぜ合わせます。
2.腕の内側にぬり、48時間放置。 混合液・クリームを、綿棒の先端につけ、腕の内側に10円硬貨大にうすくぬり、自然に乾燥させます。
3.混合液が乾燥するまで、衣服につかないようにします。
4.30分後と48時間後の2回チェックします。

48時間経過して、かゆみ・はれなどの異常がなければ、ヘアカラーしてもOKです。

ヘアカラーによるかぶれやアレルギー反応

ヘアカラーは使用説明書をよく読んで正しく使えば安心して使用できる製品です。しかし、パッチテストで問題がなかった場合でも体質や肌状態によってはかぶれやアレルギー反応を起こしてしまうことがあります。ヘアブリーチ(脱色剤)は、酸化染料が含まれていないためパッチテストの必要がありませんが、過硫酸塩が配合されている製品はアレルギー反応でかぶれをおこすことがありますので注意が必要です。

ヘアカラーによって起こる反応には2つあり、薬剤をつけるとその部分がしみる、かゆい、赤くはれる、痛いといったすぐに反応が起こる「刺激性接触皮膚炎」と特定薬剤のアレルギー反応により時間が経過してから反応が起こる「アレルギー性接触皮膚炎」があります。
後者のアレルギー反応の原因は、白髪染め(白髪用)やおしゃれ染め(黒髪用)などの1剤に配合されているジアミン系染料です。原因物質に接触しているうちにアレルゲンに対して免疫反応が成立し、再びアレルゲンに接触するとアレルギー反応をおこします。そのため、これまで問題なく使用していた製品であっても、花粉症のように突然に症状がでることがあり、症状に気づかずヘアカラーを繰り返すと重いアレルギー反応をおこすことがあります。アレルギーには即時型と遅延型とがあり、それぞれの症状と対処法を確認します。

<即時型> ヘアカラーの最中~30分くらい後のアレルギー症状(アナフィラキシー)の場合
主な症状:息苦しさ、めまい等の気分の悪さ、意識喪失、強いかゆみや発赤、じんましん等の皮膚異常 → すぐに救急車

<遅延型> ヘアカラー後から48時間のアレルギー症状の場合
主な症状:かゆみ、赤み、顔がはれる、ブツブツ等の皮膚異常 → 皮膚科医を受診

Q.毛染めに使われている色はタール色素ですか?危なくないですか?

タール色素(有機合成色素)は、厚生労働省が定めた医薬品、医薬部外品および化粧品に使用することができる色素で「法定色素」とも呼ばれ、これまで、ガン、内臓障害、黒皮症、皮膚炎などの毒性が報告されていますので、使用目的にあわせて規制があり、「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」に定められています。口紅、アイシャドウ、ヘアカラー、入浴剤、シャンプーなどに使用されています。ヘアカラーリング剤では、半永久染毛料の酸性染毛料に使われています。
ヘアカラーリング剤には、タール色素以外に天然色素も使われています。天然と聞くと安全なイメージがありますが、天然色素でよく使用される“カルミン”(コチニール系色素)は、南米に棲息するエンジ虫という昆虫を煮て作られるのですが、原料由来のあるたんぱく質により、色素製造者らが喘息を引き起こすなどのアレルギー反応が報告されています。日本では、食品の着色には使用出来ませんが、化粧品への使用は認められています。現在では、最新の技術により可能な限りタンパク質含量を低減した「低アレルゲンコチニール色素」が開発され、利用されています。

もっと勉強したい人に~参考リンク・参考図書

●皮膚アレルギー試験(パッチテスト)を実施しましょう。(日本ヘアカラー工業会)
https://www.jhcia.org/haircoloring-home/4_patchtest.html
●法定色素の解説と法定色素一覧(化粧品成分オンライン)
https://cosmetic-ingredients.org/colorants/certified-colors/

<参考図書>
いい白髪、やばい白髪ケア ー 頭皮がしみる、かゆいは危険信号!
化粧品科学ガイド 第2版

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<この記事を書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。