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千葉に根付く球団〜マリーンズの地域密着プロジェクト〜

どうも、やまけん(Twitter:@yam_ak_en)です。
2019年シーズンの開幕が刻一刻と迫る中で昨シーズンのマリーンズを振り返ってみると、前任の伊東勤監督に代わり選手として現役を引退した井口資仁新監督が就任し、新体制でのスタートとなりました。井口監督は様々な改革を掲げての船出となり、夏場まではAクラス争いに加わっていたものの最終的には5位。監督が代わるだけでAクラスに入ったり優勝できるほど簡単ではないことを改めて感じさせられました。

その一方で、嬉しいニュースもありました。球団の主催試合における観客動員数が166万5,133人と、過去最高だった2008年の160万1,632人を上回り、球団新記録を更新したのです。
(球団史上最多 観客動員数記録 −千葉ロッテマリーンズオフィシャルサイトより)

観客動員数の記録更新として、井口監督初年度であることや若手新戦力の台頭、生え抜き大ベテランである福浦和也の2000本安打達成への注目が集まったことなどが要因として挙げられると思いますが、そんな中で自分は2012年から始まった球団の「ALL for CHIBA」プロジェクトが成果を出しつつあるのも1つの要因なのではないかと考えます。

今日はそんな球団の地元密着戦略について書いていきたいと思います。ややまとまりのない文章かもしれませんが、読み進めてくださるとありがたいです。

目次
1."ALL for CHIBA" とは?
2.千葉県内の潜在ファン
3.ドラフト戦略から見るALL for CHIBA
4.終わりに

1."ALL for CHIBA" とは?

まず、ALL for CHIBAについて簡単に説明をしていきます。2012年、ロッテが千葉に移転して現在の「千葉ロッテマリーンズ」という球団名に変更して20周年となった記念の事業として開始され、選手が特別なユニフォームを着用して試合に臨むようになりました。2012年から2015年までは白地に「CHIBA」と書かれたシンプルなユニフォームでしたが、2016年から移転25年目を記念してデザインが一新され、「サンライズレッド」カラーのユニフォームとなりました。

(2012年〜2015年の限定着用ユニフォーム)

(2016年~現在の限定着用ユニフォーム※途中マイナーチェンジあり)

コンセプトはその名の通り「地元千葉県のために戦う日」というもので、これまで20年以上本拠地としてチームを照らし続けた千葉県に感謝し、これからも千葉県とともに歩んでいくためのイベントです。ALL for CHIBAデーには球場内外で千葉にまつわるイベントが多数開催されています。例えば試合前のファーストピッチセレモニーではイベントに協賛している県内企業の社長が登板したり、試合前の国歌斉唱(演奏)を県内の歌唱団や吹奏楽部などが務めたり。かつては九十九里浜で取れた焼きハマグリを当日の来場者に無料で振る舞ったこともあります。昨年の6月14日に、福浦の母校で全国的にも有名な習志野高校吹奏楽部がZOZOマリンのライトスタンドでマリーンズ応援団と合同応援を企画し、話題になったことを覚えている野球ファンの方も多いのではないでしょうか?

このように、球団が千葉に感謝し、今後も千葉とともに歩んでいくということを強く意識した様々な地元コラボレーションが行われているのがALL for CHIBAイベントです。また、このイベントを行うにあたり、県内の12市(本拠地のある千葉市と秋季キャンプ地である鴨川市、その他二軍公式戦を開催する10市)と球団がフレンドシップシティ協定を結び、各市と連携して様々な活動に取り組んでいるという点も特徴です。協定を結んでいる市サイドは、一二軍の公式戦やキャンプ開催の際に市をあげて全面的にマリーンズをサポートし、球団サイドはそれを地域振興として様々な形で還元するという相互作用が成り立っていると言えます。他球団を見ても、このような取り組みをしているチームは少ないのではないでしょうか?

