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快活と冬とツタヤの日記 - 20211221

悪ふざけとしか思えない月日の流れの早さにいちいち驚嘆するのも癪になってきて「あーあ、10月スベってるスベってる」としか感じなくなってきたと思いきや、いつの間にか世間から12月とか年末とかそういう不気味な言葉が聞こえてくるようになった。12月に対してはもう「はいはい、わかったわかった」としか思っていない。12月を相手にしないほうがいい。調子に乗るから。

そんなこんなで暮らしていたら生活が「昼寝て夜起きる」といういちばん厄介なリズムに乗ってきてしまい、と思えば昨日は夕方に起きてすぐ夜に眠くなり寝るものの4時間ほどの睡眠を経て午前二時に起きた。どゆこと?

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そこから朝まで過ごす中で「快活クラブ行くか」と思い立ち、行った。

快活クラブ以前に漫画喫茶やネカフェの類を利用したことがなく正直その存在すら疑っていたほど縁遠かったのだが、以前どこかで「快活クラブのモーニングではフライドポテトが食べ放題」という情報を得て以来「行こう、絶対に」と思っていた。言っても面白くないと思ってあまり言ったことがないが自分はフライドポテト以上に好きな食べ物が一つもなく、幼少の頃から基本的に常時フライドポテトのことだけを考えて生活している。フライドポテトのことしか考えたことがないので、今まで人と交わした会話は実は会話ではなく、自分がフライドポテトのことを考えながら上の空で漏らした喃語が偶然言葉の体を成す響きを持ち、たまたま会話が成立しているかのように見えていただけである。
ただまあフライドポテトが人生でいちばん好きだとしつこく喧伝しても何も面白くねえなと思って特に言わずにいる。バカみたいだし。

とはいえポテトが無制限に食えるというのは快活クラブとか関係なくサイコーすぎるので近いうちに一度は行こうと思っていたのだ。

六時前、真っ暗の道を歩いて駅に向かいつつ、やりたい放題の生活してるなーという実感があった。
人の少ない駅のホームで白い息を吐いている老人を遠くに見かけてギョッとした。マスクを外して小さく息を吐くと確かに白い。マジか……と思った。ふ、冬じゃん……え?冬ってあの冬………?

個人的にも2021年の通過速度はやはりちょっとおかしいよなという確信的な吐き気があったのだが、知り合いとか友達と話すと案外みんなちゃんと2021年の実感が普通にあり、年末だな~という気持ちへ普通に着地しているっぽい。全然信じられない。しかしインターネットを見ているとやはり2021年の通過速度は異様だったっぽくもある。そうよね。
三ヶ月半だったな。別に一瞬だとか数日だとか言わないからさ、そういう誇張じゃないマジの実感としては2021年って「三ヶ月半」だっただろ、と思う。みんなも「三ヶ月半」じゃありませんでしたか?

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快活クラブを目指して二駅隣に移動した。空が少し青みを確かにしており、朝でも夜でもあるような歩道を歩いた。
薄暗い時間からフォーマルな恰好で社会へ向かう人々(お疲れ様です)と、ポテモク(ポテト目的)で朝五時に快活クラブめがけて珍走する意味不明な生物がすれ違うひとときがあった。

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キターーー

事前にアプリで会員登録やらなんやらを行うと手数料400円近くがチャラになると知って事前にやってあったのでいい感じに初回利用の手続きを済ませられた。勘で生きているので、たまにこういうことができると「やったった」と思う。


席に荷物を置き、ポテトは……と思いながら見てまわると、さっき手続きをやってくれた女性がポテトチップスの盛られた金属製のトレーを設置しつつ「ポテトがまだなのでポテトチップスのご提供になります」という旨のことを伝えてくれた。「ポテトチップスを、くれる」という状況を丁重に敬語で伝えられていることが急に面白くなってしまい、ややヘラヘラしてしまった。

で、とりあえずポテトチップスを取って席へ戻った。

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白い平皿にポテトチップスが乗ったものだけが置かれた机を見て「?」と思っていたら「ポテト揚がりました」的な報せが聞こえたので取りに行った。


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なにこれ?芋の妖精が管理栄養士を務めた定食?

