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観客としてジャッジを呼ぶ【デュエマ】

デュエル・マスターズの大会に参加した際に、空き時間に隣のテーブルで進行している試合をなんとなく眺めていた。
その試合の中でルールミスを発見したが、どちらのプレイヤーもそれに気が付かずに試合が進行しようとしていた。

これはマズイと思い、第三者の観客としてジャッジを呼んだ事例を今回は紹介する。

筆者自身もデュエル・マスターズのジャッジ資格を有しており、競技イベント運営ルールの観点から問題がないように最大限に注意を払ってのジャッジコールであった。
自分と無関係な試合でジャッジコールをしたことがある人はかなり少ないと思われるので、参考としてここに書き残す。



前提

状況

ターンプレイヤー(以下TP)が、《CRYMAXジャオウガ》をすでにバトルゾーンに出している状況。
非ターンプレイヤー(以下非TP)のシールドは0枚である。

TPは《DARK MATERIAL COMPLEX》で、非TPにダイレクトアタックを行った。
《COMPLEX》が持つ攻撃時の能力が誘発し、2枚目の《ジャオウガ》をバトルゾーンに出した。

本来なら《ジャオウガ》が持つ鬼S-MAX進化によって、どちらかの《ジャオウガ》を手札に戻してからゲームを進める必要があった。
だが、どちらのプレイヤーもそれに気が付かなかった。

最終的に非TPが手札から《百鬼の邪王門》の使用宣言を行った。

ゲームが正常な進行から逸脱したと判断し、これをもって観客である筆者がジャッジコールを行った。

ジャッジの裁定

本旨とは直接的には無関係であるため詳細は割愛するが、TP側に不利な裁定となった。
十分に妥当性があり、プレイヤー同士も納得しており、客観的にみても問題なかった。

本旨-観客として何を考えていたか?

今回の記事の本旨である。
なぜジャッジを呼んだのか
なぜ今回のタイミングで呼んだのか

この2点について述べていく。

なぜジャッジを呼んだのか

「観客としてジャッジを呼ぶ」という行動の根拠は、競技イベント運営ルールにある。

デュエル・マスターズ競技イベント運営ルール(2023/10/11更新)より引用
同上

筆者は本大会にプレイヤーとして参加していたが、この試合に関しては無関係な立場であり、つまり観客として扱われるべき存在だ。

そして、1.10に規定されるように、観客にも必要とあればジャッジを呼ぶことが期待されている。

これに則り、ゲームが通常の進行を逸脱したと思った時点で、ジャッジを呼んだ。

注意点として、観客はマッチに直接干渉することが認められていない事に気をつけたい。
例えば、ジャッジを呼ばずに問題点を直接指摘するような行為がそうだ。
今回の状況で言えば、直接「ジャオウガ忘れていますよ」などと口を挟むような事は決してあってはならない。
観客はジャッジを呼びながら、試合の進行をストップさせるまでに行動を留めるべきである。

また、今回は結果的に単なる誘発忘れであったが、より重大な不正行為を発見してしまう場合があるかもしれない。
そういった場合に隠蔽の機会を与えないように、やはりプレイヤーの手を止めさせて迅速にジャッジを呼ぶ必要がある。

状況の説明は、ジャッジが到着してから、まずジャッジに伝えよう。

なぜ今回のタイミングで呼んだのか

今回の事例では、非TPが《邪王門》の宣言を行った時点で、観客である筆者がジャッジを呼んだ。

この《邪王門》が非TPの手札から公開されてしまったことにより、TPにとってより不利な裁定が下されたという事実は、否定できないだろう。
本来《ジャオウガ》の処理に関する意思決定を行うべきタイミングでは知り得なかった情報=《邪王門》の存在を、TP側が得てしまったからだ。

TPの立場からすれば、「もう一瞬早く呼んでくれれば、こんなことにはならなかった」と思うのも無理からぬ話である。

ただ、それでも今回の状況では、《邪王門》の宣言をもって誘発忘れとみなし、ジャッジを呼ばざるを得なかった。

その理由も、競技イベント運営ルールに則った判断である。

同上

競技イベント運営ルールに規定される「誘発忘れ」の定義は、本来のタイミングを過ぎて何らかの処理を行った時点とされている。
逆に言えば、この段階に至るまでは、誘発型能力を本当に忘れているかは判断ができないのだ。
たとえ本来行うべき処理を行っていなかったとしても、本当に忘れているのか、どちらの《ジャオウガ》を戻そうか悩んでいるだけなのかは、他人から見るだけでは見分けがつかない。

よって、TPが処理を完了し、非TPが《邪王門》を宣言した段階になってようやく「誘発忘れ」が確定することになる。
ジャッジを呼ぶ側としても、そこまで待たざるを得なかった。

この判断は実際の状況によって大きく左右される。
例えば、TPの処理を待たずに非TPが勢いあまって《邪王門》を叩きつけている可能性も十分に考えられる。
これは非TPの単なる勇み足に過ぎないので、誘発忘れとはならないだろう。

話を戻して、今回の場合。
克明な言語化は難しいが、やり取りや雰囲気からTPが誘発を忘れていると判断されうる状況だったと考え、ジャッジを呼んでいる。
実際にその後のジャッジによる聞き取りでも、その旨に間違いはなかった。

終わりに

今回は筆者が実際に体験した事例をもとに「観客としてジャッジを呼ぶ」ことについて述べてきた。
もし今後、観客としてジャッジを呼ぶ必要性に駆られたときは、この記事の内容を思い出してほしい。

また、観客や誘発忘れといった「普段なんとなく使っている用語」にも、競技イベント運営ルールによって明確な定義があるということも知ってもらえたなら喜ばしい。
これ以外にも色々な気づきがあると思うので、デュエル・マスターズをある程度競技的に遊んでいるのなら、競技イベント運営ルールに一度目を通しても損はしないだろう。

最後になるが、今回紹介した事例について断っておきたいことがある。
TP側の状況を考えると、結果として《ジャオウガ》をわざわざ2枚バトルゾーンに残す必要がなく、故意性のない「うっかりミス」の誘発忘れであったことを明記しておく。
もちろん、この記事にもTP個人を糾弾するような意図は一切ない。

うっかりミスであっても、正常なゲームから逸脱してしまった事実と、それが及ぼす影響の可能性を考慮して裁定を下したジャッジは、ジャッジとして正しい判断を下したと思う。
そして、自分のミスを認めて裁定を受け入れたTPの態度も、プレイヤーとして正しいあり方であった。

コンピューターが自動で判定を行ってくれないテーブルトップのカードゲームでは、参加者一人一人のこういった「正しくあろうとする姿勢」こそが重要なのだ、ということを思い出させてくれる機会でもあったと強く感じた。

筆:ヤマダ@アドバンテージのデュエマ担当