ママのおまじない(no.101〜no.105)

この「ママのおまじない」は、心臓病の子どものための保育教室『そらとぶペンギン』に通っていた生徒が小学生となり、そのお母さんが2004年から2007年まで、『そらとぶペンギン』のサイトに掲載していたものです。

101.春の匂いと成長したところ

三寒四温とは、よく言ったもので、冷え込む日と暖かな日が交互にきている。
こうして春に近づいているんだね~と思う今日この頃。
毎日、決まった時間にゆきのお迎えで学校に行っている私。
今日も自転車で、近道をして、植木場(売り物の植木を育てている畑)を通っていった。

毎日、通っていてもなにも感じなかったのに、
今日は、いい香りが漂っていた。
「う~ん、なんの匂い?」
どうも、緑の香りというか、土の匂いというか・・・

そう、春の匂い!木々が芽吹く匂いなのだ。
春は、もう来ているのね。

その夜、6年生のおにいちゃんが、「この6年間で、ぼくが成長したところを言ってみて。」と言うのだ。
私は、「泣かなくなったこと」
「人前で話すのが苦手なのに、放送委員会に入ってがんばったこと」をあげた。
なんとなく納得がいかなかった様子だったけど、

今度は、私が、「じゃあ、ママがこの6年間で成長したことは?」と聞いてみた。
「年をとった(笑)」
「脂肪がついた(笑)」とふざけていたが、
そのあと、台所に来て、
「ママは、ぼくが幼稚園のときに比べたら、積極的になったよ。よく学校に来たり、役員やったりしてさ。」
と言って、自分の部屋に行ってしまった。

なんだか♪うれしい~!!!

誉められたような、認めてもらったような・・・そんな気分だった。。。

春はもうすぐだね!

102.卑屈にならず・・・

『卑屈』・・他人にへつらったり、自分を卑下したりすること。

先日、ゆきの2年生最後の保護者会があった。
保護者ひとりずつ、思い出などを話すことになった。
この2年間、たくさんの思い出やできごとがあって、
ひとつにまとめることなどできないよ~・・・と思っていた。

みなさん、「楽しく通えてよかったです」
「先生の温かなご指導、ありがとうございました」など
なごやかに進んでいった。

私の番になった。

話しはじめたら、涙が止まらなくなった。
「心臓に病気があるので、小学校生活はどうなるかと、とても不安でした。
けど、このクラスのお友達と先生のおかげで、ゆきは、卑屈になることなく楽しく過ごすことができました。」
と話していた。

「卑屈」・・・この言葉がでたことには、自分でも驚いた。
たぶん、ゆきがというより、私自身の最大の課題なのかもしれない。
自分が、ゆきが、まわりの誰かより、劣っていて、低くみている、
そして「どうせ私は・・」という気持ちにもなっている。

これからは、卑屈にならず、自分の歩く道をただひたすらに進んでいきたい。
そして、今のこんな気持ちも忘れることなく、笑っていきたい。

そんなことを、強く思った最後の保護者会だった。

103.卒業

もう3月の半ばになってしまった。
来週は、おにいちゃんの卒業式。
長かった6年間。

先日、六年生全員と先生方と保護者で、「お別れ会」があった。
ひとりひとり、手を挙げ、中学生にあたっての目標を言った。
皆、「部活、がんばります」とか「英語、やりたいです」とか・・・なのに。
おにいちゃんは、なぜか・・・

『テキパキ行動したいです!』

笑った~いつも私に言われていることじゃないかっ。
・ ・・いいよ、いいよ、今のままで十分だよ、おにいちゃん。

そう言えば、学校に行きたくないということもあったな。
きっと私の知らないところで、たくさん、もがいて、苦しんだこともあっただろう。

ゆきの手術、入院、就園、就学などで躍起になっている母を横目に、彼は何を感じ、何を思っていたのだろう。
私自身、おにいちゃんには、いつも後ろめたさと期待と反省が山のようにあって、

かなり重かったよね。

そんな思いとももう卒業・・・
来週は、きっとたくさん泣いちゃうだろうな、私。。。

104.E区分のユウウツ

ゆきの終了式、おにいちゃんの卒業式も無事に終わり、
春休みに入った。
ひたすら、だらり~んモードの子どもたち。

昨日は、心臓の外来日だった。
先生に聞きたいことがたくさんあった。
運動管理表も書いてもらいたいし・・・と気合いを入れて、病院へ。

運動管理表は、昨年と同じ、「E区分」(他の子とすべて同じ運動をしていい)だった。

この「E区分」が実にくせ者なのだ

頻脈もあるし、チアノーゼも残っているゆきなのに、なぜE区分???

主治医の先生曰く、
「CやD区分にすると、学校によっては、怖がって、なにも運動をさせてもらえないこともある」とのこと。

う~ん、それもわかるし、少しでもゆきに無理ない程度は運動してもらいたいけど・・・

でも、以前の養護の先生にこんなことを言われた。
「では、みんなと同じようにしていいのですね。
ずいぶん、お母さんのお話と管理表の評価が違う気がしますけど・・・」

実際のゆきと管理表の「E区分」。
このギャップを埋めるのは、ゆきが自分で自分の体調をきちんと伝えられることと、
それと、母親の私がゆきの現状のアピールというか、売り込みというか・・・
そんなところにかかっている気がする。
クラス替えもあるし、なにより担任の先生も変わる。

なんだか、気が重い春なのであった。

105.新学期

新学期が始まって、1週間。
おにいちゃんは、中学生。
ゆきは、3年生。
ふたりとも、少々お疲れ気味。

ゆきは、今度は20代の男の先生。
昨年度、算数の少人数の授業でお世話になった体育会系の先生だ。

先生が代わると、また一からゆきのことを説明せねばならない。

自分のことではなくて、子どものことを、
しかも先生の立場やキャラクターも考えながら、
お願いや理解してもらうことって、かなりエネルギーが必要なのだ。

この時期、先生もとてもお忙しいようで、なかなかお話できる機会がない。
でも、遠足ももうすぐだし、体育のこともお話ししたいし、
この原稿が打ち終わったら、学校に行ってみようかな・・・

おにいちゃんもゆきも、時間とともに新しい生活に慣れるだろう。
でも、私は、いつまでたっても、先生と話すのに、慣れることはないだろうな・・・

ドキドキ・・・

私の新学期も始まったばかり・・・


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