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バンドマンが初めてHIP HOPのライブに行った話〜THA BLUE HERB@宇都宮〜

こんにちは。結成18年、ロックバンド「ウラニーノ」のボーカル山岸賢介です。

40手前、ここまでバンドをやってると「続けてるやつらはだいたい友達」みたいになってきたが、ラッパーの友達はいない。そう。悪そうなやつらとはだいたい友達じゃない。バンドマンとラッパー、決して敬遠し合っているわけではないと思うが、積極的に交流もしない。接点がさほどない。というのが実情である。

そんなバンドマンのぼくが、初めてHIP HOPのライブに行ってきた。お目当てはTHA BLUE HERB。日本のHIP HOPを牽引するレジェンドである。ブルーハーブにはロックミュージシャン界隈にもファンが多く、影響を受けているバンドマンもたくさんいる。ぼくもその一人で、友人のバンドマンに教えてもらって聴いたらすっかりハマった。

ちなみにぼくにブルーハーブを教えてくれたのが、

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「しあわせ」という謎のステージネームを持つ伊藤くんだ(左)。いきなり関係ない太っている友達を紹介して話が反れているように感じるかもしれないが、この伊藤くん、ちょっと頭の片隅に入れておいてほしい。片隅に収まるような体型ではないが。

さて、ブルーハーブは2枚組の新譜をリリースして現在はツアーの真っ最中。この2枚組CD、その名も「THA BLUE HERB」が素晴らしすぎて相当聴き込んだぼくは、今こそライブに行ってみたいと思ったわけである。しかし、東京のリキッドルームはすでに売り切れ。18年やってるとバンドマンのライブだったら何かしらの関係者ルートで入れたりするもんなのであるが(よくない)、さすがにブルーハーブは無理である。そもそもそんな入り方したら絶対にボスに怒られる!ぼくはただのファンなのだ。ぼくは宇都宮公演のチケットを買った。初のHIP HOPのライブは、同時に初の遠征となったのである。

いよいよ当日、チケット握りしめて宇都宮へ。緊張する。お客さん、こわそうな人たくさんいるのかな。カツアゲされないかな。1万円札は靴下の中に隠しておいた方がいいかな、と池袋に行く中学生のようにビビりながら向かう。考えてみればもう39才である。被害に遭うとしたらカツアゲではなく、カテゴライズとしてはただの「オヤジ狩り」だ。

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緊張しすぎて1時間も早く会場に着く。まるでセンター試験当日の受験生である。本来、自分のライブの時も入り時間に対してこれくらいのストイックさで臨まなくてはいけない。

そしてオープン。客層は思ったほどこわそうではなく、サラリーマンっぽい人もいれば、バンドマンっぽい人もいる。もちろん、こわそうな人も多少いる。しかし考えてみればゴリゴリのメタル、パンク、メロコア系のバンドの客層の方が見た目はこわそうかもしれない。そして8〜9割が男である。いつも後ろに女の子がいたら見えづらいかなと気を使うが、目の前に大男。なんならぼくが見えない。

この日はオープニングアクトとして宇都宮で活動する「松波」が出演。バンドセットで2MC。これがとてもよかった。サウンドはレッチリみたいでかっこいいし、兄弟だというフロント2人のキャラが素敵だった。少々自虐的なMCと地元愛にとても好感を持った。客席には「友達がブルーハーブの前座やるから応援しに行こうぜ!」的なノリで来たような一団もいて、これがまたあたたかくてよかった。こういう地元の空気やノリが見えるのは地方公演の醍醐味だなと思った。

そしてブルーハーブの登場。DJ DYEが先にステージに登場し音を鳴らし始める。隣にいた専門学校生っぽい若者が興奮して「おお!ボスと一緒にMVに出てる人だ!」と言っている。いや、メンバーだろうと心の中でつっこむ。このDJ DYEがまたかっこいい。一言も話さないが存在感がクール。絶対モテる。

そしてボスが出てきた!本物だ!かっこいい!空気が変わる!まさにカリスマ。「元気だったかい宇都宮のジャンキーたち!」みたいなMCに、宇都宮の地元民でもジャンキーでもないぼくが「おー!」と拳を上げて応えていた。

あまり内容について詳しく触れるとネタバレになるので避けるが、ボスはラッパーとかバンドマンとかそんな垣根は一瞬でぶっ壊してくれた気がした。HIP HOPというジャンルではあるが、ボスが紡ぐ言葉は、ラッパーにもバンドマンにもサラリーマンにも公務員にも主婦にも向かっていた。そしてその場にいた誰にとってもリアルだった。

アンコールはなし、途中ボスが一回引っ込んでみんなで待つという謎の時間はあったが、ボス楽屋で何してるのかなって想像してその時間さえ愛おしかった。素晴らしいライブだった。

さて、ここからは余談である。

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再登場。ぼくにブルーハーブを教えてくれた「しあわせ」こと伊藤くん。彼はHeartsというライブハウスのスタッフである。Heartsの店長としあわせは、ブルーハーブが大好きでブルーハーブを西川口Heartsに呼んで公演を打ったことがあるのだ。

大好きなブルーハーブが来る。気合いを入れて接待モードのしあわせはメンバーの送迎を自分の車で行ったそうだ。当時のしあわせの車、ぼくも乗ったことがあるが、ボロボロの軽自動車。ボス、あれによく乗ってくれたなと思うし、まずよく乗せようと思ったなと思う。

「お前、事故ったら殺すぞ」という冗談か本気かわからないボスのプレッシャーを後部座席から受けながら無事に送り届けたしあわせであったが、この時のボスのセリフが壮大な前フリだったかのように、その半年後しあわせは首都高で単独事故を起こし、この軽自動車は横転し大破する(しあわせは奇跡的に無傷)。それがもしボスが乗っている時だったら、ぼくが観に行った宇都宮のライブもなかったかもしれないと考えると、より奇跡に思えた宇都宮の夜であった。

初めてのHIP HOPのライブ。普段交わらない異ジャンルだからと構えてしまった自分の器の小ささを知った。そしてボスはMCで言った。ぼくを含め初めてブルーハーブのライブに来る新しいお客さんに対して、「ずっと待ってたぜ」と。かっこいい。かっこよすぎる。また絶対に行きたい。あの言葉を浴びに。

最後に韻を踏んで終わっておこう。しあわせ、まさに死と隣り合わせ。


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ロックバンド「ウラニーノ」のヴォーカル・ギター担当。バンドと関係あったりなかったり、いろいろなことをゆるくレポートします。ライブハウスHeartsにて2007年から毎月執筆しているコラムのアーカイブは第1回目から順に掲載中。当時を振り返り「後記」も加筆しています。
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