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ふつうの日記 2021.09.04『話下手の宇宙』

・話下手

 オンラインで人と話さなければならなかった。ちょっとした雑談とかではなくて、ちゃんとした議論としての話をしなければならなかった。雑談も得意ではないけれど、ちゃんとした話をするのはもっと苦手だ。疲れた。
 人前でちゃんとした話をするとき、宇宙に放り出されたような気分になる。窒息するほどではないから宇宙服は一応着ている。着ているけど、宇宙船には乗っていない。無重力のせいで上手く前進することができず、かといって後退することもできず、目印もないだだっ広い宇宙を漂流する。ときどき宇宙ゴミが前を横切っていって、それにつられて移動してしまうともう自分がどこにいるかわからなくなる。そうして、目指していたはずの惑星を見失う。
 話が上手な人の場合は、そもそも宇宙に出ていかないんだと思う。そういう人はプラネタリウムにいる。宇宙を広く見渡して、自分はこの星を経由してあの星を目指すんだな、と指差し確認して、でも本人は椅子にしっかりと腰を落ち着けている。その椅子は漂流したりしない。宇宙ゴミも視界に入らない。宇宙との接し方が堅実で、無理がない。
 私もせめて、無重力空間でしっかり前進できるくらいにはなりたい。以前、NHKで放送されていた(されている?)新シリーズの『かいけつゾロリ』を何気なく見てみたとき、あろうことかゾロリ一行はオナラによって宇宙を移動していた。「ガンダブー」というロボットに乗り込み、サツマイモを食べながらオナラを出し続けることで、ジェット噴射的に前進するのだ。面白すぎる。爆笑してその回だけしっかり見てしまった。私もああなりたい。オナラでいいから前進したい。そしてプラネタリウムを見ている人に、「なんだか変な煙が見えるな……」と思われたい。見たまえ!私はここにいるぞ!ここで確かに、宇宙ゴミに衝突しながらも、オナラで前進し続けているぞ!
 考えてみると、この日記シリーズだってオナラで前進しているようなものかもしれない。プラネタリウムにお越しのみなさん、見えますか。宇宙を漂うこの薄黄色の煙が。


・トルコアイス

 道でトルコアイスを踏んだら、ガムみたいにみょーんって伸びるのかな。それとも、道がなかなか離してくれないのかな。


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