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余寒の京都旅「平野神社」四.右近の橘、左近の桜


NHK大河ドラマ"光る君へ"第13回【進むべき道】観ました。

JOJOのスタンド攻撃"キング・クリムゾン"を食らったかのような時の進み方でしたね。四年の月日が気づかぬうちに吹き飛んでいて理解が追いつかない視聴者は少なくなかったと思われます。戦国時代ならまだしも戦争のない平安時代の四年間ってまぁ変化ないですからね。フケメイクするわけにもいかず台詞と新キャラでなんとかするしかなくてどうしようもなかったのでしょう。

まつりごとにおいて大事なのは民よりも家である

天下を取って早四年。気が抜けて呆けてしまった藤原兼家でしたが、息子である道長に対し「政とはなんたるか」を語っている仕草はとても凛々しく見えました。最近のことは覚えられないけれど信念や自分の息子たちに関しては以前のまま。典型的な老いの症状なのでしょうね。同じ道を進んでいたまひろと道長でしたが、四年前の庚申待こうしんまちを境に二人は分かれることになりました。藤原道長は家を守る"覇の道"を、まひろは民を想う"徳の道"を選びました。

そういえば先日『踊る大捜査線』の新作発表がありましたが、こちらも「組織VS現場」で今回の大河ドラマと大変似ている構図です。源氏物語が庶民のための作品であるかどうかはさておいて、真反対の方向へ突き進むことになった二人が幾多の苦難を乗り越えどのように成長していくのか。せめて二人のゴールは同じであってほしい。いい感じでハッピーエンドになることを願うばかりです。ではドラマの話は終わりにして旅の続きに参りますね。


ん?なにこれ?


え?ちょっとまって?


反対側に桜の木がある・・・ってことはかの有名な『右近の橘、左近の桜』!?


右近橘と左近桜を拝見したのは二年ほど前の平安神宮参拝以来となります。なぜ橘と桜なのか。その由来をまったく知らなかったので調べてみました。

秦氏の長であり聖徳太子に強く影響を与えたと言われている秦河勝はたのかわかつ宅にあったものを内裏に移植し代々植え替えられてきた説。古くから"トキジクノカクノコノミ"といわれ、その葉が寒暖の別なく常に生い茂ることから長寿瑞祥の樹として珍重されてきた説。これらにより右近橘が定着したと言われています。まぁ日本神話を勉強したものからすると「命が限りあるものになったのはイワナガヒメを見捨てたからやないかい。」と言いたくなりますが、話がややこしくなりますので横に置きたいと思います。

ところで皆様は"トキジクノカクノコノミ"を御存知でしょうか?

こちらも日本神話に出てくる伝説の果実ですが、恐怖系の小説やゲームによく出てくるアイテムなのでサブカル好きの方はご存知かと思います。私は"かまいたちの夜2"で初めて知りました。"春ゆきてレトロチカ"というミステリーゲームでも人生を狂わせる不老不死の実として登場しています。姿形はイチジクやザクロをイメージしていましたが橘もその候補の一つだったんですね。そういえば同級生の橘さん元気にしてるかなぁ。

ちなみにですが当初は桜ではなく左近の"梅"でした。仁明天皇のときに梅の代わりに桜を植えて左近の桜になったそうです。


こちらは境内社の四社併祀社です。南面に鎮座し左から順に、春日社、住吉社、蛭子社、鈿女社となっております。右の二柱は耳馴染みのない神社かと思いますので少しだけ解説致しますね。

一つ目は"えびす社"と読みます。ビールが有名なのでおそらく日本で一番有名な神様かもしれません。エビス神はいろんな表記がありますが、蛭子という漢字はほとんど見かけません。蛭子神社をそのまま「ひるこ」と呼ぶお社もあります。蛭子神とエビス神は元々別の神様でしたが、神仏習合で同一視され今に至ります。

二つ目は"うずめ社"になります。太陽神である天照大御神あまてらすおおみかみがお隠れになり世界が暗闇に包まれた"岩戸隠れ"の神話を一度は聞いたことがあるかと思います。踊り上手な神様が岩戸の前で舞を始めたところ、天照大御神は外の様子が気になり岩戸を少し開け、そうして真っ暗だった世界が明るくなり平和になりました。そのとき踊った神様がアメノウズメになります。京都・車折神社の境内社「芸能神社」でも芸能の神様として祀られています。


こちらは八幡社になります。

石清水八幡宮は私の初めての神社でずっと「神社=石清水八幡宮」という認識だったのでその良さを理解するのにかなりの長い月日を要しました。東京で生まれ育った人が東京の魅力になかなか気づかないのと似ているかもしれません。先日男山散策をしたので近いうちに石清水八幡宮をご紹介出来ればと思っています。


平野神社は2018年に発生した台風21号により、拝殿の倒壊を始め本殿の檜皮屋根の損傷、数十本の桜の倒木など甚大な被害を受けました。

関空連絡橋タンカー衝突事故の映像が衝撃的すぎて京都などの被害があまり報じられませんでしたが、京都府八幡市にある草庵"松花堂"は現在も修復中となっています。


災害報道の難しさってありますよね。正月に発生した能登での大災害も、多くの芸能や政治の報道に埋もれてしまい関心が失われつつある状況になっています。


夜桜の名所という華やかな神域の平野神社ですが、自然災害の被害者であった一面を知り文化を守る難しさを改めて感じました。

これにて四回に分けてお届けした平野神社の紹介は以上になります。ご精読ありがとうございました。



今回の参拝スポット


追記

note公式マガジンに記事が掲載されました。ありがとうございます。


『テレビドラマ感想文』応募作品の中で、スキの週間一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝!!

2024/04/08


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