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映画上映が「固まった」とき、観客はどう反応するか

先日、「輪るピングドラム」という映画を見に行った。10年以上前にテレビ放送された作品で、そのリメイクということになっている。

この作品の監督である幾原邦彦氏といえば「少女革命ウテナ」という名作の監督でもある。「ウテナ」は宝塚や演劇的演出をアニメに持ち込んだ先駆的な作品で、私が好きなアニメ作品をあげたら必ずベスト3にあげる作品のひとつだ。

幾原監督の作品である以上は、これは行くしかない、とばかりにクラウドファンディング企画にも一口応募し、映画チケットは前売り券で得て当日に臨んだ。

朝一番の上映のみ、少し広めで音質もよいスクリーンが空いていたので、予約をする。ギリギリまで仕事の具合が微妙だったので、最後は池袋へ移動中の電車内で予約をした。こういうところはアプリのおかげで便利になった。

さて、その「事件」はスタート30分頃に起きた。

それは前半の、徐々にストーリーが明らかになり始めるパートだった。緊張感のある展開が続き、アニメシリーズではなかった新規追加部分の最後のあたり、場面が切り替わろうとしてブラックアウトしようとしていたら、

「画面が止まった」

それがまた本当にタイミングがよくて、まさに切り替わる場面の瞬間だった。50人以上はいただろう観客のほとんどがこのとき、「ああ、幾原監督の演出なのだろう」と思っていたはずだ。

誰も声を出さなかった。次はどんな演出となるのだろうと、ストップした画面を固唾をのんで見つめていた。そうしたら、

「画面が真っ暗」

になった。たぶん、5秒か10秒くらい止まってのことだと思う。それでも、シーンの切り替わりを予想するタイミングのことだったので、観客のほとんどが、これも演出だと思ったはずだ。私もそう思っていた。

たぶん、「ずいぶん、タメが入るなあ。これはテレビだったら放送事故ものだ」なんて私は思っていた。たぶん、みんな思っていたのではないか。

しかし、どうもおかしい。さすがに1分切り替わらないのはやりすぎだ。そう思い始めたころ、誰かが席を立って係員を呼びに行った。

ようやくその場にいた全員が、これは機器トラブルなのだと思い至った。たぶん、呼びに行った人は2回目の視聴だったのだろう。

そのあと係員がやってきて、機器再起動のために10分ほど時間をいただきたいとアナウンスがあった。そのあいだにトイレに行かれてもかまわないと。スクリーンの明かりも一度ついた。

10数分ほど待たされることになったが、なんで故障したんだよという怒りの雰囲気はほとんどなく、場内はなぜか和やかな雰囲気だった。たぶんみんな、緊張感のある演出だと思い込んでいた自分をおかしく思っていたのだろう。

再上映が行われ(ストップしたところより数分遡ったところからのリスタートだった)、上映が終了したとき、劇場スタッフからは無料の鑑賞券が提供されるとアナウンスがあって、さらに観客の雰囲気は和らいだ。実質無料になったのだから、文句のでようもない。

渡されたのは2カ月くらいの期間限定のチケットだったが、幸いにしてここしばらくは観てみたい映画がいくつかある。「シン・ウルトラマン」もしくは「からかい上手の高木さん」でも観に行こうかと思う。

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