ママのおまじない(no.21〜no.25)

この「ママのおまじない」は、心臓病の子どものための保育教室『そらとぶペンギン』に通っていた生徒が小学生となり、そのお母さんが2004年から2007年まで、『そらとぶペンギン』のサイトに掲載していたものです。

21.治らない病気

ゆきが赤ちゃんの頃、主治医の先生から「治る病気ではないのですから・・・」と言われたことがある。
それまで、薬を飲めば、手術をすれば、時間が経てば・・・治るかもしれないと思っていた考えが一挙に崩れた。
どんなに、治る病気ならよかったのにと何度も何度も思った。
でもそれが、ゆきの病気を受け入れるはじまりだったようにも思う。

そして今、ゆき自身から「ゆきは治らない病気なの?いつ治るの?」という質問がでた。
私は、(こんな時は、しっかり向き合ってきちんと説明せねば・・・と)緊張した。
でもその固くなった私から出た言葉、「治らないな。」だった。
ゆき、「どうして、どうなっているの?」
私、「心臓にある四つのお部屋が、ゆきは二つで・・・」と言ったら 怒ったように「もういい!言わなくていい!」と別のことをし始めた。

きっと、お薬を飲んだり、病院に行ったりして少しずつ治っていくもんだと思っていたんだろう。
「治らない病気」かなり、こたえただろう。
でも私は、「治るよ!大丈夫」とは言えなかった。

ゆき、少しずつ、自分の病気をわかっていこうね。
どんな質問でもしていいから。
どんなに怒ってもいいから。
ママはあなたと真正面から向き合うから。
約束するから・・・

22.土日の過ごし方

新学期に入ってから、お休みもしないでなんとか登校していたゆき。
金曜日に保健室から電話。
「頭が痛くなった」とのこと。
迎えに行くと、保健室のベットから手をふっていたので、たいしたことないな・・・とひと安心。

それから金曜日の午後、土曜日、日曜日とひたすらゴロゴロしながら、時々、絵を描いたり、テレビを見たり。
そう言えば、先週の土日もそうだったような・・・

ちょうど、近所の八幡様のおまつりだった。
案の定、「疲れるから行かない」「人が多いから行かない」と。
でも年に一回のことだからと、夫が「パパがおんぶしてあげるから」と言ったら渋々行く気になった。
おまつりに行き、お参りし、好きなものをいくつか買うともう「うちへ帰ろうよ~」が始まる。

家に帰ると、またゴロっとしながら本を読んでいた。
疲れがとれないんだね。
健康な子なら一晩、ぐっすり眠れば、元気回復するのに・・・
まるで7歳の疲れたサラリーマンのようだ。
どこかに、酸素たっぷりの血流をよくする栄養ドリンクないかな~

23.水泳がんばり表

先週で、学校のプールの授業が終わった。
どの子も夏休みの間に水に慣れて、浮ける子も多くなったようだ。
ゆきは、水が恐くて、もぐるどころか、顔も付けられない。
(夏休みのプール教室は、行かなかったし、仕方ないよね~)と プールサイドから見ていた。

最終日は、検定。
グループになって、水の中にもぐったり、けのびしたり・・・
ゆきはみんなが、楽しそうに検定を受ける中、恐くてか?悔しくてか?
プールの中で泣き始めた。
先生は、「がんばってもできなかったら、あがっていてもいいよ」と言ってくれた。
あがって、ちょこんと座って、みんなが検定を受け終わるのをじっと待っていた。
なんだか小さいゆきが、さらにちっちゃく見えた。

数日後、「水泳がんばり表」を持ってかえってきた。
検定の結果が書いてあった。
一番下のランク・10級が「頭までしずむことができる」
それもできなかったから、何も記入はないだろうなと、思ったら、10級の下に「たのしく、みずあそびができました」と担任の先生の字。
横には金色の合格シールと、花マルのハンコも押されていた。

「もぐれなかったのに、先生、書いてくれた!どうしてかな?」とゆき。
「きちんと水着に着替えて、体操して、みんなとたのしく入ったからだよ。
先生は、見ていてくれたんだよ。」と私。

先生のこの一言で、夏のプールを楽しいもので締めくくることができた。
温かな、先生の気持ちが伝わってきて、うれしかった。ありがたかった。
人には努力しても、できることとできないことがある。
できなくても、それを見守る優しいまなざしがあれば、大きくなれる。

来年、また楽しく入れたらいいね。

24.ジェットコースター

ジェットコースターと言っても、遊園地のではない。

木曜日、月1回の外来に行った。
最近、疲れがとれないようなので、そのことも先生にうかがおうと思っていた。
心電図、サチュレーション(血液中の酸素飽和度)を測ったあと、診察室へ。
その結果がいまひとつ良くなくて、今の疲れやすさが、なにか関係しているかもしれないとのこと。
原因はいくつか考えられるらしい。
それによっては、対処できるものと、まったく手がつけられないものがあるらしい。

先生は、わかりやすく、丁寧に話してくださった。
こんな風に先生から説明を受けるのって、何回目?何十回目? やっと学校に通い始めて、楽しく過ごしているのに・・・
いや、仕方がない!様子を見るしかない!なんのこれしき。。。
という思いで頭の中がグルグルまわっていた。
横でゆきは、診察室に置いてあるぬいぐるみを持って、先生のパソコンの画面を触っていた。

ゆきを育てていると、本当にジェットコースターに乗っているみたいだ。
上がったり、急に下がったり・・・
いつも何がおこるか、ドキドキしている。
先が見えない。
・・・そうだ!振り落とされないようにシートベルトをしなければ! 絶対、振り落とされてたまるものか!

25.迷う

私は、元々、心配症で臆病な性格だ。
特にゆきに関しては、その性格が倍増してくるようだ。
夫は、「やってみなけりゃわからない!」という前向き?な、おおらか?な性格なよう。
あまり夫婦で意見の対立になったことは、ないのだが、ここのところのゆきについては、意見がぶつかることが多くなった。

ゆきが「頭、いたい~学校、休みたい・・・」(雰囲気的には、元気な様子)と言うと、私は、とても悩みながら結局、休ませることが多い。
夫は、「朝は、誰でも行きたくないもんだ。元気そうだから、行こうよ。」と言う。
連休中もそんなことが、たびたびあった。
「頭がいたくなりそうだから、行かない」とゆき。
「じゃあ、ママとお留守番してようか・・・」と私。
「行ってみなきゃわからないよ、つらくなったら、パパがおんぶしてあげるから」と夫。
こんな会話が数十分続く。
結局、コンビニでお菓子を買うという約束で、でかけた。

。。。なんか楽しそう~
頭も痛くないみたい。
笑ってる。。。
夫は「ほらね!行けば楽しいんだよ」と。
ゆきも「来てよかった!」と言う。
う~ん・・・でも私には、判断がつかない。
出かけて具合が悪くなるのが心配。
そして夫は「悪くなったら、その時考えよう!楽しいこと、させようよ!」と。

今日もまた、私は迷うのだ。。。

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