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知っておきたい高齢者の薬の使い方~②緑内障治療薬

薬には副作用が起こることがあり、生活上に支障をきたす場合があったり、思いがけない事故につながる場合もあります。もちろん安全に使っていたら問題ありませんが、使っている薬の種類に応じて、起こりうる反応について知っておくことで的確に対処することが出来ます。
この連載では、薬を服用している高齢者を介護しているご家族、または介護ヘルパーの方に向けて、お年寄りをサポートする上での注意点をお伝えしていきます。

緑内障とは

目で見た情報を脳に伝える視神経が、眼圧の上昇などによって圧迫され、視野の一部が欠けてしまいます。失明の原因になることが多い病気です
緑内障と診断されるのは、原因がはっきりしない”原発緑内障”が多く、原発緑内障はさらに”開放隅角緑内障”と”閉塞隅角緑内障”の2つに分けられます。

開放隅角緑内障

隅角部が目詰まりすることで、少しずつ眼圧が上昇して緑内障を起こします。また、眼圧が正常範囲でも起こる緑内障もあります。
正常眼圧緑内障では、眼圧が正常なのに視野欠損が発生します。正常眼圧緑内障の原因として考えられる事に、「視神経が耐えられる眼圧が低い」「視神経の血流が悪い」などが挙げられます。どちらにしても治療は眼圧を下げることです。

閉塞隅角緑内障

隅角が狭くなっているため、眼圧が上昇して緑内障を起こします。眼圧の急激な上昇による急性発作が起こるリスクがあるため注意が必要です。

緑内障の症状は、視野が欠ける以外にも、視力の低下や目の充血、眼精疲労、まぶたの奥から外側に圧迫されているような感覚などさまざまです。片方の目だけ緑内障であっても、もう片方の目で視野を補おうとするため、視野の変化に気づくのが遅れてしまう場合もあります。

簡易チェックを紹介しているサイトもあります。時々チェックしてみるのもいいですね。


緑内障治療薬について

眼圧を下げる効果のある目薬を使うのが一般的な治療です。ダメージを受けた視神経の障害は元には戻りませんがこれ以上悪化させないためにも、しっかりと目薬を使い眼圧を上げないことが重要です。

緑内障治療薬の使用上の注意

◎手洗い

目は口や鼻と同じように菌やウイルスなどの感染症の感染経路になりやすいですが、マスクでは保護できません。そして、感染症は緑内障を悪化させる要因となります。
感染症予防のためにも点眼する前は、必ず手を洗い、目の周りをきれいに拭くことを習慣づけましょう。

◎他の治療薬との併用注意

閉塞隅角緑内障の患者さんが抗コリン薬を使うと、眼圧が高くなり急性発作を起こす可能性があります。急性発作を起こした場合、適切な治療をしなければ失明に至る可能性もあります。
抗コリン薬は市販の風邪薬や胃薬、鼻炎薬などさまざまな薬に含まれています。そのため、他の薬を併用する場合は、医師や薬剤師に事前に確認するようにしましょう。
緑内障と診断されていない人でも、これらの薬を飲んだ時に、電球の周りが笠をかぶったように見えたら眼圧が一時的に高くなった可能性があるので眼科を受診しましょう。

◎点眼薬を使う順番にも注意

複数の点眼薬が処方されているときには、使う順番に注意が必要な場合があります。それぞれの点眼薬の性質(剤形)や期待する効果などによって使う順番は決められることが多いため、薬剤師に確認しましょう。そのほかにも、良く振ってから使うなど点眼薬ごとの注意点を守って効果的に使うことが大切です。

◎眼圧を上げない姿勢を意識する

眼圧は姿勢によって変化します。座っている姿勢よりも仰向けに寝ている時の方が高く、うつぶせ(下向き)になるとさらに高くなります。草むしりなどで下を向き続けると眼圧が上がってしまうため、5分~10分に1回は顔を上げて眼圧を下げるように声かけをしましょう

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<監修>
堀美智子
薬剤師。医薬情報研究所(株)エス・アイ・シー取締役/医薬情報部門責任者。一般社団法人日本薬業研修センター医薬研究所所長。名城大学薬学部卒・同薬学専攻科修了。著書、メディア出演多数。
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