とは言いつつも個人的には最高の食卓なので気が狂いながらポテトを食べ続けた。「嫌になるまでポテトを食いたい」という思いを食欲といった他の欲求とは全く無関係に独立した欲求として常に帯びている身としては願ったり叶ったりだった。

結果、食べすぎて既に満腹になった胃へ無制限にポテトをポイポイ放り続けていたら完全に気持ち悪くなり、しかも食事の嬉しさと背中合わせですらない、ただサラダ油を痛飲したような端的な気持ち悪さに見舞われたが、それでも幸せだった。
そのあとはリアルゴールドを飲みながら『バキ』を読んでいた。いちばんどうでもいい時間。刃牙シリーズって漫画喫茶で適当に読むのにいちばん適してる感じありませんか?

本棚を歩いて「こんなんあるんだ」みたいなことを思ったりパンうまそうだなとか思ったりしている自分が井之頭五郎のようだなと思い、サラリーマンが朝夕いろんなタイミングで一人ネカフェに入って満喫しモノローグで喋りつついろいろ食べたり実在の漫画を読んで紹介したりする孤独のグルメのパロディWeb漫画『孤独のネカフェ』のことを考えていた。そんなものはない。

シャワーが浴びられるという噂だったので浴びてみた。いい感じだった。

金を払うだけで炭酸やらアイスやらポテトやらパンやらが無限に食べられて、無尽蔵な量の漫画も読めて、シャワーも浴びられるなんてすごすぎる……とびっくりした。こんな場所があるなんて……みんなに教えてあげないといけない。おすすめです!!!!


「……ってるよ」


え?


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「みんな、もう知ってるよ」

そうなの!?!


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「うん……」

そんな……


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「元気出して!!」

みんな……!!


それでまあ3時間くらい過ごして、会計して店を出た。500円いくらで済んだので嬉しかった。


ブックオフへ寄って6冊くらい買った。なんかこう「サブのカル」って感じのラインナップになってる気がしてキッ……ってなってしまうので何を買ったのかは載せないけども。読みたいなと思った漫画を買っているのみなのに……

前にも一度来たのだが110円棚の品揃えがちょうどよくて好印象なブックオフである(好印象っていう言葉ってなんか偉そうなニュアンスがあってヤですね)。
自分にとっての「ブックオフ」は「ブックオフの110円棚」を指しているなと思った。

駅前で幼児が寿司づめになったカートを押して散歩する幼稚園の一行を見てありがとうと思ったり、銀行でお金を下していたら銀行員の女性がサンタ帽をかぶって真顔で接客しているのが見えてありがとうと思ったりした。


それで急に渋谷へ向かった。井の頭線混みすぎ!!!平日だぞ!!!!みんな働いてないのか!!!!

混みすぎ電車に乗ったのが久々だったのでワーと思いつつ、人々と密着しながら線路上を高速で移動した。混みすぎだったが、知らん女性が操作するLINEの画面が見えた(注視したのではなく、目を開けたら瞬時に目に入る位置状態だった)際にその会話の相手がよつばとのLINEスタンプで返信をしており、ありがとうと思った。

渋谷の定点ライブカメラ映像を特に何をするでもないときに目のやり場としてよく流しているんだけど、そういやあれに映っておくか、と思って映ってきた。

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この中のどこかにおります。


駆け足でツタヤへ入った。

少し前に「聴きたいやつをツタヤでたらふく借りてファミレスでPCにインポートし即日返却して帰る」というのをやったのだが、それをまたやった。
聴きたいやつをメモして暮らし、ある程度の枚数になったらツタヤに向かう、というライフワークが根付いてもう何年になるかわからんが、東京に移り住んで利用店舗が渋谷になったせいでその規模が極端になっている感じがある。

数時間ツタヤをうろついて回り、目的のやつを見つけてはカゴに放り入れ続けた。この時間が人生でもかなり上位の至福だったりする。
ところで会計の際「これ会計してないCDも何枚か忍ばせて退店してもすぐ返却したら絶対ばれないよな」と思った。大丈夫なのかしら。自分はそういう悪を働く勇気がないので逆に入念に枚数を数えて会計画面と照らし合わせたりしていた。
43枚借りてたらしい。多分また記事にします。

ラップトップを広げて延々インポート作業をやれるような店を探した。コンセントが必要になるから苦労する。前回はガストに入ったが今日はすこぶる混んでおり「充電できる席がいいんですケド」などと申しつけられる雰囲気でもなかったので諦めた。

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結果、モスバーガーに入った。一人では逆立ちしても入らない(ケチだから)のだがコンセントが備えられているという情報を捕捉し、こういう機会に入っておくか、と思った。

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それで延々インポートを進めながら片手間にここまでの文章を書いた。いちばん好きな時間かもしれないね。

かなり時間をかけて全てのインポートを完了し家路についた。

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なんかお腹がすいて、おもむろに渋谷のマックでチキンクリスプを二つ買って帰った。

