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グリオの家族愛

ヤクバの、お兄ちゃん(アミドゥ)への愛がとにかくすごい。

最初は、カップラーメンを買ってこい、お茶を入れてこい、これをやれ、あれをやれと、兄の言いつけには全部従わなければいけない文化なんだなあ、韓国の軍隊みたいだなあ、大変だなあと思っていたし、まわりの韓国人も二人の表面的な言動だけを見て、最初の私のように誤解する人も多いようだ。

チームのみんなで1泊の合宿に行った日の朝。ヤクバがスニーカーを磨いていた。そういえば、二人の靴はいつもピカピカだ。こうして毎日靴を磨いていたんだなあと感心した。「ヤクバ、おはよう。靴磨いてるんだね。」と声をかけると、うっとりとした顔で「うん、アミドゥ(お兄さん)のだよ」と答えて、また熱心に靴磨きをつづけた。後で、それをアミドゥに話すと「ブルキナに帰ると弟たちが僕の靴をとりあって磨く」と答えた。みんなお兄ちゃんが大好きなのだ。

ヤクバは今、お兄さんから楽器の作り方を習っている。ある日、ジャンベを2つ完成させて「いやー、よくできた!!アミドゥが見たら何ていうかな、きっとすごい、よくやったって喜んでくれるかな。いやいや、ここが気に入らないって、こうじゃないって文句言うかな。」とアミドゥの言い方を真似しながら、とっても嬉しそうに何度も何度も同じことを話す。

「ヤクバはアミドゥが大好きなんだね。」と言うと、「うん、世界で一番好きな人だよ。」と言う。「今まではお父さんが一番好きだったけど、今はお父さんが死んじゃったから、アミドゥがお父さんだ。だからアミドゥが一番好き。」

25歳の男子が、父にしろ兄にしろ、「世界で一番好き」と言っていることに軽く衝撃を受けた。きっと韓国にも日本にも、こんな男子はいない。この年代だったら、恋人とか、アイドルとかだろう。いや、そもそも「世界で一番好き」っていうストレートすぎる表現は、あまりしないかもしれない。

「そうなんだ、お母さんじゃないんだね。日本や韓国は、お父さんよりお母さんが好きな子供のほうが多いよ。お母さんと一緒に過ごす時間のほうが長いからね。」と言うと

「ふーん。お母さんとずっと一緒にいるからお母さんが好きなの?」

「みんなそういうわけじゃないけど、そういう人が多いかもしれない。」

「そうなんだ。ブルキナでは子供は5歳くらいになると、お母さんとはもう一緒にいないよ。お父さんにくっついて、お父さんの仕事を学び始めるから。みんなお父さんが大好きだよ。」

とにかく、お父さんにもお兄さんにも、よく叩かれたと言っていたのでとても意外だった。アミドゥとヤクバは、バラフォンの練習中に怒っているお父さんの物まねをよくしてくれた。教えたとおりに演奏できないとスティックが飛んでくる。二人は大笑いしていたけど、体罰だよなあ、かわいそうだなあと同情した。それが、叩かれても怒られても、それ以上に深い愛情と信頼で、しっかりと兄弟、親子の絆が結ばれていたのだ。二人を見るとそれがとても強く感じられる。

わたしは、そんな気持ちで親を愛せているだろうか?子供を愛せているだろうか?尊敬できているだろうか?ヤクバとアミドゥの兄弟愛を感じるたびに、自問するようになった。


※すべて、アミドゥ、ヤクバ本人たちの了承を得て書いています。

※写真は筆者が支援している、ブルキナファソのオロダラにある音楽学校、tiamonyonのこどもたちの写真です。グリオの伝統と音楽を守るためにバラフォン奏者、アミドゥ・ディアバテが作っている学校です。

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