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『クイズバーなんか行かなきゃよかった』をクイズバー愛好家が読んでみた

『クイズバーなんか行かなきゃよかった』というはてブが、クイズ界隈で少し話題となっている。

クイズバーなるバーに、クイズ初心者が立ち寄り、そこで嫌な体験をしたというのだ。

この記事について、1人のクイズバー愛好家の立場から考えていく。

想定読者層というのはないが、これからクイズバーなるものに行ってみようかなと思っている人、あるいは上記はてブを読んでクイズバーに行くのを断念しようとしている人に読んでもらいたい。

私のクイズ歴

まず、私自身のクイズとのかかわりを簡単に書く。

ざっくりいって、クイズガチ勢でもなく、愛好家といったところだ。

大学ではクイズ研究会に入っていたが、ガチ勢が楽しむ『紺碧』というサークル内サークルではなく、ライト層向けのサークル内サークルに所属していた(その中でもクイズ成績は芳しくなかった)。

サークルのよしみで初心者向け大学生クイズ大会に出たことはあるが、そこでも1回戦か2回戦敗退だった。

今ではスマホのクイズゲームアプリ『みんなで早押しクイズ』というアプリをたまに楽しむくらいで、そこでも勝率は高くない。

クイズは『ちょっとかじってる』程度と認識してもらえたらありがたい。


元ネタとなったであろうクイズバーについて

上記はてブで言及されている『クイズバー』を私は知っている。

たまたま池袋にある『ゆる学徒カフェ』というカフェで飲んでいた時、隣にいた人がそのバーのスタッフで、名刺をいただいた。

クイズバー・スアール』。名刺には、派手な○×マークとともに、そう書かれてあった。

池袋に本店があるが、秋葉原・名古屋・大阪にも支店がある。名刺をもらって1ヶ月ほど経ったとき、ふと思い出し、家から近い大阪店に行ってみた。以来大阪店に4回ほど行っている。

今回標的とされた『クイズバー』は『スアール』で間違いない。ニッチなコンセプトバーであり、スアール以外のクイズバーは、検索しても出てこない。このはてブ投稿者が本店か支店に行ったかはわからないが、この4つのうちのどこかを訪れたことはほぼ確実だと思う。

以下、スアール経験者として、このはてブ投稿者、ならびにコメントについて思うことを書き連ねる。

ただし、私が行ったことがあるのは『スアール大阪店』のみであり、池袋本店を含むほかの店には行ったことがないことにご留意願いたい。

投稿に思うこと

『強制参加』という言葉の強さ

投稿者は、「クイズバーに行って、見学しようとおもっていたら強制参加だった」と書いている。これについて反論する。

どうも、何でも無いようなことが投稿者の脳内で増幅して『強制参加』という強い言葉になってしまったのではないかと思う。

クイズバーという名の特殊性からわかるように、スアールはコンセプトバーだ。であれば、そのコンセプトを楽しみたい人が想定客層だろう。

例えるなら、釣り堀に行って釣り竿を渡されるようなものだ。中には釣り人を見たいだけの人もいるだろうが、釣り堀にいって竿を持たされて騒ぐのはお門違いというものだと思う。

もちろん店に余裕があれば見学もありだろう。実際、学生クイズ大会などでは(大会によってはだが)見学OKのものもあった。

しかし、スアールはそういう類ではない。池袋本店でさえ20名が定員。曜日や時間帯にもよるが、結構席が埋まる。このはてブは土曜日に投稿されたが、仮に投稿者が土曜あるいは金曜夜に参加したとすれば、混雑が見込まれる日に参加したというわけだ。見学するだけの客よりも、たとえ初心者であっても早押しボタンを押したいという客を優先した方が、バー全体が盛り上がるだろう。

そもそも、初めて来店した客には、最初に店員がバーのコンセプトやルールを詳しく説明する。早押しボタンの使い方に慣れていない人も来るため、そういった人がボタンをうっかり壊してしまうのを防ぐ意味もあるのだろう。珍しいコンセプトバーということもあり、大阪店以外でも同じように丁寧な説明がなされていると推測される。

投稿者は、店員の説明を受けている時に見学の可否を尋ねることができた。それで見学不可と知って、そこでサヨナラすればすんだ話だ。これはこれで一つ勇気がいるかもしれないが、少なくとも一つの選択肢ではあった。この選択をしなかったのは、投稿者自身の判断だ。

すなわち、スアールは、入館したら絶対早押しボタンを押さねばならない『強制参加』などではなく、「早押しクイズに参加する」か「帰る」かを選べる『任意参加』なのだ。

『初心者は勝てない』の誤解

また、投稿者は『そもそも初心者が経験者と同じ卓に混ぜられても、凡人の私には勝てるわけないのである。全然答えられない可哀想な人になるのが、とても惨めだった。』と書いてあるが、これにはちょっとミスリードがあると推測する。