(コンセプトや協定の詳細は公式サイト特設ページをご覧ください。)

2.千葉県内の潜在ファン

ロッテの千葉県移転20周年となった2012年に始まったこのイベントですが、長いプロ野球史で見たときに20年,30年というのはまだまだ日が浅いと言っても過言ではないでしょう。ロッテの千葉移転以前の県内の野球ファンといえば、東京に近いという地理的特性と国民的大スターで県内(佐倉市)出身の長嶋茂雄氏の存在もあってか巨人軍のファンが多数派だったのだろうと推測します。そしてその名残で現在も県内に多くの巨人ファンが存在する、と。一方、移転直前のロッテはというと、当時人気の面でセ・リーグに劣っていたパ・リーグの中でも一際人気のない球団として知られ、お世辞にも強いチームであるとは言えませんでした。当時、千葉に来たからといって乗り換えるようなファンなど極めて少数派だったのでしょう。

移転後はAクラスに入る回数も徐々に増え、2度の日本一(2005年,2010年)に輝くなど、次第にチーム力をつけてきた千葉ロッテマリーンズ。そして2012年から始まったALL  for CHIBAプロジェクト。次第に千葉県内のファンも増えてはきていますが、まだまだ県内には潜在的なファンが多いのではないでしょうか?冒頭で、このプロジェクトによって観客動員数が伸びてきていると書きましたが、自分はこうした潜在ファンを取り込むことはまだまだ可能であると思っています。

例えば、球団が力を入れている県内の小学校訪問。選手が小学校を訪問し、小学生達と一緒に給食を食べたり、様々な交流活動をしています。近年ではマリーンズが制作している「マリーンズ算数ドリル」を選手が小学校に訪れて直接子どもたちに贈呈するという新たな交流も始まっています。また、特定の試合日に球場に訪れた小・中学生限定でマリーンズキャップを無料配布するなど、小・中学生のファンを取り込もうとしていることが伝わります。

(小学生と交流するマーくん、有吉優樹)

小・中学生からすれば、普段テレビの向こうで試合をしているプロ野球選手はきっと偉大な存在のように感じられるでしょう。そんな偉大なプロ野球選手がテレビの画面を超えて学校に訪れ、野球場より近い距離で子どもたちとたくさん交流することで、野球に興味がある子は「今度はマリンスタジアムで学校に来てくれた〇〇選手が試合に出ている姿を見に行きたい」「マリーンズナイターをテレビで見てみようかな」となってくれるかもしれませんし、興味のなかった子も「野球ってどんなスポーツなんだろう?」「〇〇選手は野球ではどんな人なのかな?」などと興味を持ってくれるかもしれません。何れにせよ、ファンになるきっかけを球団側が提供していると言えるでしょう。

二軍戦の千葉県内開催も更なる地元ファン獲得に一役買っていると感じます。開催する市内の少年野球チームや中学野球部を無料招待したり、球場外では球団公式ダンスチーム「M☆Splash!!」のダンスショーやキャラクターショーなどのイベントが行われ、試合後には選手のサイン会や写真撮影会などが企画されたりもしています。近年は平沢大河、安田尚憲、藤原恭大などの甲子園で輝いたスター球児がドラフトを経てチームに入団しており、小・中学生の野球少年は高校日本代表としても大活躍していた彼らのプレーを間近で見ることによって、プロへの憧れとともに「いつかこの選手たちと野球をやってみたい!」といったマリーンズへの憧れを抱いてくれるのではないでしょうか?

また、小・中学生に限らず普段はマリンスタジアムで試合を見ることは滅多にないという方も、地元の球場での二軍戦に足を運ぶによって「将来この選手が成長して一軍に上がったら見に行こうかな?」などと注目してくれるきっかけになるとも思います。プロ野球を身近に感じさせるという意味で二軍戦の地元開催は有意義なものであるように感じます。現時点ではハード面の条件等で現実味が薄いかもしれませんが、将来的には二軍球場や選手寮を現在の浦和から移転するということも、もしかしたらあり得るかもしれません。