帰りの電車で、自分はドア付近に立っていたのだが、目の前に女子高生が一人ドア横に立って携帯を触っていた。普通にその時間が続いたのだが、ある駅に停車してドアが開き人々の乗り降りが落ち着いたくらいのタイミングで、女子高生の手からドアの外へ、携帯電話が落ちた。

乗客それぞれが携帯とか本に没入し始める前の、停車とか乗降にあたって周りに意識が向いている時間であったため、おそらく周囲の乗客のほとんどがその様子を見ていた。そして乗客たちも自分も、誰より女子高生本人の肝が一斉に冷えるのがわかるすごい瞬間だった。

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(「電車とホームの隙間」のフリー素材なんてあるんですね)

そして何がすごかったかというと、そうして落ちた携帯がホームとの隙間の穴ギリギリの地点(上画像でいう左上)にバコ!!!と落ちたことだった。

つまりホームとの隙間に落ちることはなくセーフだった。で面白かったのは、女子高生はそれまで眠そうというか疲れた感じの表情だったのだが、携帯を拾い上げて元の立ち位置に戻る際、めちゃくちゃ目が開いていた。明らかに「あっっっっ………ぶね~~~~~…………」という表情で周りを一瞥していた。そして目が合ったのだが多分そのとき自分も「あっっっっ………ぶね~~~~~…………」という顔をしていた。多分みんなしてた。
知らん乗客たちとの無言の間に奇妙な連帯と共感が生まれ、しかし別に言葉も交わさず、その後は元通り各々が普通に電車に揺られていた。

それにしてもあのとき隙間に携帯が転がり落ちていたらと思うと恐ろしい。落とすこと自体もなのだが、どっちかというとその際の空気がすごいと思う。想像しながら読んでほしい。
まず急に携帯がガコッ……と落ち、みんなの肝が冷える一瞬の完全な静寂が訪れる。そして女子高生が「え……?これどうすんの……?」という感じの様子でこちら側へ視線を向ける(物静かそうな人だったが多分そんなことになったら反射的に周りを見るだろう)。でもこっちもどうすればいいかわからない。だからこっち、自分含む乗客一同も「え……どうすんの……?」という表情で顔を見合わせる。そういう感じで、周囲の全員が自分の時間から引き剝がされ「ど、どうしよう……」という空気が一瞬で、無言で共有されると思う。

で、まあ数秒後にその場の誰かが沈黙を破り、焦った小さな声で「と、とりあえず駅員さんに……」みたいなことを女子高生に言うか、もしくは無言の空気感のまま女子高生が独自に駅員とか車掌とかの方向へ走り出していただろう。次に嫌なのは、女子高生が走り去ったあとに取り残された我々乗客たちの間に残留するマジでなんともいえない空気である。明確な出来事を共有している最中でありながらみんな視線の行き所を失うし、かといって顔を見合わせて「っすね……」となんか話しかけるのもおかしい。なんか話しかけるのもおかしい、というその「感じ」を全員が肌に感じながらとりあえず女子高生を待つ感じの時間が(女子高生の身内でもないのに)始まる。
嫌すぎる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それで多分携帯が落ちたこと自体も大変なことになると思うし、そう思うと落ちなくて本当によかったな………


そんなこんなで最寄りに着いて、薬局でウーロン茶とピザポテトとアルフォートを買って帰路についた。

途中のベンチに座ってチキンクリスプを食べていたら近くでめちゃくちゃサイレンが鳴り始めた。ポテモク(ポテト目的)で朝五時から快活クラブに直行してその夜に路傍でチキンクリスプを食べ続けている意味不明な痩せたオタクを誰かが通報したのかもしれないなと思いながら完食して帰った。

それはそうとこの日の食事を振り返ると「無制限なポテト」「モスバーガー」「チキンクリスプ」「チキンクリスプ」ということになる。最悪すぎる。でもいつもこういう感じだから別に驚きがないことがさらに最悪すぎる。
年末から正月にかけて帰省の予定があり、その間は健康な食生活を目指すつもりでいる。帰省というより実家の猫に会えるのが嬉しすぎる。

実はこの日、昼に渋谷に着いてからツタヤ行きを取りやめて帰宅を検討していたほど身体が睡眠を求めており、加えて疲労もすごかったので帰ってすぐぶっ倒れて寝た。

それで結局17時間寝てた。独特な質感のねずみを手に持つ夢とかを見た。その夜にこれを書いています。友達がサカナクションのライブに行っていてうらやましい。以上です。

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