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余寒の京都旅「京都府立堂本印象美術館」


うーん、金貸しの美術館かぁ

いきなり品の悪い言葉を使って申し訳ございません。皆様は京都嵯峨嵐山にある福田美術館を御存知でしょうか。人混みの多い場所を避け続けてきた私はこれまで嵐山の情報をチェックしていませんでした。伊藤若冲の絵巻が発見された、とMKタクシーのポストに書かれていたのを見て福田美術館を知ることとなりました。

実は私、京都で一番訪問回数の多い場所が嵐山なんです。高校の遠足で行ったり自転車で自宅から数十キロの道のりを走ったり五回以上訪れています。そんな私ですが福田美術館は一度も聞いたことがありません。なんで初耳なんだろうと調べてみたら、なるほどそりゃ知らないはずですね。2019年秋に開館したばかりの新しい美術館でした。2020年春にコロナ禍へ突入し昨年五月に明けたもののオーバーツーリズムの話題しか入ってこなくなって。唯でさえ人気の観光スポットなのにマスコミが嵐山の魅力を紹介したら完全に収集がつかなくなってしまう。人気すぎるゆえにこれまで私の耳に届かなかったのでしょう。福田美術館の情報を見て驚いたのは開館年だけではありません。設立者の名前を見てビックリしました。設立者はなんとアイフルの創業者だったんです。てかアイフルって京都の会社だったんですね。CMの女将さんって京都弁だったのかぁ。

私の第一印象は一番始めに書いた通りで消費者金融業者にあまりいい印象は持っていません。しかし綺麗事だけでは社会は成り立たないことを重々承知しています。京都の歴史がそうでした。豊臣秀吉・秀頼親子や徳川幕府が寺社仏閣を再建したように、文化の保持には莫大な富を必要とします。かつて京都の貴重な文化財が海外に流出したことがありました。先日紹介した三嶋神社は負債で社地を失いました。福田美術館には俵屋宗達や円山応挙、与謝野蕪村に竹内栖鳳と京都ゆかりの美術品が多数所蔵されています。ニュースになった伊藤若冲の新発見絵巻もその一つになります。消費者金融で儲けたお金ではありますが、優れた美術品が後世に伝わるのであればその社会貢献度は計り知れません。

そこに愛はあるんか

福田美術館は100年続く美術館をコンセプトに、美術に詳しくない方が見ても感動を覚えるような作品を集めてきたそうです。中世の金持ちが芸術家や音楽家を庇護したように、現代においても金持ちが芸術を保護するのは義務であるべきです。メセナ事業がその一つになりますでしょうか。私は物を大切に保管することが苦手なタイプです。そんな私でもできることがあります。入館料を支払って鑑賞することです。もし偉そうな物言いに見えていたとしたら本当にごめんなさいね。こんな面倒くさいことばかり言ってるからいつもぼっちなんですわ。先日某ネット放送で西村博之氏がメトロポリタン美術館や大英博物館を揶揄していたのですが、設立者とか背景とかそんな細かいことなんか気にせず素直に芸術家たちの作品を楽しむ。それがやっぱ一番ですよね。嵯峨嵐山文華館との二館共通券だとお得ということなので今年中、遅くとも夏までには訪れたいと思っています。そこに愛はあるんかしっかりこの目で確認しときますね。

では旅の続きに参ります。

前回は東福寺駅から円町駅までJRを使って移動しました。西ノ京円町停留所でバスに乗り向かった先は立命館大学衣笠キャンパスです。


え?ちょっとまって?

たしかに立命館大学前停留所が私の目的地だけど、門をくぐり構内の中へとどんどんバスは進んでいきます。


大学生じゃないのに大学構内に入ってしまった。

こういうところが旅下手なんですよね。慎重を期したつもりだったんだけどなぁ。後日調べてみたらどうやら『快速』がこの場所に停まるように設定されていました。『臨時』だからと最初思ってたけど違ったみたい。


なぜ円町駅を経由したのか?

