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【コスパ最強】「水産会社のうどん店」の美味しさが想像のはるか上すぎて震えた【きつねとたぬき】

定番の麺類のひとつとして、子どもから大人まで幅広く愛されている「うどん」。

あまりに日常的な食べ物すぎて、いつもは意識を向けることがないのに、あるとき、急に身体が欲することってありませんか? 「あ……うどんが食べたい」「今日の昼、うどんにしようかな」と。

そんなときにぜひおすすめしたいうどんの名店が、大分県佐伯(さいき)市にあるのをご存じでしょうか?

それがこちら。「きつねとたぬき」です!


“さかな屋さんが手がけるうどん屋さん”に入店!

「きつねとたぬき」は、山田水産が経営する讃岐うどんのお店で、2011年にオープンしたそう。“さかな屋さん(水産会社)が手がける、うどん屋さん”というユニークな建て付けのお店ですが、果たしてどんな様子なのか、さっそく見ていきましょう。

エントランス横にメニュー写真が並んでいますね。どれも魅力的です。イイ感じでテンションが上がってきました。

反対側には、おすすめの小皿料理や小鉢を紹介するパネルも。ほう、いろいろありますね~。麺屋さんのサイドメニューって、なんだか妙に心引かれませんか? 「麺を軽くすすって、サッと出よう」と思いながら入店したのに、結局、サイドメニューをいくつか添えてしまって、パンパンのお腹をさすりながら店を後にする……みたいなこと、ありますよね!?

店先でメニューを眺めながら興奮していても邪魔になりますから、いいかげん店内に入りましょう。

なかなか広々としています。テーブル席のほか、小上がり席も充実していますね。グループや家族連れで来ても、ゆっくり食事が楽しめそうです。

店に入ってすぐのところに、券売機がドンッと立っております。食券を購入したら、オーダーは自動で厨房にいくようです。食券番号が呼ばれるまで席に座って待ち、呼ばれたらカウンターまで取りに行く、と。了解です。

券売機の横には「おすすめトッピング」のほか、「本日のおすすめ」や「お好み小鉢」といったサイドメニューが掲示されたパネルも。

う~ん、これは迷いますねぇ。端から全部注文したい衝動に駆られます。うどんは、人気どころをまず味わってみたいかも。人気メニューはどれなんでしょうか。店長の塩月修一さんに聞いてみました。

「人気ナンバーワンは『肉うどん』(550円)ですね。以前は定番の『かき揚げうどん』(540円)が一番人気でしたが、上に載った肉煮(牛)が『美味しい!』と評判になりまして、いまは『肉うどん』がたいへん人気です。

次点は『ごまだしうどん』(450円)。こちらは佐伯の“ご当地うどん”なので、大分の他のエリアから来たお客様、県外からのお客様からとくに好まれています。

三番手は、丼モノとのセットメニューですね。なかでも『おやこ丼セット』(600円)や『カツ丼セット』(740円)、『うな丼セット』(780円)あたりが人気でしょうか。メニュー写真は温かいうどんと組み合わせたものですが、冷たいうどんも選べますよ」

大分・佐伯名物「ごまだしうどん」とは?

塩月店長の話に出てきた「ごまだしうどん」、ご存じない方もいると思うので、少し解説を。「ごまだし」とは、古くから漁業の街として発展してきた佐伯エリアの伝統的な調味料。底引き漁でよく獲れる「エソ」という魚を焼いて身をほぐし、そこにエソと同量程度のすりゴマ、醤油、ザラメ(砂糖)、みりんを加えて、ペースト状に練り上げたものとか。

「佐伯ではごく一般的な食材で、うどんに載せるのも定番の食べ方のひとつ」と塩月店長。一般的には、丼にうどんとお湯を入れて、食べる直前にごまだしを解きほぐし、ごまだしから出る魚の旨味やゴマの香ばしさ、醤油の風味でシンプルに味わうそう。ただ、「きつねとたぬき」の場合はお湯ではなくダシ汁を張っているので、「味により深みがあるのが特徴」とのこと。

うどん以外にも、鍋料理に加えたり、お茶漬けに載せたり、焼きおにぎりにしたりと、さまざまな料理で活用されているという佐伯の郷土食材・ごまだし。記者も味見をさせてもらいましたが、魚の旨味とゴマの香りが口いっぱいに広がり、実にクセになる味わい。魚介系のダシが好きな方なら、ごまだしうどんの風味はハマってしまうこと請け合いです。

「なにっ! 大盛が10円!?」充実したメニューを前に、しばし悩む

券売機の前で「あれも食べたい」「これも気になる」と逡巡していたところ、とんでもないボタンを発見してしまいました。

うどん麺大盛 10円

はっ!? 10円~!!!! なにそれ、安すぎませんかっ?