というのも、スアールではランク制という制度があるからだ。

これは公式HPの『よくある質問』に書かれている。

Q.クイズ初心者ですが、行って楽しめますか?
A.当店ではランク制を導入しております。

クイズバースアール よくある質問

サイトが未完成なのか、このランク制が何かは書かれていない。かわりに、ここで簡単に説明する。

初入店の客は店員から色々ルールを説明されると上述したが、この際、過去のクイズ歴も尋ねられる。それで、クイズ研究会出身だったり、伊沢択司だったり、『みんなで早押しクイズ』でSランクだったりすると上級、早押しボタンを触ったことがなければ初級といった感じに振り分けられる(店員が強制的に決めるのではなく、初心者であっても「いや、私は物知りだから上級者で構わない」と主張すれば上級者扱いされる。知らんけど)。

で、このランク制が肝となる。簡単にいえば、初心者も上級者も楽しめるしかけがここにある。

例えば、初心者は3○1休(3回正解で勝ち。誤答は1問休み)、上級者は7○3×(7問正解で勝ち。誤答は3回で失格)というルールにする。あるいは、上級者のボタンだけ、押した2秒後にボタンが点く設定にする(詳しくは下動画を参照)。

こういったハンデをものともしない上級者がいるのは確かだが、それでもレベル差の緩和はできる。

あるいは、クイズ経験があまり有利とならないクイズが出題されることもある。

「日本人が読めないフォント」で出題するクイズなどだ。

(「クイズ歴は関係ない」という主張の引用でQuizKnock動画をだすのもどうかと思ってるが)

あるいは、ある画像や地図の一部が隠されており、それが何なのかを当てるクイズもあった。

こういうのは、クイズ研究会出身者が得意かというというと、そういうわけではない。実際、僕は後者、画像の一部分クイズは大の苦手で、クイズ初心者のお客さんに全然勝てなかった。

スアールでは、こういった、初心者の方でも十分楽しんで貰えるタイプのクイズないしクイズシステムがある。初心者がクイズ王に勝てる機会も多々ある。これから初めてスアールに行こうとする人は、安心して訪れていただきたい。


スアール店員が平謝りをした件について

ここまで書いてきたことは、投稿者にとって些末なことかもしれない。

というのも、投稿によれば、こういった体験は「難しかったけどいい体験にになった」と思い直す可能性が示唆されいるからだ。

では、なぜこのような投稿をしたのか。

『楽しませることが出来なくてすみません』は本当に言われた。謝らないでほしかった。

クイズバーなんか行かなきゃよかった

店員が謝罪した。この行為が、この投稿をした決め手となったようだ。

これは、スアール側の落ち度としか書きようがない。実際に楽しんだかどうかは本人しかわからない。それを判断して「あ、この人楽しんでいないな」と思い謝罪するのは、かなり踏み込んだ行為と言える。

では、なぜ店員はここまで踏み込んだ行為をしたのか。

少なくとも客観的にみて、明らかに楽しそうにしていなかったのだろうと予測する。

見学不可とはいえ、来たからには楽しんでほしいというのが店側の思いだろう。

あくまでも経験上だが、明らかなクイズ初心者がいる場では、上記のような接待プレイ、あるいはクイズ力が得点にならないプレイが積極的に行われる。それらも楽しめなかったということだろうか。

もちろん、こういったことは店ないし店員の手腕にかかっている。スアールには一日店長制度というのもあり、クイズが好きでも店を回す能力が高くない人が店長をつとめるおそれもある(自分は間違いなく店をうまく回せないから一日店長をやってみようと思わない)。

とはいえ、その一日店長に全部運営を任せる訳ではなく、サポート役の店員もいる。事務的なこと、采配などはサポート役が手伝うと考えた方が自然だろう。一日署長となった芸能人に警察の実務的なことをさせないのと同じだ。

その辺りを考えると、少なくともスアールが、初心者をほったらかしていたわけではないと思う。

かなりスアールを擁護することになるが、店が色々手を尽くしてもぶすっとしていたから、「楽しませられなくてすみません」と言ったのではないか。

もし僕が投稿者の立場であれば、さっさと見切りを付けて帰る。

投資漫画『インベスターZ』でも描かれていたことだが、チケットを買った映画がつまらなければすぐに見切りをつけて帰る。これが優れた投資家の習性なのだそうだ。

投稿者がどのタイミングで帰ったかはわからないが、もし仮に、楽しまないまま長時間居座り続けたのであれば、「途中で帰る」という選択肢を持っていただきたい。

すぐに見切りを付けた可能性

ここまで書いていて、一つの仮説が思い浮かんだ。

先ほど、投稿者は楽しまないまま長居した可能性を示唆したが、その逆である可能性が思い浮かんだ。

すなわち、接待プレイを受ける前にさっさと帰った可能性だ。

投稿された文章を読んでずっと疑問に思っていた。なぜ接待プレイの話をしないのだろうと。

最初は、投稿者が読者の同情を集めるため、意図して書かなかったのだろうと思っていた。しかし、そうではなく、本当に初心者放置プレイしかなされていなかった可能性がある。

