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習志野野球部の進化~なぜ春夏連続甲子園出場できたのか?~

どうも、やまけん(Twitter:@yam_ak_en)です。
8月6日(火)から、第101回全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)が始まります。各都道府県の出場校が決まり、千葉県からは習志野市立習志野高校が2011年以来の夏の甲子園出場を決めました。各地方大会では、習志野高校が春の甲子園決勝で対戦した愛知の東邦高校など、名門校が続々と敗退する厳しい夏でしたが、そんな中で春夏連続甲子園出場を決めた習志野高校は本当に素晴らしいと思います。

習志野高校の野球部はとあるご縁があり、この夏も注目していました。春夏連続の甲子園出場を決めた千葉県大会決勝戦も現地で観戦させていただき、優勝を決めた瞬間に立ち会うことができました。習志野野球部についてはこちらのnoteでも以前取り上げさせていただきましたが、この夏の千葉県大会で習志野野球部を見て、自分は「習志野野球部は確実に春よりも進化している」と感じました。今回のnoteでは、習志野野球部のどこが進化したのかという点に関して書いていきたいと思います。夏の甲子園が始まる前のこのタイミングで、ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。

1つ目の進化:「打撃力」

まず挙げたい進化は「打撃力」です。春のセンバツでの習志野は、どちらかといえば「守りのチーム」で、攻撃面では打力で相手を圧倒するというよりかは相手のミスを見逃さなかったり、足を絡めたりして少ないチャンスをモノにするというスタイルでした。相手投手の四死球やエラーなどから出塁することが多かった春の大会ではこの戦法が力を発揮しましたが、投手力や守備力が鍛え上げられるであろう夏の大会ではより「打撃」の成長が求められるのではないかと思っていました。

こちらは、春の甲子園と夏の千葉県大会での習志野高校の各選手(スタメン)の打率です。県大会と全国大会の違いもあり参考記録ではありますが、打率に大幅な成長が見られるように、現地で見ていた人間として確実に打撃面で進化が見られました。春の大会でも随所で発揮した「粘り」に加え、各打者スイングが強くなっており、またチームとして相手投手の狙い球を絞って打席に立てていると感じました。特に千葉県大会準決勝で、篠木健太郎投手と根本太一投手という140キロ後半のストレートを投げる投手を2人擁する木更津総合高校を相手にしても、そのストレートに振り負けずに得点した姿を見て確信しました。

個人名を挙げると、4番を打つ櫻井亨佑選手、5番を打つ高橋雅也選手、6番を打つ和田泰征選手ら2年生の成長を大きく感じました。センバツでもクリーンナップを打っていた櫻井選手、高橋雅也選手は帰ってきた春の千葉県大会から自信を持って迷いなくスイングできている姿が印象的で、昨年からベンチ入りするなど期待の大きかった和田選手も夏に試合を重ねる中で何かを掴んだのか、遂に覚醒したという印象を受けました。2年生の4,5,6番は出塁能力も高く、彼らが出塁した後に勝負強い7番の兼子将太朗選手がタイムリーヒットを放ち得点するという新しい得点パターンもできました。昨年の秋は後輩捕手とレギュラー争いをしていた兼子選手ですが、今大会では打率.500、チームトップの9打点をマークするなどすっかり頼もしい選手になりました。

春のセンバツでは打率.545をマークした根本翔吾選手の出塁能力と走力を生かして得点することが多かった習志野野球部ですが、この夏の序盤は根本選手になかなか当たりが出ませんでした。そんな中でも上記4選手の活躍があり得点を重ねることができました。従来の機動力も健在で、打力が増したことにより攻撃面での引き出しが増えたように感じます。上記4名、個人的には特に和田選手には甲子園でも期待したいと思います。

2つ目の進化:「投手力」

2つ目に挙げる進化は「投手力」です。春のセンバツでは左投げの山内翔太投手、アンダースローの岩沢知幸投手が先発し、リリーフの飯塚脩人投手に繋ぐという継投スタイルを全試合で採りました。もちろん、タイプの違う2人の投手で継投することによって相手打線を翻弄し、打力を封じるのが狙いの1つではあったと思いますが、春の段階では投手全員が1人で1試合を投げ切るのに不安の残る状態であったために継投という選択肢を採っていた側面もあったかと思います。

しかし、準々決勝の成田高校戦、準決勝の木更津総合戦では飯塚投手が先発し両試合とも完投、決勝の八千代松陰高校戦では山内投手が先発して完投と、県大会の最後の3戦はいずれも1人の投手が投げ切り勝利しました。飯塚・山内両投手ともスタミナ面が不安視されていましたが、完投で見事にそれを払拭してくれました。従来の継投という選択肢に加え、完投という選択肢が増えたことの意味は大きく、特に2番手格の山内投手にも1試合を任せられるようになったことの意味は大きいと感じます。また、飯塚投手の先発という選択肢も新たにできたことから、対戦する学校はこれまで以上に習志野の先発投手を予想したり対策を立てたりすることが難しくなったのではないか?とも思います。

そして、今大会では春のセンバツで登板のなかった10番の山本慶都投手、11番の杉山隆玄投手の2人が大会序盤から中盤にかけて好投し、飯塚投手や山内投手の負担を減らすことができました。以前より安定感の増したこの2人は、甲子園の舞台でも同様に飯塚投手らの負担を軽減する役割を担えるのではないか?と思っています。
夏の甲子園では対戦校とともに暑さも敵となります。勝ち上がって試合が続くと疲労も積み重なるため、目の前の試合を戦いながらいかに疲労を分散できるか?という点がキーポイントになります。その点で、春に登板のなかった山本投手や杉山投手もある程度計算できるようになったことは大きいと思っています。

もちろん投手として見ても、各投手とも着実にレベルアップしています。飯塚投手は時に130キロ後半を計測する高速スライダーや「揺れるように落ちる」フォークを投げて更に攻略の難しい投手になりましたし、山内投手はもともと安定していた制球に加えて各変化球の精度を高めたことで2巡目、3巡目の打線も難なく抑えられるようになりました。残念なのは県大会で岩沢投手を見ることができなかった点ですが、習志野投手陣の「秘密兵器」的存在の岩沢投手はあえて県大会で「見せなかった」のが正しいのかもしれません。岩沢投手の進化は甲子園の舞台で見られることを期待したいと思います。

夏の甲子園に向けて

センバツで準優勝したことで各校からのマークも厳しくなったでしょうし、夏のトーナメントも決してくじ運に恵まれた訳ではなかった習志野高校野球部。当然、春夏連続となる甲子園出場へのプレッシャーもあったことと思います。そんな中で、春から進化した側面も見せつつ自分たちの野球をして激戦の千葉を制したのは本当に素晴らしいと思います。

冒頭にも貼った春のセンバツ後のnoteにも書かせていただきましたが、習志野の夏の課題は投打での勝負力と飯塚投手の負担軽減の2点だと思っていました。しかしながら、習志野野球部もこの2点を課題と認識していたかのように夏に進化を見せてくれました。
何より、習志野の野球部には、高校生離れした「粘り強さ」があります。ここ一番で簡単に失点しない、簡単に凡退しない粘り強さは、夏の大一番の勝負において確実に活きてくると思います。

千葉県民として、千葉の高校野球ファンとしての贔屓目なしに、今年の習志野は優勝を狙えるチームだと思っています。

どうか、怪我と熱中症には注意して、夏に最高のパフォーマンスを発揮していただきたいと思います。

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