「よく驚かれます。まあ、お客様に喜んでいただければ、それでいいんですよ。お腹いっぱい食べていただきたいので」(塩月店長)

本当は「大盛無料」でもよかったのだけど、券売機のシステム上、最低単位が10円からしか設定できなかったので、やむを得ず10円をいただくことにした……なんてウラ話も。それにしたって、大盤振る舞いには違いありません。

「大盛10円」にさらに興奮し、軽く息切れしながら選んだメニューがこちら。

食べたいものがありすぎて、悩みに悩んだ末の組み合わせでございます。

  • うな丼セット(780円)

  • うどん麺大盛(10円)

  • トッピング 肉煮(230円)

  • トッピング ごぼ天(160円)

「『旨い!』と評判の肉煮はとても気になるし、肉うどんは一番の人気メニューでもあるから、ぜひ食べたい」
「山田水産のお店なのだから、うな丼も押さえたいところ」
「九州でうどんを食べるとなると、九州の外から訪れた人間としては、なんとなくごぼ天も味わっておきたい(ごぼ天うどんは大分の隣県・福岡の名物でもあるし)」

……なんて調子で綿密に脳内会議をした結果、導き出されたのが上記のメニュー。目の前に並んだ瞬間、「ふむ、我ながらよいカップリング」とほくそ笑んでしまいました。

汁の旨味、うどんの食感にブッ飛ぶ

では、さっそくいただきましょう。何はさておき、うどんの汁から。

ほぅ~、なんと滋味深い汁でしょう。口→食道→胃袋へと流れ込んでいく過程で、全身の筋肉がほっこり弛緩していくようです。これは……そう、癒し。日本人の遺伝子に刻み込まれた「ダシの旨味」の記憶が優しく呼び覚まされていくかのごとき、やすらぎの瞬間が訪れてしまいました。

「当店のダシは、合わせ方が特徴かもしれません。カツオ節、メジカ節(ソウダガツオを用いた節。宗田節と呼ぶことも)、サバ節、ウルメイワシの煮干と4つの魚を組み合わせ、そこに北海道産のダシ昆布も加えて、ダシをとっています」(塩月店長)

なるほど、これはまさに味の黄金比。完全なる均衡で設えられた大聖堂すら脳裏に浮かんできました。魚介の旨味が凝縮された、実に美しいダシです。魚の美味しさを知り抜いた山田水産ならでは、と言えるのかもしれません。ジワジワと臓腑に染み入る、絶妙な味わい。

続いて、うどんをすすってみましょう。

えっ……? ん……? ほう……これは興味深い。「讃岐うどん」ということなので、もっと強いコシを想像していたのですが、初手の感覚としては“ふんわり”感が強い印象。でも、ただモチモチ、柔らか~なわけでもない。歯を入れていくにつれて、心地よい反発力も感じます。「コシだけでなく、柔らかさもある」「でも、単なる柔らかさに留まらない、確かな弾力が中に隠されている」──そんな麺でしょうか。

「『讃岐うどん』を謳っている店なので、製法はそれに準じています。九州のうどんは柔らかいものが多いので、それらと比べたらコシは強いです。とはいえ、お客様はやはり九州の方が多いので、コシの強さを『硬い』と感じてしまうことがないよう、もっちりとした食感、滑らかな喉ごしを感じてもらえるよう、粉をブレンドしています」(塩月店長)

麺に用いているのは、北海道産の小麦粉と九州産の小麦粉。「北海道産の粉だけでうどんを打つと、どうしても硬さが出てしまう」ということで、配合を工夫したのだそう。「きつねとたぬき」ならではの食感は、ここに理由があったようです。

考え抜かれた汁と麺。この2つが口中で融合し、ほのかな小麦の香りを漂わせながら、つるりと喉を通り抜けていく。これはもう止まりません。どんどん食べ進んでしまいます。

盛りだくさんのトッピングで、ますます味わい豊かに

トッピングや丼も見逃せません。

こちらの「ごぼ天」は、いわゆるかき揚げになっているタイプ。

ちなみに、福岡名物の「ごぼ天(ごぼう天)うどん」に載っているものは棒状をしているケースも多いのですが、九州以外の人からすると、かき揚げタイプのほうが馴染み深いのではないでしょうか。

「一見したところ、普通のかき揚げと同じように映るかもしれませんが、かき揚げよりもごぼうのささがきを粗めにして、よりごぼうの食感が楽しめるように仕上げています」(塩月店長)

美味しいダシを吸った衣と、存在感のあるごぼうの香味。そのマッチングは極上です。ごぼうの歯ざわりが食感にも変化を付けて、食欲をさらに増してくれます。うどんのよき相棒、といったところ。

そして、人気の「肉煮」。

牛肉を甘辛く炊いた一品で、うどんに載せると甘さやコクが汁にじんわりと広がり、ダシの風味の奥深さをより強くしてくれる印象です。ガッツリ感がプラスされるのも嬉しいところ。「肉うどん」を注文し、さらにトッピングで肉煮を追加して“追い牛”仕立てで楽しむお客様もいるとか。おかずとして「肉煮」単体で食べてもよし、瓶ビール(500円)のアテにしてもよし、白おにぎり(2個130円)に載せて牛丼風に楽しむもよし。かなり汎用性の高いサイドメニューではないでしょうか。

