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認知症治療の金額シミュレーション例~薬局とお金の話⑳

今回は認知症の治療にどのくらいの金額がかかるのか、薬剤師でありファイナンシャルプランナーでもあるgorisanがシミュレーションし、解説させていただきます。

認知症は、医学の発展や生活レベルの向上に伴い寿命が伸びたことで増えてきた疾患です。若年性アルツハイマーなど若い年代から発症することもありますが、基本的には高齢者に多い疾患です。

程度に差はありますが、加齢により遅かれ早かれ誰にでも訪れる変化により引き起こされる疾患です。問題なのはその変化が60代で起きる人もいれば100歳を超えてから起こる人もいるということです。

そして認知症の治療薬は現在大手製薬メーカーが研究に取り組んでおり、一部効果が認められたものも出てきていますが、現状は予防薬により進行を遅らせる治療がメインとして行われています。

治らないなら治療しても意味が無いと感じられる方もいるかもしれませんが、進行を遅らせることには2つの大きな意味があります。1つは新薬による画期的な治療までの時間稼ぎ、そしてもう1つは家族のQOL向上です

認知症の介護は想像以上に大変であり、大切な人のことや記憶を失うのは家族にとっても本人にとっても悲しいことです。そして予防という手段をとる以上、できるかぎり早い段階から取り組むことが重要です。

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<認知症の薬物治療にかかる金額例>


今回は月に1回病院を受診し、認知症の治療によく使用されている代表的な薬剤を1種類服用していると仮定します。服用している薬剤は、最も代表的な認知症治療薬アリセプトとします。

・アリセプトOD錠5mg 1錠211.3円

アリセプトは1日1回朝食後1錠と仮定すると、211.3円×30日=6339円。3割負担であれば合わせて約2100円/月必要です。

これに加えて病院でかかる費用=再診料(730円)+処方箋料(680円)、さらに薬局でかかる費用=調剤基本料1(420円)+地域支援体制加算(380円)+後発医薬品体制加算2(220円)+薬学管理料(430円)+調剤料(1540円)=4400円かかります。3割負担であれば約1500円です。

固定でかかる費用は4600円/月、実際には各種検査が加わる場合もありますので、あくまでも参考値ですが5000~7000円/月くらいはかかると考えてください。また医療機関への交通費そして通院にかかる時間を考えると金銭面以上のコストがかかります。

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<認知症治療の追加コスト>


後期高齢者になれば1割負担になるからそこまでコストはかからないのでは?ジェネリック医薬品を使えばもっと安くなるのでは?と思う方もいると思います。その疑問は正しく、実際には3000円/月くらいしかコストがかかっていない人もいると思います。

しかし逆に追加コストがかかる場合もあります。例えば病院に1人で通えないケースであれば送迎が必要ですし、1人で生活ができなくなれば施設への入居費用なども必要になってきます。これは何千万という金額になることも少なくありません。

60代でまだ3割負担だし症状がそれほどでもないから、もっと進行してから治療を開始すると考えられる方もいるかもしれませんが、それは判断が甘いかもしれません。先の先まで考えた上で、医師や家族としっかり話し合い治療方針を早い段階から決めることが大切です。

認知症治療は進行を遅らせるだけなので、なかなか効果が目に見えず薬を続けるのが難しい疾患です。ですが早期からの治療と治療継続の重要性が非常に高い疾患でもあります。自分だけで難しいならば家族の力も借りて治療に取り組むことが、自分だけでなく家族にとっても価値のあることだと知っておいてもらえれば幸いです。

<この記事を書いた人>
gorisan
地方の小規模チェーン調剤薬局の薬剤師。薬剤師歴12年。3児の父。認定実務実習指導薬剤師。FP技能士3級。