山上ビルのコピー

障がい者総合支援施設

私が理事をしていた障がい者の作業所では、「親の亡き後」が年を追うごとに大きな課題となっていました。「障がいのある子どもの行く末が気になってしょうがない。なんとかグループホームを造ってもらえないだろうか」
私に対しても建設の依頼がありましたが、個人で簡単に建てられるようなものでもなく、ズルズルと時が経過しました。

数年経ち、待ったなしの状況から、具体的な検討を始めざるを得なくなりました。
障がい者のグループホームを建設するにあたり、いかに入居者の家賃を低く抑えることができるかが課題です。
様々な補助金や手立てなどを作業所と一緒に調査・検討した結果、私が建物をスケルトンで建設し、作業所を運営している社会福祉法人が内装を整備することで解決できることがわかりました。
こうすれば、入居者の家賃を抑えるだけでなく、運営面でも法人に任せることで、適切な支援や信頼性にも繋がります。
私にとって、依然リスクがなくなったわけではありませんが。

竣工までの一年間、複数の役所との交渉や調整が、想像以上に骨が折れることを知りました。
また、毎週のように行った設計士、現場監督、設備関連責任者との打ち合わせでは、この建物のコンセプトも確認しながら、細かな点にも妥協しないプロの横顔を垣間見ることもできました。

障がい者福祉でも…障害者福祉だからこそ、おしゃれでカッコいいものにしたいと考えました。外観は都会的なマンションでも、内装は木と漆喰に模した落ち着いたデザインにしました。

1階は生活相談支援センターとヘルパー事業所、2階は身体障がい、知的障がいの方のショートステイ、3階は女性、4階は男性の知的重度障がいの方のグループホームです。

グループホームには、各階にそれぞれのプライベートルームとして個室が5つあり、広いリビングでは食事をしたり、くつろいで過ごすことができます。お風呂は、一人入るとお湯を抜くようにしています。そのため浴槽がふたつ用意されています。

他に洗面所、洗濯室、職員の事務室など、快適空間とスムーズな支援ができるような造りになっています。

2階のショートステイもほぼ同様の造りになっていますが、こちらのお風呂場には、身体に障がいのある方でも入れるように、リフトがついています。

過去に障がい者施設で起きた事件を考えると、セキュリティをどのように構築するかが課題でした。
業者も含め検討した結果、1階のエレベーターホール、エレベーター脇に3つのインターホンを取り付け、訪問者には訪問先の階の職員を呼び出し、職員がエレベーターを操作しますが、目的の階以外には行けない仕組みになっています。

竣工から3年経ちますが、過去の凄惨な事件以来、宿泊を伴う障がい者支援の仕事は敬遠されがちです。
そのような中でも若い職員が精力的に働く姿が眩しく感じます。
障がいのある方が地域で、いつまでも暮らし続けることの意義を広く知ってもらいたいと思います。

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