ママのおまじない(no.6〜no.10)

この「ママのおまじない」は、心臓病の子どものための保育教室『そらとぶペンギン』に通っていた生徒が小学生となり、そのお母さんが2004年から2007年まで、『そらとぶペンギン』のサイトに掲載していたものです。

6.かみなりとおへそ

暑い日が続いている。 
午後、急にうす暗くなり遠くでゴロゴロと雷のなる音が。
もうそろそろ、ゆきが学校 から帰る時間なのに。。。
傘を持って迎えにいこうと思ったとき、担任の先生から電話。
「今日はいろいろ持って帰るものが多くて、お時間があったら迎えにでてあげてください」と。
いそいで出かけると、すでに大粒の雨が降っていた。
ものすごい勢いの雨と雷。

「荷物を両手に持って、この雨と雷は心細いだろうな」と思いながら、走った。
曲がり角でランドセルを背負い、両手いっぱいに荷物を持って、びしょぬれになってポツンと立ち止まっているゆき。
すでに泣いている。
私が「こわかった?」と聞くと、 「おへそがとられちゃう~!」と大泣き。
久しぶりに見たゆきの泣き顔。
家に帰って、すぐにパンツの中をのぞき込んで「おへそ、あったぁ」とうれしそうにしていた。
なんてかわいい~!と親バカな私。

7.通知表

ようやく1学期が終わった。
ゆきの入学式から3ヶ月半。
正直、長かった。
とても暑い中、お道具箱や防災頭巾を両手いっぱいに持って帰ってきた。
そして初めての通知表。
なんだかこの中にゆきの不安や驚き、くやしさ、うれしさ、楽しさ、がつまっている気がした。
評価よりこうして通知表をもらえるのが、なによりうれしい。

先生からのコメント
「自分の考えをきちんと持っていて、進んで担任に伝えにきます。明るく、元気に生活できた一学期でした。」

それを義母に見せたら、
「今まで会ったすべての人に感謝しなければ、いけないよ。ここまでこられたのは、そういう人たちのおかげだよ。」と。

感謝の気持ちでいっぱいになった通知表だった。
ゆき、がんばったね。ありがとう。。。

8.家族旅行

夏休みが始まり、早々と伊豆に旅行にでかけた。
今年は「海」・・・今までは、夏のギラギラの炎天下は、心臓病のゆきには かなりきついものがあったので、避けていた場所であった。
家族で旅行、アタリマエのようでアタリマエではない。
誰かひとりでも具合が悪ければ、いけないのだ。

ゆきがまだお腹にいた頃、すでにゆきの病気が見つかり、暗い気持ちで行ったのも伊豆だった。
生まれてからも主治医から「先のことはあまり考えないように」と言われ、「今、楽しいことをたくさん感じさせよう」とでかけた富士山へのドライブ。
冬の寒い中、暖かなかっこをしてでかけた箱根。
・・・旅行の楽しいこと、うれしいことがきっとゆきの生きる力になると信じて、 そしてそれを見守る私たちのエネルギーになるような気がして。

でもそのうち、「もうパパとママとでかけない!」なんて生意気なことを、言う日がくるのかな~。 

9.落ち込んだとき

こんな私だが、年に数回、なんだか、心がブルーな気持ちでいっぱいになることがある。
原因は自分でもなんとなくわかっていた。

家事をやる気になれないのはいつものことだが(笑)、 ゆきに飲ます、毎日の心臓のお薬までも面倒な気持ちになっていた。
終いには、台所に立っていても涙がでてくる。

そんな日が続き、用事があり、「そらとぶペンギン」の先生に電話した。
ゆきが入園前に2年半もお世話になった先生である。
世間話しをするうちに、今の自分の状態を話していた。
また涙・・・ 泣きながら、話し続けた。

先生は、ただ黙って話しを聞いてくれた。
本当に、否定も励ましもせず、ただ黙って聞いてくれた。
私だったら、何か言ってしまうかもしれない。
「がんばれ!」とか「しっかり!」とか。。。 でもそんな言葉はいらない。

先生に話したら、不思議と元気がでてきた。
泣くだけ泣いて、それを聞いてくれる、受け止めてくれる人がいて。
それで元気になれる!また頑張れる!

10.サマーキャンプ①

毎年、我が家の恒例の夏の行事。
心臓病の子のためのサマーキャンプ。
思えば、初めて参加したのはゆきが2歳になる少し前。
当時、かなり心不全も進んで、チアノーゼも強かった。
この先の手術の予定もまったく立たないそんな時だった。
だから夏休みと言ってもなかなか遠出もできなかった。

そんな時、医師も同行する、自分たち以外の心臓病の家族にも会えるこのキャンプを知った。
おにいちゃんにも夏の思い出をつくってあげたかった。
そして私も他の病児をもった家族は、一体、どんな思いで子育てしたのかを 知りたかった。
なにより、未来のゆきの姿をキャンプの中に見つけたかったのかもしれない。 そんな思いの中、初参加を決めたのである。

ドキドキハラハラの5年前の夏のこと。

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