京都市の交通事情に詳しい人は疑問に感じるかもしれません。その理由について詳しくお話したいと思います。


1.バスに乗る時間を極力減らしたかった
2.地元の人の迷惑にならないようにしたかった
3.交通渋滞を避けたかった

一.京都駅もしくは三条駅を起点にしてバスに乗る人が多いと思います。観光客にとってそれが一番わかりやすい方法であり、始発から終着なので迷うことは絶対にありません。但しこの方法だと乗車時間は40分かかります。運が悪いと終始揺られながら立ち続ける、という拷問に近い地獄を味わうことになるでしょう。ちなみに円町駅経由ルートは二回乗換と前述の倍の運賃になりますが、バスの乗車時間はたったの9分で済みます。席が埋まっていてもこれくらいなら全然楽勝です。

二.京都のオーバーツーリズムに私も心を痛めています。我が地元も学生街でバス乗車に大変苦労しました。今はダイヤ改正で混雑はだいぶ解消されてはいますがそれでも大変な時があります。そんなわけで京都駅発着のバスに極力乗りたくないんですよね。地元の人達の迷惑にならないようなるべく鉄道を使うようにしています。

三.いつも地下鉄に乗っているので京都市中心部の交通状況については正直知りませんが、四条通や河原町通っていつも渋滞しているイメージがあります。せっかく旅を楽しんでいるのに渋滞に巻き込まれた日にゃそりゃもう激凹みですよ。その点、今回のルートは定刻通りに到着することがほぼ確約されているので気が楽でした。


円町駅ルートを選んだ理由はこの三つになります。

でもこれって一人旅だからこそできることなんですよね。パートナーやグループとの旅行だったら絶対に不可能な選択です。「なんでそんなめんどいことするの?」「京都駅からバス乗ったらええやん」って言われるのがオチ。クセの強いルートを推してくる人間が仲間にいたらめっちゃ迷惑でしょうね。私だってイヤですわ。全部自己責任だけれど自由に観光を楽しみたい。そんな気持ちの時にはボッチ旅が至高ですね。


関係者じゃないのに大学構内入ってごめんなさいと平謝りしつつ向かった先はこちらの建物。


京都府立堂本印象美術館です。


堂本印象を知ったキッカケは第23回京都検定二級の公開テーマ問題。京都一周トレイル東山コースを勉強していた時に大岩神社鳥居を見て一目惚れ。詳しく調べてみたら堂本印象が作ったものだということがわかり、同時に美術館があることを知って参ることになりました。


堂本印象美術館はは印象自身によって設立され、1966年に開館しました。1991年に建物と作品が京都府へ寄贈され、1992年に京都府立堂本印象美術館として開館し現在い至ります。堂本印象美術館は外観から内装まですべてが印象自らのデザインによるものです。

公式サイト紹介文を要約

まずは外観のご紹介から。

建物そのものが堂本印象の作品になっています。スゴいですよね。画家なのに立体造形にも優れているってバケモノレベルですよ。いうなれば近代の本阿弥光悦です。光悦は寛永の三筆の一人に数えられる人物でありながら国宝の茶器や硯箱も製作した天才でした。二次元と三次元の両方に卓越したデザインセンスを持つ人は世界でも稀です。


次に庭園へと足を運びました。とある方のnote記事を見てぜひ観てみたいと思った場所の一つになります。


庭園ベンチです。

1967年に描かれた下絵「憩い(椅子)」を元に製作されました。


庭園椅子です。なんと全てデザインが異なっていて18種類もあるそうですよ。


庭園からみた美術館外壁です。

1966年開館の頃からまったく変わっていません。60年近く経った今も古さを感じさせない、今から半世紀後でも通用しそうなデザインですよね。昭和の人たちはきっと珍妙な建物に見えたことでしょう。水路閣のように建設反対運動があったのかもしれませんね。


堂本印象は美術館を建てるにあたり、1952年にヨーロッパで見学した宮殿や邸宅を用いた美術館を参考に独自の美の可能性を追求したそうです。(公式サイトより)

柱のデザインにもこだわりが見られます。


京都府に寄贈された時に作られた石碑でしょうか。


この美術館は、美術の振興と発展に役立ててほしいとの御趣旨で、1991年社団法人堂本美術館から御寄贈いただいたものです。
堂本印象画伯の偉業を讃え、京都文化の精華に触れる施設として愛されることを願い、ここに京都府立堂本印象美術館を設置します。

