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Festival Bo:m@Seoul 忘備録


2月末から毎週火曜に通っていたNextの舞台制作塾のはからいで、ソウルのフェスティバル・ボムへ行った。かっちりした劇場から廃工場の跡地をアトリエにしたところまでさまざまでとにかく観客を歩かせるフェスティバルだった。

携帯(初日に紛失)も腕時計(持ってない)もない中でプリントアウトされた地図を頼りにとにかくいろんなひとに聞きまくってなんとか走って会場に辿りつく、の繰り返し。3泊4日でのべ20名くらいに助けていただきました…감사합니다.(日本は至る所に時計があるもんなあ…)
行ってみるまで何が起こるかわからない演目があったり、いろんな意味でスリル満点。

テーマとして掲げている「ローカル・コンテンポラリー」は西欧のモノサシを基準とするのではなく、それを受け入れたうえで独自の文化を発展させていく試みということで、今後どうやって展開していくのかとても楽しみだ。

》》旅程概要 》》

4/17(金)

11:50 成田空港発

14:30 仁川国際空港着

→レートがよい明洞セブンイレブンにて両替。明洞は歌舞伎町がない新宿のような町。ソーセージの串焼きが連なったのようなものをかじりながら、日本統治時代に建てられた旧明治劇場を外から眺める。

19:30 URBAN ART GUESTHOUSE チェックイン

→携帯をまだもっていたのに迷う。

20:00 She She Pop「Schubladen」@西江メリーホール

→携帯をまだもっていたのに迷う。店に入らないとWiFiなぞ飛んでいない…。
韓国にてドイツのカンパニーを日本語字幕で観る不思議。東西が分断されたドイツと南北が分断された朝鮮半島。隣にいる人と自分とは受け取り方の下地ががほとんどちがうんだろうと感じる。

23:00 Lee Minkyoung「Karaoke for Peace」@GUISO

→ttuのプロデューサー、増永と合流。平和についてのもろもろのスピーチを映像で流し、それをカラオケ(完コピ)するパフォーマンス。「選曲」もいろいろある。発想は面白いけど言語がわからないことはさておき出落ち感でおわってしまったのがもったいない。そこからほりさげていく展開(トークなりディスカッションなり)があればちがったように思える。

朝まで続く感じだったので、抜けて弘大までタクシーでゆきソルロンタンを食べる。さっぱりした肉入りのおかゆのようなもの。日本で言うと吉野家の牛丼のようにチェーン展開してるみたい。新村までぐだぐだ歩き、チムジルバンで汗を流す。アメニティという概念が基本的にない。終電を逃した若い女の子が館内着のまま浴室で手足を洗っていたり、面食らう。整備されてるところはされてるんだろうけど、ここはテキトーな感じ。
荷物整理してたら携帯がないことに気づく。眠すぎて、寝る。

4/18(土)

午前中 ゲストハウスに戻って身支度。

→ゲストハウスのクロネコにえらくなつかれたと思ったらドアのすき間から脱走され屋上で右往左往する。ほっといていいよと言われ、気が抜ける。カフェで珈琲とハムタマゴサンドを食べる。ソウルはカフェの数がものすごく多い。

13:00 Next制作塾 シンポジウム@ムレン芸術工場

→京都ロームシアターの橋本さんのプレゼン。公共こそ問題提起できる場ではないかという話がすとんと腑に落ちた。

15:30 ゲストハウスに戻り、近所で軽食。

→増永と別れて、ソウルの下北沢、大学路へ。マロニエ公園ではギターとスネアのコミックバンド?がパフォーマンスしていた。

19:00 劇団プリンプリン?観劇。

→勝手がわからなさすぎてたまたま開場していた劇場(キャパ50位)にすべりこみ。字幕なし全編韓国語でしたがシチュエーションコメディだったので問題なし。開始15分くらいずっと観客に絡みまくってたからコントかと思ったら芝居が始まった…と思ったら全編通して観客に絡みまくっていた。観客のノリのよさは半端ない。基本的にひとりでこの辺の芝居を観に行くのはさみしいひとらしい…先に教えてくれよ。行くけれども。

22:00 増永と再会。東大門で焼肉を食べて市場をみる。衣装が積み上げられていた。古い通りのほうは深夜かららしくちらっとのぞいただけ。もう閉まっているようにしか見えなかったけど、これから開くんだそうだ。

1:00 Mossy Ground「Body Drawing」@GUISO

→行ってみるまでなにが行われるのか全く分からないイベント。
今回は、東方神起のファンたちのトーク。サイコロよりももっと多面体の面に、たぶんメンバーであろうひとりひとりのフェティッシュな身体の一部を貼り付けて、転がしながらトークするといった形態だった。韓国ではまだオタクが容認されておらず、こういう場をフェスティバルの演目に組み込みことは実験だったらしい。文化の文脈がわからないと、見え方が左右されるなあと感じる。
これも朝まで続く感じだったので、抜けてゲストハウスへ戻り。オレンジじゃないタクシーはちょっちこわい。なぜか増永の携帯もなくなる。疲れ果てて寝る。

