ママのおまじない(no.46〜no.50)

この「ママのおまじない」は、心臓病の子どものための保育教室『そらとぶペンギン』に通っていた生徒が小学生となり、そのお母さんが2004年から2007年まで、『そらとぶペンギン』のサイトに掲載していたものです。

46.今年も感謝

今年も残りわずかになってきた。
本当にこの一年は、ゆきにとって変化の年だった。
幼稚園卒園、小学校入学・・・
楽しい変化の連続だった。
登校、授業、休み時間、給食、掃除、プール、遠足、運動会・・・
毎日いろんなことがあったのだろうな。
私もいっしょに一年生をもう一度やったような気持ちだ。

たくさんの温かな方に見守られ、ゆきはすくすく大きくなっている。
というか大きくなれている。
小さいころ、よく「年を越せるか・・・」 「お正月を迎えられるか」と思ったもの。
今も同じ気持ちだけど、なにかが違う。
一年、一年、一日、一日の積み重ねが、なにより大切で、今、目の前のことを懸命にやっていくしかないと気がつきはじめた。

本当に、今年もありがとう!
そして来年もよろしく!

47.ことしの目標

新しい年が始まった。
大晦日に大雪が降って、去年一年分のいろいろなものが、ゆっくりゆっくり思い出されるようだった。

元旦・・・
ゆきに「ことしの目標はなに?」と聞いたら、
「やさしい人になりたい!」と即答。
「やさしい人ってどんな人?」と私。(ひそかにママみたいと言ってくれるのを期待)
「ドラえもんのしずかちゃんみたいな人」とゆき。
「しずかちゃんか~」(がっかり・・・)
・・・
「どうしたらやさしくなれるのかな?」とゆき。
ふたりでしばらく考えた。

やさしい人・・・優しい人。
「相手のことを考える人?」
「ニコニコしている人?」
「静かな人?」と私がいろいろ挙げていっても、ゆきの反応はいまひとつ。
でも、頭の中ではキラキラした「やさしい人」像はできているようだ。

いいね!
しずかちゃんのような、相手のことを思いやれる、おだやかなやさしい人になろうね。
でもやさしい人は、「バ~カ!」「ふざけんなよ!」なんて言わないよ。。。

今年も元気で過ごせますように・・・

48.最高気温

毎朝、必ずチェックすることがある。
今日の「最高気温」。

ゆきがまだ2、3歳のころ、週に一回、「そらとぶペンギン」に通っていた。
車の運転のできない私は、ひたすらバスやタクシーと電車を乗り継いで行った。
その時、「最高気温」が10℃以上だと安心し、それ以下だと「あったかい格好で いかなければ!」と気合がはいっていた。(笑)
10℃以下の気温は、健康な大人でもかなり寒い、冷たいと感じる。
心臓の悪いゆきにはかなりこたえるはす。
それ以来、冬は外出しない日でも「最高気温」が気になるのだ。

いよいよ今週から3学期が始まる。
まずい!今週は、最高気温が9、8℃の日が続くらしい。
そんな私を体格のよい暑がりの夫(笑)は冷めた目で見る。
「そんな1、2℃上がっただけで、変わるもんかね~東京の冬はあったかいよ」と 私の微妙な母心を無視したことを言っている。
「気持ちの問題よ!」と叫ぶ私なのだ。

でも早く、毎日が10℃以上の日にならないかな~・・・
春よ、こいっ!

49.おなかにいた頃①

友人に赤ちゃんが生まれた。
妊娠中、うちに遊びにきてくれて、ゆきやおにいちゃんは大きなおなかを不思議そうにながめていた。
私は、なんだか苦いような、せつないような複雑な気持ちがしていた。

ゆきは私のおなかにいた時に病気がわかった。
おにいちゃんのときが健康でなにも問題なかったのもあって、妊娠中もトラブルが発生するなんて、しかもおなかの赤ちゃんが病気かもしれないなんて、夢にも思わなかった。

こころのどこかで、
「私からは障害のある子は産まれない」と信じていた。
超音波検査で、「心臓にもしかしたら・・・」と言われても、次の外来までには治っているかも。
この先生の診方がおかしいのだ。
・・・でも本当に病気を持って生まれてきたら・・・
私の生活はメチャクチャになる。
私のこれからは台無しになる。
そんな自分のことばかり考えていた。

おなかにいた頃②

「うちの病院では、手に負えないかもしれないと」
産科と小児循環器のある大学病院を紹介された。
だんだんおなかの赤ちゃんが本当に病気になっていくような、日常と切り離されていくような・・・
自分だけが別世界に入っていくような・・・
たまらない気持ちだった。

他の妊婦さんが、みんな憎らしかった。
「私の気持ちなんて、誰にもわからない」
「あなたのおなかの中の赤ちゃんも病気だったらいいのに・・・」とまで思った。

そんなある日、大学病院の小児循環器の先生が、
「これからいっしょに頑張っていきましょう。」
「おなかの赤ちゃんと同じ病気でも、成人している方もいますよ。」と言ってくださった。
涙がでた。
もう、まわりを見てもしかたがない。
とにかく、無事、10ヶ月、私のおなかで大きくさせよう。
ベストの状態で産んであげよう。。。これからの闘いにそなえて・・・

おなかにいた頃③

そう思っても、おなかの中の赤ちゃんは何のために生まれてくるの?
痛いこと、つらいことばかり待っているのに、生むことがいいことなの?
今度は、そんなことばかり考えていた。

でも幼稚園のおにいちゃんは、いつもおなかをさわって楽しみにしていた。
夫は、今までと何も変わらなく(そう見えただけかも)過ごしていた。
同居している義父母も「ママ(私)がまず、元気でいなきゃね!」と旬の果物などを差し入れてくれた。
みんなみんな、ありがたかった。

とにかくどんな状態で生まれてこようと、受け止めよう、受け容れよう。
私ができることは、良い状態で産む事だけだ。
そんなことを繰り返し、思い、祈り、自分を励ましていた。
そして、臨月。
おなかをさすりながら、「いつ産まれてきてもいいよ。ママも頑張るよ。」と
その日を迎えた。
そんな中、ゆきが生まれてきてくれた。

今思えば、ゆきがおなかの中で、
「私は、病気を持って生まれるから、準備しておいてね。」と言っていたようにも 思える。(その当時は、悲劇のヒロインのような私だったが・・・)

時間というのは、ありがたいもので、
時々、その頃のことを思い出して、いろんな思いをかみしめることもできるようになった。
もう7年も経ったんだね・・・

50.さくらのつぼみ

先日、用事があって小学校に行った。
その日は、寒いけど空のきれいな冬晴れの日だった。
ゆきの小学校の門のとなりに大きな桜の木がある。
卒業式、入学式は、桜色のじゅうたんを敷き詰めたようになって、それは、とても見事な桜である。

ふと、その桜の木を見上げた。
あたりまえだけど、葉っぱはすべて枯れ落ちていた。
でもよく、よく見ると、枝から無数のつぼみがでていた。
どの枝からもたくさんのつぼみ。
ほのかにつぼみの先が赤くなっている。
すごい!

真っ青な空に、少しだけふくらんだたくさんのつぼみたち・・・
こんなに寒くて、冷たいのに、桜は春になる準備を忘れてはいなかったんだね。
このつぼみたちが、あと2ヶ月もするとピンク色の桜が咲かせると思うと、 冬の寒さも、たいしたことないように思えてきた。

春までもう少し!ガンバロウ!
桜が咲いたら、ゆきも2年生なんだね・・・

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