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続・脳科学の未来(4)コネクトームという概念

神経系のそれぞれの場所に特徴ある神経回路、時には同じ種類のニューロンの仲間が作る繰り返し回路が存在していることは、カハールの時代から容易に想定されていたものだ。そして、そのような特徴的な神経回路も別の場所にある神経回路と神経線維により長距離間をつながっていたりすることも、仮説というより、むしろ当然のこととして認識されていたはずである。

例えば、目の網膜には特徴的な神経回路があるし、網膜から伸びている細長い視神経(軸索の束)は中脳や視床にある別の神経回路につながっている。更に視床から伸びる神経線維は、大脳の後部にある視覚野につながる。脳全体の神経回路ネットワークはこのように局所的な神経回路とそれぞれを接続する神経の総体であるという認識である。

つまり、コネクトームという概念は直観的には誰もが容易に想定できたものである。これは、ちょうど、遺伝子という概念が熟成されてきた過程で、ひとつの生物種が多数の遺伝子を持つ全体像の存在ということを誰もが思っていたことと同じである。ただ、「ゲノム」という単語が存在していなかった、そういう全体像を実際に研究してみようという姿勢や技術がなかったということに過ぎないのである。

したがって「コネクトーム」という単語も、技術開発や知識の蓄積に伴い、解明に向かって研究しようとする必要性からでててきた一つのキャンペーンフレーズのようなものだ。

(1週間に1回程度のペースで記事を出します)


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