4/19(日)

5:30 先に帰国する増永を見送り。

9:00 起きて、景福宮へ。

→都会に取り残された史跡、があまりにも多い。げんなりして大きな門を見送るだけで小さなギャラリーふたつとソウル現代美術館をのぞく。二つ目のギャラリーの片隅においてあった「エジソンのお箸」という段ボールがきにかかって仕方なかった。帰国してから調べたら、お箸がちゃんと持てるようになるトレーニングお箸?をつくっているところらしい。日本だとなんと北品川に会社があるみたい。
安国まで歩くも、ひどい遠回りをした。
お昼をたべそこね、駅でなぞのまんじゅうを買って食べる。

15:00 Lee Eungyeol「Melies Illusion Prologue」@GURO ARTS VALLEY

→九龍駅から遠すぎた...雨風も強く、この三泊四日の中で最もハードな道程だった。タクシーで行けだのバスで行けだの言われたけど、英語も日本語もふられていない時刻表は解読不能だったし、タクシーを一人で乗る勇気はなかった。なんとか辿りつきそうな最後の最後でうろうろしてたら女の子が劇場まで連れていってくれるばかりか、別れ際にホットレモンの素をプレゼントにくれた。
疲労困憊のなかであんまり覚えていないのだが、キネマトグラフ台頭時は映像を使ったイリュージョンがたくさんあって、それを今回は舞台上で体現するという試みだった。
つまり舞台上にはライブカメラと身体とスクリーンがあって、観客は客席からそれらが織りなすコラボレーションをながめるわけなのだが、アイディア先行で飽きがきてしまった。
今回の会場では一番か二番位に劇場然としたところだったので、そういう場所でややゆるめのマジックを上演すること自体が挑戦だったのかもしれない。そこにある身体をもっと感じられたら劇場で観るたのしみもあったのかなと思う。

17:00 F/T「動物紳士」@ムレン芸術工場

→ぎりぎりのというか間に合わずに到着。去年のF/T(フェスティバルトーキョー)はほぼみられなかったので、初見。フィジカルなところがピックアップされたのかな...どうしてイさんが日本からこの作品を連れてきたのかよくわからなかった。美術の仕掛けはおもしろかったけど、作品にとりこむ検閲がされないままどんどん採用してしていった結果のような気がする。
ゼミで知り合ったS夫妻と出会い、クロージングパーティーに一緒に行くことになる。

19:00 新村で参鶏湯

→参鶏湯をごちそうに。道程のことや、お互いのことをゆったりと話す。韓国焼酎はさっぱりして飲みやすい。参鶏湯は日本だと出汁が強い印象だが、本場は朝鮮人参をはじめとする漢方の味がする。食べ終わったら身体がとてもぽかぽかした。

21:30 クロージングパーティー@イテウォン

→東京でいう六本木のようなところ。地下のクラブではアジアンミュージックパーティーと称して60-70年代の耳慣れない、ノリのいい曲ががんがんかかっていた。ビールを飲みながらぼんやりして、あまりに声が届かないので地上にてゼミのひとたちと話す。明日も早いので早めに解散。

23:00 ゲストハウスに戻る

→英語でトーキングしているハウスメイトにやや混ざる。はなせるようになったら世界がもっと広がるにちがいないとそんなことは自明なのだが。なんと、アラーム用にケータイを貸してくれるという。
感謝感激のち爆睡。

4/20(月)

5:00 はっきりと目を覚ます。

→ケータイを返して、キッチンでコーンフレークと珈琲をいただく。リビングではソファで男の子が(といっても大学生くらい)が大の字で寝ていた。二日目にさんざん惑わしてくれたクロネコをかき抱いて別れを惜しんだ後、屋上で一服。
タワー団地(マンションではない)の乱立した街のふもとには町工場が道路に沿って並んでいる。日本の戦後のもうひとつの姿、パラレルワールドをみたような気がした。日本の下水処理もオリンピックに向けてあわただしく整備されたものだしね。永遠に終わらない60年代前半と、奇妙に発達したメトロ。クロネコは屋上にかけあがってはこなかった。

8:30 仁川国際空港発

→荷物預けるのに40分くらい並ぶ。なんでなんだ。かなりぎりぎりで搭乗。空港内をかけずりまわって疲弊する。

11:50 成田空港着

→滑走路のみえるレストランでデミグラスソースのオムライスをたべる。オムライスをたべるのはひさしぶりである。旅から帰ってきた人、これから出発する人、がめいめいに食事をとっている。珈琲を飲んでほっとして、携帯電話を止めに帰路を急いだのであった。

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