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エンターテック読書記録

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エンターテック(Entertainment×Technology)・エバンジェリストとしての立場から、自分の備忘も兼ねて、役にたった書籍を紹介していきます。  様々な意味で分野や… もっと読む
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記事一覧

フェスがトレンドを象徴する時代の音楽の楽しみ方〜音楽未来会議でも語ります「フェス旅」とこれからの10年

 音楽ファンに超オススメの本が出ました。日本で一番フェスに詳しい、フェスティバルライフ編集長、津田昌太朗くんの新作です。  日本中の音楽フェスを網羅してわかりやすく紹介してくれてます。音楽ファンは、「え、こんなフェスあったんだ?知らなかった。今度行ってみよ」みたいな読み方してもらえるとよいのではないでしょうか?  津田君は海外フェスに最も通った日本人でもあります。前作も最高なので、併せて読んで欲しいです。日本中の音楽フェスを網羅していて資料的な価値も高いので、音楽やイベント

3期目になった習近平体制を理解するための必読書『戦狼中国の対日工作』

 中国社会を日本人が持ちがちな誤解を解き、実証的に伝えている筆者の本は興味深いものが多いです。本書はその中でも際立って価値が高いと思いました。多くの日本人にオススメしたいです。  共産党独裁体制をしっかりと維持しながら、資本主義経済を導入して、経済大国となった中国は、自由主義や民主主義、表現の自由などが大きく制限されたまま、国際的に大きな影響力を持つようになりました。西洋型の民主主義や自由の考え方を前提とする日本人には理解しがたい国になっています。同時に、隣国で歴史的にも影

東京都同情塔から感じる「純文学の力」と電子出版を読んで知りたくなる適切な著者印税

純文学作品でのAI利用という目新しさ  芥川賞作品を受賞直後に読むなんて、何十年ぶりでしょう。父親は文藝春秋を毎月買っていたので、中学生の頃から読んでいました。村上龍『限りなく透明に近いブルー』は衝撃的でした。三田誠広 『僕って何』池田満寿夫 『エーゲ海に捧ぐ』高橋三千綱 『九月の空』などは記憶に残っています。子供の頃から本を読む方でしたが、高校生以降は、小説の世界観に浸るような読み方よりも、人文学系の新書を読んで視野を広げる方に興味が向かい、新しい作家の小説を追いかける

文化・クリエイティブ産業に日本の未来がある!東京五輪で僕たちがやり残したこと

 定期的に書籍出版したり、noteを継続的に書いていると、趣旨やロジックに興味を持っていただいた行政関係からお声掛けいただく機会が増えていきます。経済産業省の委員会に「有識者」枠で呼ばれた時は、気恥ずかしかったですが、もう慣れました。コロナ禍が明けて、改めてエンタメ領域の産業振興に未来志向で取り組む状況になり、ヒアリングという形で各省庁に呼ばれる機会が増えました。大学で講義をやったり、神戸市や東京都のスタートアップ事業者に採択されたりしていることもあり、マクロ視点で考えるよう

『みんなのスタートアップスタジオ』と呼ばれたい〜僕たちがStudioENTREで目指していること+重大発表予告!

 エンターテックを掲げたスタートアップスタジオStudioENTREを設立して3年経ちました。起業率の向上、スタートアップ育成が国家的課題になっている日本の状況を踏まえて、スタートアップスタジオへの関心は高まっていることを肌で感じます。  そんな中、スタートアップスタジオの仕組みを詳しく解説する書籍が出ました。2017年にスタートアップスタジオに関する初の日本語書籍「STARTUP STUDIO 〜連続してイノベーションを生む「ハリウッド型」プロ集団〜」は、スタートアップスタ

名著『冒険の書〜AI時代のアンラーニング』を、強く推奨します!そして僕は決意しました。

 本当に素晴らしい本です。日本の、そして人類の未来について真摯に考え、「教育」が最重要と捉えて、「学ぶ」事の本質、「教える」方法の選択肢について、過去の叡智をたどりながら、考え抜いて、それをわかえりやすく、いわばエデュテインメント的にまとめた書籍です。名著です。  人類の歴史は、技術の進化とともにありました。火を操ること、農耕による定住、青銅器、鉄器など、歴史を紐解けば千年単位で、技術の進化が、経済や社会を変えていることは明らかです。  最近の数十年は、インターネットの発展

