壮行試合の9回裏に見えた高校日本代表の「甘さ」

どうも、やまけん(Twitter:@yam_ak_en)です。8月26日(月)に行われた「侍ジャパン壮行試合」高校日本代表vs大学日本代表の試合、おそらく野球好きの皆様ならご覧になったかと思います(私は残念ながら録画視聴でしたが)。

高校と大学の日本代表に選出されるほどの有力選手が揃う本壮行試合では、当然ながら個々の選手のハイレベルなプレーを見ることができるため毎年注目度は高くなっており、特に今年は高校日本代表の佐々木朗希投手(大船渡)と奥川恭伸投手(星稜)、大学日本代表の森下暢仁投手(明治大)と今秋のドラフトで1巡目での競合が有力視される「BIG3」の揃い踏みということもあってか例年以上に注目が集まっていたように感じます。

令和の怪物・佐々木が凄かったのはその投球ハイライトを見ていただければわかることだと思うので(笑)、今回は9回裏の高校日本代表の守備について振り返りたいと思います。

高校代表のポジション

こちらは、今回取り上げる壮行試合の9回裏の高校日本代表のポジションです。高校代表は20名までしか選出できず、また本大会の過密日程のため投手を多めに選出する都合上、どうしても本職以外のポジションを守る選手が出てきてしまうのは毎年仕方のないことです。ですが、そういった不慣れな状況への対応で本番の勝負が決まるといっても過言ではありません。日頃のプレーの中でいかに「準備」「確認」が徹底されているかがこのような場面でわかるとも言えます。

9回裏を振り返る

という前置きをし、ここからは9回裏の問題のプレーを振り返っていきます。なお、ここから選手名は敬称略とさせていただきます。

⑴:9回、高校代表の投手・飯塚(習志野)は1アウトを取ったのち古川(上武大)から135キロのフォークで三振を奪うも、これを山瀬(星稜)が後逸し、振り逃げで1アウト1塁となります。これまで奥川の一級品のボールを受け続けてきた山瀬も飯塚のウイニングショットを簡単には止めることができません。

⑵:1アウト一塁から打席には篠原(筑波大)。1-0からの2球目に投じたスライダーがワンバウンド、これを山瀬が一塁側に弾く隙に古川が二塁を陥れ1アウト二塁。ここで主将のセカンド坂下(智弁学園)がタイムを取りマウンドに寄るも、他の野手は集まらず。恐らく、飯塚に対して落ち着くよう声かけしにいったものと思われます。

⑶:1アウト二塁、3-1から篠原は真ん中低めの直球を叩きショートゴロ…かと思われましたがショート熊田(東邦)が三遊間寄りに守っていたために追いつけず、同点タイムリーとなってしまいます。

この後、センター前に抜けた打球を森(桐蔭学園)が全力でバックホームするのを見て(そして案の定その送球が逸れて山瀬が捕球できず)、篠原に二塁を陥れられます。

なおこのプレーで森は足をつり、一時治療のタイムが取られました(その後森は復帰しプレーは続行)。

⑷:同点の1アウト二塁で打者は右の竹村(近大)。この場面で、クイックで投じていなかった飯塚の隙をつき篠原が三盗成功。1アウト三塁の絶好のチャンスを作りますが、竹村は飯塚の外高め148キロの直球に三振。2アウト後、宇草(法政大)を申告敬遠したものの後続の児玉(九州産業大)から三振を奪い結局同点止まり、5-5で試合終了となりました。

ポイント①:熊田のポジショニング

まず気になったのが、篠原の同点タイムリーの際のショート熊田のポジショニングです。
左打ちの篠原は打者としてはコンタクトの上手い巧打者タイプという感じで、パワーに長けているタイプとはお世辞にも言い難い選手です。そして、この日の飯塚は140キロ中盤~最速151キロの速球で大学生のバットを押し返し、逆方向にファールを打たせていました。このことから、1点を阻止するためにレフトはかなり前にポジショニングできると考えられます。三遊間をゴロで抜けたとしても二塁ランナーが本塁に生還できる可能性は低いことから、ショートは三遊間を詰めるよりも同点のランナーとなる二塁ランナーをケアすること、すなわち二遊間を詰めることを優先すべきだったのではないかと思います。
高校でショートを本職とする熊田には是非この辺は頭に入れてポジショニングしていただきたかったですし、隣で守るセカンドの坂下(本職はショート)や全員のポジショニングが見えているはずのキャッチャーの山瀬らが指示すべきであったとも思います。

ポイント②:森のバックホーム

その後の森のバックホーム。篠原の打球は高くバウンドして二遊間を抜けており、また森の最初のポジショニングも深かったせいか、森が捕球した頃にはランナーは既に三塁を回っていました。そのため、本塁に送球してもアウトになる可能性は限りなくゼロに近かったと思われます。
ここで大事なのは、「なぜプレーが続くのに後のプレーを考えずにバックホームするのか」という点です。もし同点の場面からサヨナラのランナーが生還し、ゲームが終わるとなったら話は別ですが、今回はまだプレーが続くケースです。内野に返せばそのまま何もなく篠原は一塁で止まっていたでしょうが、森が無闇にバックホームをしたせいで、またカットマンが1人も入っていないのを見破られて、篠原を無駄に進塁させてしまっています。無駄に塁を与えるほど失点リスクを高くするものはありません。

ポイント③:ノーマークだった三盗

打者に集中したかったのでしょうが、篠原を二塁に進ませた後も、飯塚は牽制も入れず、ゆったりとした通常のモーションで投げ、その隙を突かれて三塁を陥れられています。この直前、森の治療のタイムがとられていた際に何らかの話し合い、確認が行われるか見ていましたが、飯塚と山瀬はキャッチボール、内野手4人は固まって話すと、バッテリーと内野が分裂した状態でした。味方の治療のタイムとはいえ、この時間を利用して準備・確認に当てられるはずです。
篠原が三塁に進んでから、山瀬は最初に後逸したフォークを要求することがより一層できなくなり、直球とスライダーで勝負せざるを得なくなってしまいました。今日は飯塚の調子が良くフレッシュな状態だったため最終的には飯塚のボールの力で封じ込むことができましたが、連戦や悪いコンディションの中で同じ結果になったかはわかりません。

急造チームでもできることはある

例えば、木製バットに対応できないだとか、外国人投手の癖のあるフォームやボールに合わないというのは、正直高校生にすぐに対応しろと言っても難しいことだと思います。しかしながら、「投手と打者、状況を踏まえて適切なポジショニングを取る」「無駄な塁を与えない」「取れるアウトを取る」といったことは、急造チームでも決してできないことではないと考えます。それは、日頃の練習から状況判断の癖をつけたりすることでどうにかなることだと思います。
高校日本代表に選ばれる選手です。皆、ポテンシャルで言ったらそれだけのモノを持っています。だからこそ、壮行試合でのプレーを反省しつつ、雑なプレーをなくし、日本の高校生代表として相応しい野球を見せてほしいと強く願います。


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