もちろん「うな丼」も忘れちゃいけません。

山田水産が鹿児島県志布志市の養鰻施設で、薬を一切使わずに育てた「無薬養鰻」のうなぎ。その蒲焼きの美味しさを手軽に味わえる丼です。主役であるうどんの存在感を損なわない程度のボリューム感なので、ペロリと食べられてしまうのに、とても満足感が高い。薬味の青ネギやワサビも食欲をそそります。

生魚やデザートも絶品! サイドメニューも本気だった

「きつねとたぬき」はサイドメニューも充実しています。メニューボードに、その日用意されている品々が掲示されているので、ぜひチェックしてみてください。取材に訪れた日は「本日のおすすめ」(300円)として「イカ天」「イカ飯」「アジ寿司」「チャーハン」が、「お好み小鉢」(200円)として「ポテトサラダ」「野菜サラダ」「白和え」がラインアップされていました。

サイドメニューは厨房カウンター近くに設置された陳列ケースに並べられています。食券購入後、こちらからセルフで取っていきましょう。「玉子焼き」(200円)など、ボードに掲示されていない品が用意されていることもあるので、うどんが出てくるまでのあいだに陳列ケースを確認。モノを見てから食券を購入し、自席まで運んでくるのもアリです。

これは「アジ寿司」。酢締めしたアジには旨味が凝縮されており、大葉が青魚の風味をより豊かに引き立てます。うどんを食べるあいだに挟むアクセントして、相性バツグンです。

さらに、サイドメニューで絶対に見逃せないのが「刺身」(400円)!

鮮度のよいプリップリの刺身が楽しめます。水産会社が手がけるお店だけに、生魚の目利きもまったく抜かりがありません。これで400円は、相当お値打ちだと思います。なお、こちらの刺身は、隣接している山田水産直営店「佐伯回転寿司マルマン」で本職の板前さんが包丁を入れたもの。気取りはなくても、味わいは本物です。

加えて、意外なメニューがもうひとつ。「きつねとたぬき」は「杏仁豆腐」(210円)も人気なのです。

完全にクチコミだけで広まった人気で、食べた人が「美味しい!」と口伝えしたことで、徐々に注目度が高まっていったそう。「他の店ではわざわざ杏仁豆腐なんて食べないけど、ここに来たら、絶対に食べる」というお客様もいるとか。塩月店長が「もっと美味しくしたい」「さらにコクを出したい」と、コンデンスミルクや生クリームなどを加えて試作を重ね、ついに行き着いた味。デザートまで美味しいうどん屋さんなんて、なかなかないでしょう。甘党の記者は「これだけを食べるために『きつねとたぬき』に出かけてもいい!」と感じ入ってしまいました。

そう聞いて「またまた~、大袈裟だなぁ」と思った方もいるかもしれませんが、ダマされたと思って、一度食べてみてください。値段見合いで考えたら、その味わいに驚くはず。

飾り気はないけど、本寸歩な味わいが堪能できるうどん店

さかな屋さんが経営する、ちょっとユニークなうどん屋さん「きつねとたぬき」。水産会社である山田水産だからこそ実現できる味の完成度の高さ、メニュー構成の工夫などが感じられて、ずっと唸りっぱなしでした。すべてのメニューが誠実に仕立てられていて平均点が高く、値頃感もある。これって、そう簡単に実現できることはありません。

うどんは飾り気のない、日常の食べ物です。それでも、携わる人々が基本に忠実に、丁寧に仕事をすることで、ここまで味わい深いものになる──そんな真理を改めて認識した次第。食べ慣れたものが、当たり前のように美味しい。これに勝る喜びはないかもしれません。

毎日の暮らしのなかで、ささやかながらも心豊かな「食」のひと時を過ごしてみたい。そう思ったときは、ぜひ「きつねとたぬき」を訪ねてみてください。

一杯のうどんを前に、きっと幸せな気持ちになれることでしょう。

そうそう、これからの季節は、冷たいうどんもおすすめ。たとえば「鰻ぶっかけ」(700円)はいかがですか?

打ち立て自家製麺の滑らかな喉ごしと心地よい歯ざわり。そして、ほんのりと小麦が香る、うどんそのものの味わいをストレートに楽しみたいときは、冷たいうどんが最適かもしれません。山田水産謹製のうなぎの蒲焼きが、うどんの美味しさをもう一段、上の次元に高めてくれます

キリッとしたつゆをかけたら、全体を軽く一混ぜ。あとはもう、豪快にすするのみです。もう、最高ですよ。

※店舗情報
きつねとたぬき
住所:大分県佐伯市城下東町1-9
電話:0972-23-3394
営業時間:10:40~15:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休み)

取材・構成/漆原直行

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