つまり、以下のようなことが起こった可能性がある。

①上級者向けの勝ち抜けクイズ試合を始める(全員参加)。
②途中で新ゲームをするのもおかしいので、一定人数が勝ち抜けるまで続ける(全員勝ち抜けるまで、かもしれない)。
③試合が終わった直後に退出する

これならば、投稿者が「初心者に全然配慮がない」と思うのも無理はない。1つのゲームしかしていないのだから。

そして、投稿者は、スアールはガチクイズを延々とやる場だと思い、初心者優遇クイズをやること無く帰ったのではないか。

これならある程度合点がいく。何か投稿者が誤解しているように思っていたが、氏は1ゲームだけやって帰ったのかもしれない。だとすると、店員からしても、氏は楽しめなかったように客観的に思われ、結果謝罪される羽目になる。

ただ、上記のように、完全に上級者有利というクイズはそこまで多くない。競技クイズという人口の少ないものをコンセプトとしている以上、なるべく門戸を広げないと経営的にも厳しくなる。

もしこれが当たっている場合、投稿者に「さっさと帰るな」と言いたい。

前章で「さっさと帰れ」と書き、本章で「さっさと帰るな」と書く。まるで堀元見のビジネス書のような話だが、こう結論づけるしかない。

すなわち、スアールではいろんなジャンルのクイズをやっているから、何個かやってみよう、それで楽しめなかったら見切りをつけて帰った方がいい。

良い感じのところで見切りをつけようという、曖昧ながらも社会の真実を再確認する場となった。

実際に初心者はどう扱われるか

正解者はすごい

ここで、実際初心者のお客さんは常連客からどう思われているか。

当然、100人お客さんがいれば100通りの思いがあってしかるべきだ。とはいえ、客にアンケートをとったわけでもないため、私自身の思いを書いていく。

最初に書いたように、私自身はクイズ中級者であり、ライト層だ。上級者のガチプレイヤーの考えとは大いに異なる可能性があることを理解いただきたい。

私自身の感覚からすると、一問も答えられないような客はあまりいない。こんなマニアックなバーを訪れる人には、たとえクイズ自体は初心者だっても、何かしら得意分野、それこそ本人も気づいていないような得意分野があるものだ。

それこそ、スアールには老若男女が集まる。大阪のビジネス街・梅田近くの北新地という場所も関係してか、クイズ初心者の年配男性が時々いらっしゃる。そして、この人らが意外なところで正解をするのだ。

例えば、「もともとは○○という名前だった~」という問題が出された際、クイズの勉強でではなく、実体験を元に正解を答えることができる。クイズ上級者は知識としてそれを知っているが、年配の社会人の方は、それを経験として知っている。だから、クイズ未経験でも十分張り合える。

あるいは、逆に中高生のお客さんも時々来る。たいていはQuizKnockのファンだ。この世代はとにかく、Z世代の流行に詳しい(Z世代なのだから当然かもしれないが)。

この点、常連客は(私含め)苦手な人が結構いる印象だ。大学生ならまだしも、社会人となると本当にわからない。「『平成フラミンゴ』のメンバーは誰と誰?」という問題に、ただうつむきたじろぐだけである(ただしガチプレイヤーを除く)。

初心者が正解をたたき出した時、少なくとも私はポジティブな印象を抱く。「クイズの勉強していないのに、なぜこのタイミングで押せるんだろう?」と感激してしまう。このあたり、他のプレイヤーも同じ気持ちだと思う。

クイズは、プレイヤーのレベルと関係無く、押して正解した人が偉い。何なら、初心者が意外なところでボタンを押して正解した時、そのすごさは一入だ。

私の感覚としては、初心者だから全く楽しめないということは絶対にない。


以上、自分の書きたいことをとりあえず書き綴ってみた。なるべく客観的に書こうとしたが、おそらくは、かなりスアールを擁護する立場からの意見となっているだろう。

また、自分が行ったことがあるのは大阪店だけであり、他の店舗では仕様がちがっている可能性もある。
他店経験者の方から聞いた話だと、大阪店と比べて他店はガチの人が多いそうだ(要検証)。だから、僕が大阪店での体験だけでいろいろ語るのはあまりよろしくないかもしれない。

ただ、元のはてブには、何も知らない状態で読むと誤解を生むポイントがいくつも見られた。

この記事が、そういった誤解を解くための一つの手段になってくれたら、それ以上の幸いはない。


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