技術進歩が「人間とは何か?」を教えてくれる〜DNAから探る『人類の起源』読んで

 知的好奇心がくすぐられる本でした。おすすめしたいです。 文化人類学者になりたかった  「人類の起源」というのは、「地球の始まり」とか「宇宙人の存在」とかと並ぶ、知的好奇心をくすぐるテーマです。  僕は中学3年生のときに、中公新書の『文化人類学入門』を読んで、めちゃめちゃ興味を持って、文化人類学者になりたいと思いました。高校に入って、バンドとかやるようになって、他に楽しいことをたくさん知ったのと、当時の研究者像は、コツコツ積み上げるストイックなイメージの職業で性格的に向い

大阪音大特任教授退任と『音大崩壊』からも感じる危機感のズレ

 それは11月末のことでした。郵便受けに大阪音大から普通郵便が届いていたので、交通費の支払明細かなと思って開封したら、「契約終了のお知らせ」でした。  2022年4月開講した大阪音楽大学 ミュージックビジネス専攻は、僕が大学から依頼を受けて、1からコンセプトを立てて、デジタルとグローバルがテーマになるこれからの音楽業界・エンタメ業界を担う人材を育成するということで始まりました。1期生に46名のやる気溢れる学生が集まり、大学運営側からも「革命です!山口さんは恩人です」を言われて

「終戦」記念日に日本の「デジタル敗戦」について考える。〜『2025年日本経済再生戦略』は激オススメです。

 8月15日は太平洋戦争の終戦記念日として、TV等で戦争に関連する特別番組が放送されます。普段は気にしてない「終戦」という言葉ですが、日本の産業界がデジタル化に背を向けて、高度成長期の成功体験が捨てられずに、高齢の経営者の、保守的で自己保身的な経営判断で「デジタル敗戦」になってしまっている現状を考えると、日本軍首脳部の明らかな判断ミスで大負けした戦争を「終戦」という言葉でふわっと美化している日本と、それを追認しているマスメディアの姿勢が気になりますね。  また、あのくらいの国

ブロックチェーンとWEB3を知る推薦図書〜「音楽業界のカラクリ」サポートページ

P202で紹介した書籍のアマゾンリンク 個別に紹介したコラム オススメ書籍はマガジンにまとめています! 『図解入門業界研究 最新音楽業界の動向とカラクリがよくわかる本』のサポートページTOP

グローバル市場を意識する推薦図書〜「音楽業界のカラクリ」サポートページ

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『テクノロジーが予測する未来』は、必ず訪れる必然的な未来。知識チェックに最適

 SNSが一般的になって、使っている人の鏡になったなと思います。自分の人脈と関心事が目につくようになっています。僕のSNSでは、WEB3.0が最大の関心事のように友人知人たちが語っていますし、情報が入ってきます。これはおそらく僕のポジション、興味関心によるもので一般的では無いのでしょう。  「新しい物好き」や「ビジョナリー」と呼ばれる人たちは、昨年あたりからみなさんそちらに向いていますし、僕自身も強い興味とビジネス的にも関わりを持って注目しています。  本書のサブタイトルにも

悪にも論理はある。重層的に「ウクライナ侵攻」を理解するための貴重な本

 佐藤優で最初に読んだ本は、『国家の罠』だったか、『獄中記』だったか記憶が定かでないのですが、Amazonの購買記録によると2009年頃のようです。外交官として国益のために行った仕事で、検察から「冤罪」を着せられて、否認をして獄中生活を送るという壮烈な生き方が冷静な筆致で迫ってきて強烈でした。検察特捜部のターゲットは鈴木宗男だったので、検察側に歩み寄れば、少なくとも投獄は避けられただろうことを理解した上で戦っています。また、外交官、とくに機密情報に関わった者は、退職しても、政