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暮らしの薬学【局方品・掃除編】~①局方品とは?

ミズホ「ケーキをふわーっと膨らませるのに重曹を使うよね。スーパーのお菓子材料売場では300gくらいなのに、ドラッグストアに行くと“重曹”は掃除用品のところに1kgもの大きな袋に入って販売されてるんだけど・・・。名前は同じだけど、どう違うのかな~。」

薬剤師ナナコ「今は、重曹をはじめナチュラルクリーニングと呼ばれるものがたくさん売られていますね。家の中のあらゆるところの掃除に使われますが、ミズホさんの言うとおり、重曹はケーキ作りや、山菜のあく抜きにも利用されます。ドラッグストアには同じ成分なのに、掃除用や食品用、または医薬品にも使用されるものがいろいろあるので一緒に勉強しましょう。」

“局方品”ってなに?

一例として、ナチュラルクリーニングで有名な重曹の成分名は、「炭酸水素ナトリウム」で、重炭酸ナトリウムとも呼ばれる物質です。炭酸水素ナトリウムは弱アルカリ性で、その性質を活かして、油汚れや皮脂汚れ、焦げ付きといった"酸性"の汚れを落とすのに使われます。また、あく抜きやケーキを作るための食用に使う場合もあります。さらに、胃酸を中和するための制酸剤としての医薬品もあります。このようにいろいろな用途がありますが、成分はみな同じで違いはありません。ただし、それぞれ販売上の区分で管理方法が違います。例えば、掃除用の重曹は衛生管理が緩いなどの理由から食用の重曹としての使用はしません。

このような「炭酸水素ナトリウム」という医薬品でもある物質は「局方品」という区分で販売されています。

局方品の定義

局方品とは、“日本薬局方”に収載されている医薬品を指します。
日本薬局方は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第41条により、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めた医薬品の規格基準書です。日本薬局方の構成は通則、生薬総則、製剤総則、一般試験法及び医薬品各条からなり、収載医薬品については我が国で汎用されている医薬品が中心となっています。
日本薬局方は100年有余の歴史があり、初版は明治19年6月に公布され、今日に至るまで医薬品の開発、試験技術の向上に伴って改訂が重ねられ、現在では、第十八改正日本薬局方が公示されています。

加香ヒマシ油の原材料となるトウゴマの実

Q. 日本薬局方「加香ヒマシ油」ってなんですか?

「加香ヒマシ油」は第2類医薬品です。排毒や下剤用に使用されています
ひまし油というのは、トウダイグサ科のトウゴマ(Ricinus communis)と呼ばれる多年草の種子から採取する非可食性の植物性油脂の一種です。その歴史は古く、紀元前4000年頃に建てられたエジプトの墓所からもトウゴマの種が発見されています。古くは、保湿力の高さから基礎化粧品として使用していたとも言われております。インドではアーユルヴェーダの伝統的な医療として使われていて、紀元前2000年頃から便秘薬や灯りとして使っていたとも記述されています。 
ひまし油は不飽和脂肪酸を非常に多く含んでいる非常に特徴のある油で、工業用品としても幅広く活用されていて、その加工品は、主には潤滑油、作動油、プラスチック、石鹸(せっけん)、 廃天ぷら油処理剤(凝固剤)、塗料、インキ、ワックス、医薬品、香水、髪油(ポマード・びん付け油)などの原料として用いられています。

もっと勉強したい人に ~ 参考リンク・参考図書


●ひまし油とは(小倉合成工業株式会社)
https://kokuragousei.co.jp/products/castor-oil.html
●「日本薬局方」ホームページ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000066530.html

<参考図書>
『炭酸水素ナトリウム』添付文書 などを参照

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<この記事を書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。