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チェンソーマンすごすぎメモ

主に画風に魅せられ、読みたい読みたいと一年以上前から思っていたにもかかわらず、貧困により手が出なかった「チェンソーマン」をついに読みました(知人が単行本を貸してくれた)(マジでありがとう)

読んだのですが、震えた。あまりにも想定外に素晴らしくて明確な衝撃を覚え、圧倒され、気づけば一晩ですべて読み終えてしまった。終始「ほ、"本物"じゃん………」と戦慄していた。

読み終えた直後、思ったことをザーッと書いたメモがあるのだけど、完全に行き場をなくしているのでせっかくだしここに置いておこうと思います。短いです。インターネットでのチェンソーマン言論とかにはまったく触れていないので、散々言い尽くされていることを延々と述べるだけの文章になってるかもしれん。

ちなみに読んだのは現時点の既刊である8巻までです。そんなに具体的な内容に言及していくつもりはないけど一応ネタバレは有りだと思ってくれい


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・まず、主人公デンジを描くにあたって「少年漫画の主人公」という既存の美徳や様式美をものともせず徹底的に反抗し続ける痛快さが最高だなと思った。

・主人公という立ち位置の人物、に(メジャーな)主人公性から掛け離れた言動や人格を与えていくことによって、「主人公像」として許され得るギリギリのラインを探っているような思い切った実験性をこの漫画からは感じる。デンジのハンターとしてのモチベーションが完全に短絡な異性への興味に裏付けられていたり、「ギャハハ!!」的スタンスで敵を虐殺しまくったり、みたいに多様な狂人性の描写が彼には目立ちますが、そういう要素をこれでもかと施して、そのうえでなぜか新たに少年漫画の主人公として成立している不気味さがある。こんな奴が主人公ですよ、主人公をできるんですよ、と肩に手を回してくるような計算性というか。

・かといって、そういう「お約束」へのアンチテーゼ性だけを掲げて悪目立ちに走っているような下品さはまったくない。すべての様式を拒むみたいなことは全然なく、むしろ誠実に直球の少年漫画をやりにいっている(上手に実験性を潜ませながら)。「もはや想定外の強力キャラクターの急襲」とか「部外者の民間人の中から抜擢された強力人物」みたいな、ほかでも見られる感じの構図も適宜スパイス的に用いられていて、やっぱりこれが漫画として素直に面白い。エンターテイメントだなと思う。

・だからそういった「様式美との向き合い方」みたいなのがすごい。漫画「チェンソーマン」を描いていくにあたってそういうお約束を取捨選択して取り入れていく真摯ながらスレた姿勢が、この漫画のさりげない異形性に直結しているのだと思います。だから読んでて展開の想像がつくタイミングが結構あったんだけど、それは「どうせこうなるだろうな」みたいな退屈な気持ちではなく、「こうなってくれたらおもしれえな」という期待の気持ちに近い。実際その期待通りになっておもしれえ場合もあるし、裏切られておもしれえ場合もある。そういうのが不規則に連続し続けるので本当に読んでて退屈しない(ヘトヘトになる)。そのすべてが藤本タツキ先生の手腕によるものだという事実が何より恐ろしいな………


・また、作品世界を構成する要素に、作者の好み、いわゆる「性癖」のようなものをうまく装飾・反映・適用させる遊び心がかなりあって、しかもそのデザインセンスの良さが常軌を逸している。感性を形作ってきた知見の量が著しいのであろうことが覗くんだよな。

・たとえば目のハイライトがそうで、これが本当に最高。マキマさんのグルグル目は初めて見たとき既にグエ~~となってしまったし、パワーちゃんの十字ハイライトもマジでいい。クァンシさまの真っ黒目もいい。個人的な話になるが、数年前に割と絵を描いていた時期が自分はあって、その頃から「ハイライト部分を四角とか横棒とかグルグルとかその他諸々の記号に差し替えたらかなりかっこいいよな」と考えていたので、チェンソーマンの面々を見たときは「やってくれたね」と思ってブチ上がった。

・あと服装。こういうジャンプ漫画とかってある程度キャラの服装をユニフォーム的に統一するやつ(BLEACHの死覇装みたいな)がありがちだと思うんだけど、それを「ネクタイ・ワイシャツ」に設定してしまうチェンソーマンのハイセンスさにマジで痺れますね。こういうちょっとフォーマルっぽいビジュアルをあの暴力的な作品性の底流に敷いておく感性、最高だなと思う。それぞれの着方で個性が出せるのもいい。もともとああいう恰好のキャラクター描写が大好きなのでもう、完全に刺さったよね………

・ともあれ、ほかの作品にはいないようなキャラを登場させよう、という執念にも似た気概がこの漫画はすさまじいなと終始思った。実際、その試みは大いに成功している上、イロモノになりすぎたり本筋のノイズになったりしない節度がある。「上質な漫画作品」という目的と「好みの装飾」という目的とのバランスを取る塩梅がすばらしい。幽霊の悪魔のデザイン最高。


