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河津町谷津の南禅寺(なぜんじ)に伝わる本尊・薬師如来坐像など26体が、国の重要文化財になります。

 3月15日に開催された文化審議会審議会文化財分科会で、河津町谷津の南禅寺(なぜんじ)に伝わる本尊・薬師如来坐像など26体が国の重要文化財に、静岡市葵区の「古橋家住宅門及び塀」、静岡市清水区の「旧石川家清水別邸(三樹(さんじゅ)庵主屋」、伊豆の国市畑毛(はたけ)温泉の「旧新津家(にいつけ)別邸主屋、土蔵、表門」の計5件が国の登録有形文化財に、それぞれ指定・登録されることになりました。

 解説によると、「南禅寺堂と呼ばれる堂に伝来した 26 軀からなる木彫群で、堂の本尊、薬師如来像をはじめ、大半が 10~11 世紀の製作になり、仏・菩薩・護法神など当時の堂宇に安置される主要な尊格が揃う。いずれも一木造で仏像は基本的にカヤ材、神像はクスノキ材を用いる」というもので、「平安時代の地方における造像のさまを如実に伝える遺品として重要である。また十一面観音像の一軀は素朴な作風であるが、カヤ材の一木造で各所に古様を示すことから、奈良時代に遡る製作とみられる」というのが、指定の理由です。

 「古橋家住宅門及び塀」は、今年3月に主屋が登録されており、今回門と堀が追加されたわけです。1928年(昭和3年)頃建設された、和洋折衷住宅で、建築主は不明ですが、1935年(昭和10年)頃、静岡の茶の輸出業を営んでいたクレメント・М・ハキム氏が居住していました。建物は戦後一時期GHQに接収されましたが、1956年(昭和31年)頃、製茶業を営む古橋家の所有となりました。昭和初期の静岡の茶文化の歴史の一部を物語る住宅です。

 「旧石川家清水別邸(三樹庵)主屋」は、施主の石川武美(たけよし)は主婦の友社を創業した実業家で、1940年に建築されました。主屋近くの3本の木にちなんで石川氏が「三樹庵」と命名したということです。「主婦之友」誌上に住宅作品を掲載していた建築家・江口義雄が設計を手がけた、太い柱や梁を使った田舎家風の中央部分と、繊細な数寄屋風の南部分、台所などがある北部分からなる木造平屋の近代和風住宅です。

 「旧新津家別邸主屋、土蔵、表門」は、昭和シェル石油(現出光興産)の前身の1つである新津石油の創業者新津恒吉が施主、設計は清水組の大友弘・矢田茂です。主屋は全体和風基調で、居間棟は各階和室の縁にガラス戸を建て、玄関棟のサンルームは天井にアールデコ調ステンドグラスを飾るなど和洋の意匠を巧みに用いた優美な別荘建築です。土蔵は主屋の西に建つ家財蔵で、両妻に庇付の窓を開き、北妻に家紋が飾られています。表門は敷地西辺に開き、化粧の棟木、桁を丸太とし流板張の軒を深めに出しつつ軽快にみせ、自由かつ繊細な意匠になっています。

 これで静岡県内の国登録有形文化財建造物は、312件になります。

 

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