3.ドラフト戦略から見るALL for CHIBA

上の表は、千葉に移転した1992年以降ロッテがドラフトで指名した選手の一覧です。1992年から2018年の27年間で16名の選手を指名しました。これが多いか少ないかはともかく、特筆すべきはALL for CHIBAプロジェクトが始まった2012年以降のドラフトで7名もの千葉出身選手を指名しているのです。

ALL for CHIBA開始前は記憶にも記録にも残っていないためわかりかねますが、2013年以降の千葉ロッテマリーンズスカウト陣は「千葉県」に担当スカウトを1人置いています(2013年~2017年は山森雅文スカウト、2018年~は榎康弘スカウト)。決して地元を悪い意味で贔屓したりしていることはないと思いますが、千葉県出身の好選手がいたら積極的に獲得しようという球団の方針が伺い知れます。「千葉のために戦う、千葉とともに戦う」という球団のコンセプトのもと、編成部のスカウト陣も地元のスター候補の獲得に力を注いでいるのでしょう。

やや話は逸れますが、2019年のドラフト候補の中で「高校生投手BIG4」と呼ばれる好投手のうちの1人である横浜高校の及川雅貴投手は千葉県匝瑳市出身です。ロッテスカウト陣は既に及川を上位候補にリストアップし、出場が決まっている今春の甲子園もスカウト総動員でチェックするとのことです(参考:https://www.hochi.co.jp/baseball/npb/20190127-OHT1T50388.html)。また県内を見てみると、木更津総合高校の根本太一投手は千葉県成田市出身で、昨夏の千葉県大会・甲子園大会で登板し、最速149キロの速球を投げドラフト候補として注目を集めています。ちなみにこの2人は小学6年生の時に共に千葉ロッテマリーンズジュニアのメンバーとしてNPBジュニアトーナメントに参戦していた過去を持ちます。まだまだ千葉県出身や千葉にゆかりのあるドラフト候補はたくさんいますので、マリーンズファンの皆様はぜひ注目してみてはいかがでしょうか?

4.終わりに

昨年、千葉県出身で千葉ロッテマリーンズ一筋の福浦和也が2000本安打を達成した瞬間、球場は割れんばかりの歓声が沸き起こり、ロッテファンの地鳴りのような福浦コールが球場に響き渡りました。自分は球場であの瞬間に立ち会うことはできなかったのですが、それでもあのシーンは今後忘れることはないと思います。

必ずしも千葉県出身であるべきとは言いませんが、今後、現在の地域密着プロジェクトを進めていくであろう球団において、福浦は理想の選手だと言えるかもしれません。千葉で育ち、千葉の球団に入り、千葉を愛し、千葉に愛された福浦のような選手を今後継続的に育てていくことが、マリーンズのチーム強化並びに地元密着の強化につながるのではないかと思います。

各球団とも地域密着には多かれ少なかれ力を注いでいるとは思いますが、個人的に球団としてそれを強く感じるのが伝わるのが広島東洋カープと横浜DeNAベイスターズの2球団です。両球団ともホームタウンでは球団のユニフォーム等がファッションに取り入れられたりしています。賛否両論ありますが広島での県をあげたカープの応援体制は凄まじいものを感じますし、横浜もDeNA体制になってからは港町横浜のシンボルと化しつつあります。

少し前に千葉県内某所を歩いていると、マリーンズのイベントの際に配布されたキッズキャップやTシャツを着て外を歩く男の子を見かけました。以前はそんな子は滅多にいませんでしたが、最近はそういった子も増えてきているように感じます。地味かもしれませんが球団のプロジェクトが徐々に浸透してきている証拠ではないでしょうか?

まだまだ少数派かもしれませんが、いずれは大人やお年寄りの方も含めた県民全員がチームのTシャツを着て外出できるような(それは言い過ぎかもしれませんが)、そんな誇りの持てるチームを、選手・球団・親会社・ファン・千葉県が一体となって作り上げることができたら素晴らしいなと思います。千葉ロッテマリーンズの更なる発展を願ってやみません。

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