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府中市バリアフリーマップ

 10数年前の10月中旬ころだったと思います。府中市の地域福祉推進課長から「今年度中にバリアフリーマップを作らなくてはならないのだが、手伝ってもらえないだろうか」との話。
 障がいの当事者や福祉関連事業所にも参加してもらうので、そのまとめ役を引き受けて欲しいとのことでした。当時、私が民生委員と障がい者施設の法人理事だったからだと思います。

 後に聞いた話では、直前の市議会でバリアフリーマップが取り上げられ、福祉計画にもあったことから、年度中に作成することになったようです。
 年度当初の計画ではないため、予算もなく、印刷を含めて5ヶ月で完成することが条件です。

 いざ、編集委員会を始めると、視覚障がいの方からはマップは見られない、車いす利用の方からはトイレやバリアフリーの状況をネットで確認してから出かけるし、第一、出先でマップを開いてみようとは思わないなど。
また、複数の障がいのある方にお聞きしたところ、バリアを感じたことはないと言われ、「歩道は凸凹で車いすでは大変ではないですか?」と聞くと、「いやぁ、慣れてるから気になりません」
どうやら、生活するためには、バリアがどうこう言っても始まらないと考えているようです。
 編集委員会を始めてから、障がいの当事者はバリアフリーマップを必要としていないことに気づきました。

 さて、当事者が必要としていないものを当事者のために作らなくてはならないと言う、相矛盾する課題をどう解決するか。
 ヒントは聞き取り調査の中にありました。「あそこの食堂は階段があるけど、手伝ってくれる」「〇〇商店は自動ドアではないけど、すぐ気づいてドアを開けてくれる」などなど。
 これらのお店には、物理的なバリアを感じさせない気遣いがあります。
物理的なバリアフリー情報を載せるより、こういった「心のバリアフリー」情報を載せた方が生活の幅も広がります。
 そこで、障がいのある方たちに、行きやすい「お勧めのお店」を紹介していただき、市が必要と考えるバリアフリー情報に加え、この「お勧めのお店」をマップに落とし込むことを編集委員会で決定。
バリアフリーマップが更新される度に、この「お勧めのお店」が増えていけば、バリアフリーな街になっていくのではないかとも考えました。

 方針が決まりましたが、地図は硬い線ではなくイラストにするとの編集委員会の意見を踏まえ、次はイラストを描いてもらえる人探しです。
担当課からは3000部を作るため、予算の都合から2色刷りと言われる始末。
予算も時間もない悪条件でイラストを描いてもらえる方は、なかなかいませんでした。
 探しあぐねた結果、私の絵本「そらとぶペンギン」の絵を描いてくださったRyu.Nさんにお願いしてみました。
私の長女が入院中に病棟で顔見知りになった方ですが、お役に立てるのならと喜んで引き受けてくださいました。
 Ryu.Nさんが府中市内の風景を写生し、地図を描き、修正を繰り返しながら、3ヶ月ほどで印刷に入りましたが、この方がいなかったら、味気ないバリアフリーマップになっていたと思います。

 みなさんのご協力があってできたバリアフリーマップですが、時間や予算の制約もあり、完成度は決して高くない仕上がりです。
 そのため、更新を繰り返しながら完成度を上げてもらいたい、また「お勧めのお店」も、もっと増やしてもらいたいと願ってましたが、それも叶わず今日に至っています。

 今回、元号が変わるタイミングで、府中市の新しいバリアフリーマップを「act634府中」が2年をかけて作成します。
前回のものよりも、何倍、何十倍も素晴らしい取組みになることを期待していますし、おそらく、そうなるでしょう。

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