4/05、ARB、代謝経路

今日は、ARBに位置づけられる高血圧治療薬の違いについて教わった。
前提として、ARB は直接AT1受容体と結合し、アンジオテンシンⅡとAT1の結合を阻害することで、血管平滑筋収縮を抑制し降圧作用を示す。またアンジオテンシンⅡがAT1受容体に結合することにより、脳では脳卒中や認知機能障害、心臓では左室肥大、心筋梗塞や心不全、腎臓では腎不全に至るため、ARBはAT1受容体を阻害することにより心臓、腎臓、脳血管などの臓器保護作用も有するとされ、こういった合併症のある患者の降圧に推奨される。適応としても、ARBの中には高血圧症の他に、ニューロタンでは「高血圧及び尿蛋白を伴う 2 型糖尿病における糖尿病性腎症」、ブロプレスでは「腎実質性高血圧」と「慢性心不全(軽症~中等症、ACE阻害薬の投与が適切でない場合)」といった適応を持つものがある。薬物の構造に起因する機序や代謝•排泄などの薬物動態に関連して、ARBの中でも違いが生じる。例えば、ミカルディスは他のARBの構造と異なりベンズイミダゾール環を持っているため、PPARγを活性化し、インスリン抵抗性の改善作用があるとされる。アジルバはAT1受容体への親和性が強く長時間作用し、強力かつ持続的な効果が得られる。薬物の消失経路でも分類することができ、肝代謝(オルメテック、アジルバ)、肝代謝→腎排泄(ニューロタン、ブロプレス)、肝代謝→胆汁中排泄(ミカルディス、イルベタン)、肝代謝→腎排泄•胆汁中排泄(ディオバン)となっており、またブロプレス、ディオバン、イルベタン、アジルバはCYP2C9が代謝に関わっている。排泄経路が異なることから、腎排泄型のARBは、腎機能が低下していると血中濃度が高くなってしまうこともある。また、特に高齢者では、腎動脈狭窄や腎細動脈硬化による虚血性腎症の合併頻度が高く、ARBによって腎血流量が減少することでかえって、高K血症や、Cr上昇(見かけ上の腎機能悪化)などを来す恐れがあることが知られる。当薬局の例で、虫垂炎で入院した際に[ザクラスで腎機能悪化のため中止]とコメントされたため、ザクラス(アジルサルタンとアムロジピンの合剤)は腎臓を悪くすると思っている患者さんがいた。その後クリニックの医師にかかった際に、ザクラスが処方されたが患者さんは飲みたくないといい、医師は腎機能を見ながらだから大丈夫と伝え、ひとまず納得し服用することとなった。その後薬局にて、腎機能が悪くなってきたとの訴えがあっが、GFRも問題なかったため、医師が中止するまで続けるよう指導した。最終的には飲まないと血圧が高いままであることや、腎機能に問題がなかったことで、患者さんも納得して飲み続けるようになった。
このように、誰かが嘘をついているわけでも薬について間違ったことを言ってるわけでもないが、患者さんと医療者で主張が対立することがある。毒にも薬にもなるという言葉があるように、症状を改善する機序の中で副作用というリスクも孕んでいるのが薬である。普段は様子を見てればコントロールできるような副作用でも、タイミング(手術前など)や患者さんの受け取り方一つでも無視できない副作用になり得る。ただ、患者さんも医療者も治したいという意志は同じである。正しい薬学的知識を身に着けたうえで、患者さんに納得して服用してもらえるように説明、フォローをすることも薬剤師の使命であると学んだ。