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2017旅行記その12:「移民」の意味

アイスランドよりマシだと思っていたが、ニューヨークの春は結構寒い。ただ、ホテルのテレビでやっている天気予報の気温は全て華氏で表示されるので、摂氏に慣れている私にはその日の気温がどんなものなのかの想像が全くつかない。単位ひとつ変わっただけで、こんなに意味不明になるとは思わなかった。真剣な顔をしていたからだろう、同じように朝食を取りに来た男性から「何かあったの?」と聞かれてしまった。ただ頭の中で、何とか数字を変換しようとしてただけなのだが。

この日はニューヨーク観光の定番中の定番、自由の女神を見に行くことに。台座や冠部分へ入ろうと思うと、事前に予約をしないとダメらしいが、そこまでこだわりもなかったので当日リバティ島とエリス島へのチケットを買うことにする。メトロの駅からフェリー乗り場まで、何やらチケットを手売りしている若い兄ちゃんがちらほらいたが、あとでトラブルになってもめんどくさいので、オフィシャルっぽいところで購入し船に乗り込む。

程なくフェリーはリバティ島に到着。個人的にヒットだったのは、女神像ではなくリバティ島から見るマンハッタンの街並みだった。世界中のエネルギーが集まってくるニューヨークを、海を隔てて眺めることで、ちょうどいい客観性を得られるような気がした。渦中にいると、ついつい大事なものを見失ってしまうこともある。煮詰まってしまったときは、リバティ島のように物理的に引いたところから見てみると、気が楽になるんじゃないだろうか。

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次はエリス島へ。ここにはかつてアメリカ合衆国移民局が設置されていて、移住しようとした人々が最初に踏んだアメリカの土地だ。当時の建物は現在博物館になっており、やってきた人が使っていた部屋や設備、撮られた写真などが展示されている。主にヨーロッパからの移民が多かったようだが、アジア系、それも和服を着込んだ人の写真もちらほら。はるばる太平洋を渡り、不安と希望を胸にこの地を踏んだ大先輩たちもいたのだ、と思うと気が引き締まった。

折りしもアメリカには新しい大統領が誕生しており、その移民政策が話題になっていた時期。私はエリス島に来て、反発するアメリカ人の気持ちが少しわかったような気がした。彼ら彼女らのご先祖さまもまた、成功を夢見てこの地へやってきた移民の一人だったのだと。そうやって世界中から様々な人を受け入れることで、アメリカは発展するエネルギーを生んでいたのだと。なかなか厄介そうな人物だが、私が日本に戻るまでは、旅行しにくくなるような動きはしないで欲しいと切に願いつつ、マンハッタン島へ戻るフェリーへ。

そしてこの日は珍しくスーパーでビールを買おうと思ったら、IDを見せないとアルコールを買うことができないとのこと。普段からパスポートのコピーは持ち歩いているので、それで何とかなったが、こういうところは日本より厳しいんだな。宿に戻ったら、お酒の力も借りて早々にベッドへ潜り込んだ。

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