・女子キャラが全員本当に最高すぎる。

・マキマさんに関して。好きすぎる~~~~ こんなにネクタイとかロングコートとかが似合う女性キャラが他にいるか?居酒屋に登場したマキマさんがコートを脱ぎつつ「すみません、生一つお願いします」と店員に言うコマがあるんですけど、リアルで身近な貫禄を描写する一幕として完璧すぎてだいぶ笑ってしまった。展開においても見ていて本当にわくわくするキャラクター。チェンソーマンの読者って全員マキマさんに恋をしているらしいです。

・パワーちゃんに関して。読む前からツイッターでたびたび見かけていたので、その時点で既に「自分はどうせパワーちゃんが好きなんだろうな」と思いながら読み始めたのだが、全然パワーちゃんが好きだった。ネーミングがもう本当に最高。ツノとか口調とかにしても、「キャラ」が上手え~~!!!と思う(藤本タツキに対して)。なんかパワーちゃんがもう一段階めちゃくちゃ強くなる、みたいな展開この先ありそうじゃない?

・二巻の表紙、パワーというキャラの最高さを一目で完璧にプレゼンしていてすごい。

・コベニちゃんに関して。こんな女子誰だって好きだろうが。姫野先輩に支持されてアワアワしながらダブルピースをするシーンがありましたが、おい!!!オタク!!!!と思った(藤本タツキに対して)(オタクはそういうのが好きなので)。横髪が片方だけ長いのがマジでいい。能力が一向に明かされないのもわくわくする。こんな女子誰だって好きだろうが。

・レゼに関して。めちゃくちゃ好きだ…………前髪がやたらと伸びまくってる女子が好きすぎるぜ。手榴弾のピンが首についてるデザイン本当に秀逸すぎる。首尾ずっとパワフルで儚くて最高だったな。エッチなシーンは、エッチなのでダメだと思った。

・クァンシさまに関して。本当に好きだんだよな、こういう人が……… ハチャメチャな能力が飛び交う中で圧倒的な経験値とフィジカルだけを駆使して勝つキャラっていいですよね。それで結局能力持ちなのもいい。女子とか以前にかっこよすぎる。

・というか、以前から愛聴してる四つ墓という宅録音楽ユニットがいるのだけど、クァンシさま及び魔人を見ている間ずっと「四つ墓じゃん」と思っていた。四つ墓じゃん。

・好きな女性キャラに関しては以上。チェンソーマンの女子はみんな自分がかわいいことを自覚しているので良い。


・展開が本当におもしろいね。考察みたいなのは全然わからんけど、作中において鍵になるチェンソーというアイテムの「根源的な概念から掛け離れて最も人工性の強い道具」「本来は殺傷に用いられる武器ではない」あたりの要素(からなる異彩性)みたいなのが気になる。


・あと絵がうますぎ。その上で絵にこれだけの個性があるのすごすぎ。絵を抜きにしても漫画としておもしろすぎるし、絵を抜きにしても漫画としておもしろすぎるのすごすぎる。このすべてが藤本タツキという一人の感性によるものなのやばすぎ。全部がハイセンスで不気味すぎる。安っぽくて使いたくない「天才」という言葉があるが、氏は本当に「天才」だよ、マジで

・しょうじき「藤本タツキ」という作者名から既にリテラシーとセンスが窺えるんだよなとはずっと思っていた。キャラクターに名前をつける感覚を作者という自分自身に対しても持ち込んでしまって結局過剰に奇抜でスベってるペンネームになる事例って少なくないと思うんだけど、「藤本タツキ」って本当にちょうどいいね……… 

・ファイアパンチも読みて~


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上記3500文字分の衝撃を一身に受けたので本当に衝撃的な体験だった。書くにあたって読み返したんだけど、うおーーーーーーたまんねーーーーーーーという感じだった。チェンソーマン読んでるときの感情って「うおーーーーーーたまんねーーーーーーー」じゃないですか?吉田ヒロフミが好きだ。吉田ヒロフミなんて好きに決まってるんだよな。

なんというか、美学の漫画だなと思った。綺麗事が嫌いなんだろうなという感じがする。それでそういう定型へ安直に頼らぬよう警戒の姿勢を取り、どんな精神性を導入すべきなのかという舵取りを独自に一から検証していくような職人性が漂っている。隅から隅まで美学に満ちている最高にイカした漫画。

今はネタバレに怯えながら日々を過ごしている。つい先日インターネットでうっかり重大なネタバレが目に入ってしまい、叫び、走り、山小屋に籠り、朝露を飲み、狩りに暮らし、大自然の声を聴いて、この文章を書いています。

新巻でてくれ~

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