1992年4月
京都府知事 荒巻禎一

ここにも荒巻府知事の名前が記念碑に刻まれていました。三回の京都旅で今回三度目です。きっと後世に名を残したいという思いが強い方なのでしょうね。


前衛的なデザインは岡本太郎を彷彿とさせます。彼もまた画家でありながら、大阪のシンボルである太陽の塔を作った天才芸術家でした。


こちらの作品は公式サイトの解説がありませんでした。椅子もしくは山に見立てた石組と思われます。


こちらは玄関ポーチ柱です。

1965年制作の下絵では「爽快(堂本美術館柱)」と題されていました。100円入れたら返ってくる無料ロッカーに鞄を入れていよいよ入場します。余談ですが、この手のロッカーって高い確率で硬貨を回収し忘れている人がいるんですよね。見かけたときはネコババせず管理者に渡すようにしています。


堂本印象のこだわりは扉にも表れていました。

「え?そんなペースで一つ一つ外装や内装を紹介して大丈夫なの?」と不安になる方がもしかしたらいらっしゃるかもしれません。ご安心を。展示室内での写真とビデオ撮影は禁止になっているため、受付ロビー到着で美術館の紹介は終了となります。


美術館そのものが芸術作品になっていて、一つ一つこだわりのあるデザインが至る所に散りばめられています。堂本印象は自身の全てをこの美術館に注ぎ込んだのでしょうね。

桁外れのバイタリティですわ。


この館は神佛や善意に充ちた多くの人の贈り物である

1966 印象

神仏と人々への感謝の言葉が書かれていました。

見えないモノについて言及するとすぐにカルトだと拒否反応を示す人がいます。気持ちわかりますよ。金儲けに利用する人が一定数いますからね。でも誰かに感謝することって人生の上でとても大事なことだと思うんです。理想を述べるのは簡単です。堂本印象は美術館を建設して感謝を形にしました。理想の実現化は決して簡単なことではありません。


こちらの三枚絵は襖絵に着想を得ているのでしょうか。つい引き込まれてしまいます。


実は今回の旅で一番行きたかったところがここ、京都府立堂本印象美術館でした。

通常は階段を上った先の受付ロビーで観覧料510円を支払うのですが、私は京都検定の合格者証を提示したので無料になりました。京都検定合格者特典の期間限定優待サービスの一つになります。京都府立堂本印象美術館では2024年2月から3月末の期間限定で優待サービスを受けられるので旅を企画しました。

『優待サービスをジャンジャン使うぞ』が今回の裏テーマでございます。まぁ記事をご覧の皆様にとっては正直どうでもいいことですよね。私の自己満足ではありますがそこらへんは温かい目で見て頂けると大変助かります。


タイトル『蒐核しゅうかく』のステンドグラスになります。


表裏でデザインが異なるのですね。撮影当時はまったく気づきませんでした。


展示作品の感想については後日投稿予定の観光記に書いていきます。

物販コーナーで二枚のポストカードを購入しました。100均の壁掛けフォトフレームに入れて飾ってみたところ自宅が小さな美術館に大変身。ポストカード収集も趣味の一つに加えようかな。


遠近感で小さく見えているかもしれませんがあの山が第59代宇多天皇が真夏に雪景色が見たいと白絹をかけた、きぬかけ山とも呼ばれている衣笠山になります。標高は201m。

立命館大学も堂本印象美術館も山の麓で作られたんですね。


感動の余韻に浸りながら堂本印象美術館をあとにしました。


堂本印象美術館3階に展望サロンがあり、そこで旧堂本印象邸が紹介されていたので少し足を伸ばして門前だけ拝見することにしました。

申請して予約すれば料金を支払って利用できるみたいですね。所有者は学校法人立命館ということで学生たちも授業や課外活動で使っているんだとか。羨ましいなぁ。


京都府立堂本印象美術館の紹介は以上となります。京都検定二級に合格したら自分へのご褒美に合格者特典を目一杯使うぞ。そう思いながら一生懸命勉強してきたので目標が達成できてすごく嬉しかったです。

時刻は十時半。次回も優待サービスが利用できる施設へ向かいます。



今回の観光スポット

©Google Map

京都府立堂本印象美術館
所在地:京都市北区平野上柳町26-3


追記

note公式マガジンに記事が掲載されました。ありがとうございます。


『旅のフォトアルバム』応募作品の中で、スキの週間一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝!!

2024/03/18


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