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♯2フットボールクラブのファイナンス:概論編

はじめまして!

「山田塾」塾生の粕谷聡太と申します!普段はスポーツとは関係のない会社で営業をしているのですが、”スポーツファイナンス”という言葉の魅力に惹かれ入塾し勉強しています。

山田塾での勉強のためにiPadを購入!予備知識は簿記三級程度ですが、再生しては停止をし、講師の方々だけでなく時にはGoogle先生にもお力を借りて勉強する毎日です!

さて、♯2のタイトルは「フットボールクラブのファイナンス:概論編
(前回のnoteはこちら↓)

♯2ではクラブが目指すポジションによっての資金量や資金分配比重の違い、基本的なおカネの流れについて具体例を交えながら説明した上で、実際に予算を策定していくイメージについて学んでいく。という流れで2時間の講義は進みました。

1.クラブの目指すべきポジションと費用の関係

前半パートの講師はデロイトトーマツグループの里崎さん。クラブ経営における、おカネの流れやおカネのかけ方について学んでいきます。

まず初めにクラブがどのポジションを目指すのか。ここから考える必要があります。優勝を狙うのか、それとも残留が目標なのか…競技面だけをみても人件費、強化費に掛ける経費の大きさが変化していくのですが、運営面をみるとさらにポジションと費用の関係が明確になってきます。

事業規模重視型(売上を重視)
事業規模拡大を目指す際の成果は興行収入になります。売上を拡大するために中長期的な目線で将来のキャッシュ獲得に向けた投資が行われる傾向にあるのがこのポジションを目指すクラブです。設備やフロントスタッフなどおカネを作る部分に対して投資が行われるのも特徴です。

事業利益重視型(利益を重視)
事業利益拡大を目指す際の成果は単年度の利益です。利益確保のためにムリ・ムダをなくす効率化への投資が推進されやすく、短期的な目線での投資が行われる傾向があります。

この他にも賞金・分配金を成果とする競技力強化重視型、移籍金を成果とする育成重視型、寄附金(スポンサー料含む)を成果とする社会貢献重視型と5つの型を説明いただいたのですが、面白いのがこれらは経営情報開示資料から読み取れることであり、私たちサポーターがもつ各クラブのイメージ(選手強化が手厚い、ユース選手が活躍するなど)とほぼ同じだということです。

当たり前といえば当たり前かもしれませんが、運営面のファイナンスが普段目にするピッチ上(競技面)にも影響を与えていることを実感できました。また自分が応援するクラブにとっての成果はどれなのか考えるだけでも、これまで以上にフットボールクラブが身近に感じられる気がします。これだけでもクラブ経営情報開示資料を見るときの面白さが増えますね。

前半の最後に里崎さんからはクラブの安定性を見る指標である自己資本比率について解説いただきます。20%~49%が一般的である自己資本比率ですが、2019年シーズンはJ1・J2・J3ともに平均20%を上回っていました。しかし2020年シーズンはJ1とJ3で6%台と大きく下がっています。こういった観点からもコロナ禍でいかにクラブが厳しい戦いをしているかを見ることができます。

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苦しい時こそクラブの方向性が明確になるタイミング。債務超過クラブのリカバリーに注目。」という里崎さんの言葉が印象的です。

2.予算策定

後半パートはシント=トロイデンの飯塚さん。前半の内容を踏まえたうえで「クラブビジネス上のどこに優先的にお金が使われるべきか」をどうやって決めていくか解説いただきました。

予算策定における理想は、ポジションや自己資本比率を基準に行っていくことであり、それらの達成に向けた目標として事業計画やルート設計をしていくことです。しかし過去や前年度実績をもとに策定してしまっているのも現実です。

将来描くポジションや、ファイナンスを追い求めながら短・中・長期的な事業計画やクラブのVisionを目標に掲げるのはもちろん大事ですが、現状のリソースやアセットを細かく分析し実現可能性を意識することも大切です。また過去や現在の実績も考慮する必要があります。予算策定は理想・目標・現実の3つを常に意識して策定しなければならないのです。

フットボールクラブ経営における独特のポイント

ここからはフットボールクラブ経営だからこそといった部分にフューチャーしていきます。今回飯塚さんが取り上げたのは大まかにこの5つ

①キャッシュイン、キャッシュアウトのタイミングが偏っている
②移籍金や賞金を予算に扱うのか?成績に応じた複数予算を策定するのか
③部門損益管理がなじまない
④マーケティングに予算が割かれない
⑤社外からのプレッシャーがかなりある

このセクションはとても興味深いものばかりでした!納得と驚きの連続です。特に①②。

フットボールクラブのキャッシュインが偏るのはスポンサー料と移籍金が入るタイミングが決まっているからです。特にスポンサー料と移籍金が入るシーズン初めに多くのおカネが入ります。この最初に入ったキャッシュをいかに残していくのかが重要になってきます。

しかし、フットボールには勝ち負けがあります。降格が見えれば強化費へさらに投資する必要性が出てきたり、いい成績を残せば賞金という新たなキャッシュが入ってき、税金への対策問題が出てきたり…勝敗という不確定要素があるから生まれる予算の難しさを感じることができます。
ここのセクションはぜひ動画で視聴していただきたい!

フットボールクラブにおける予算策定は一企業と変わらない部分もありつつ、独特なハードルもあるとても難解なものです。この独特な部分を理解した上で予算設計をする必要がある。と飯塚さんはお話しします。そしてこのハードルを越えるためには”意思”を予算に入れなければならないと。

最後に欧州で急成長している2クラブを例に、やはりフットボールクラブの価値の出発点はチーム強化であると語ります。例に出された2クラブも、ピッチ上で明確なVisionが示され、チームが強くなることで賞金や移籍金が入る。そして付随した事業が成長しています。

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最大の商品であるチームが強いからこそ、観客が増える、移籍金が入る、スポンサーが付く、という連鎖が生まれてくるのです。

3.最後に。

全体を通して私が感じたのはやはりフットボールクラブが重要なのはピッチ上、スタジアムの空間であるということです。強い、弱いを含むチームの魅力が新しい価値を生み出したり、逆にコストを増やしたり、常にファイナンスの部分に顔を出してきます。クライフの言葉に「フットボールは極めて単純なゲームだ。相手よりも1点多く決めれば勝つ」とありますが、勝つか負けるかという単純さがファイナンスの難しさを生んでいるように感じる2時間でした。マリオで言う1-1面(福田先生談)にあたる内容からすでに面白い、これからのステージに期待が膨らむ講義でした!

次回、♯3のタイトルは「フットボールクラブのファイナンス:資本政策編」です!また「クラブ内非営利法人による育成普及活動とSROI-松本山雅のケース₋」というスピンオフ企画も発表されました!
(今後のテーマはこちら↓)

来月から有料(月額980円)となる山田塾ですが、スポーツ好きでより深くクラブを知っていきたい!と思っている方にはたまらない内容ばかりだと思います。ぜひFacebookページを覗いてみてください!

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ご一読いただきありがとうございました。

(執筆:粕谷聡太)

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