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少女ロボット

夕方の五時の鐘が鳴る頃になると、駅前の広場に人だかりができる。

 少女型のロボットがモダンバレエを踊りに来るのだ。観客を魅了するダイナミックな動きに人々は夢中になった。時には華麗にジャンプもする。このロボットが何の目的で踊り、作られたのか誰も知らない。ある人は言う。「続ける事の大切さを訴えるためだ」と。他の人は「乾いた現代人の心を潤すため」だと言う。様々な憶測が囁かれ、謎が謎を呼びお客さんは増え続けた。

今日も少女ロボットは踊り続ける。いつの間にか、ロボットの周りには商売目当ての人間が集まっていた。動画を撮るもの。生写真を売るもの。グッズを売るもの。見物料を要求するもの。一日で沢山のお金が動いた。
彼女をひと目見ようと他所の街からやって来る者も現れた。街の人々は少女ロボットのステージの時間を一日に三回に増やそうと提案した。少女ロボットもその提案を受け入れ踊り続けた。

少女ロボットを中心に街は変わりはじめた。街のビルボードには彼女の写真が飾られ、新たなグッズも大量に生産され観光収入で街は潤った。観光客は増加の一途をたどり、彼女のステージの回数も増えていった。
少女ロボットのステージの回数が一日五回になった頃から、彼女は急に動かなくなってしまった。困った街の人は、踊り子を雇いダンスを踊らせた。しかし、人間は残業手当に加え各種保険の加入や高額なギャラを求めた。

人件費の増加に悩んだ街の人は、動かなくなった少女ロボットのマスクを交代で被り踊る様になった。ロボットを壊してしまった罪の意識からお互いを監視しあった。
そのおかげで街の住人は皆踊りが得意になり、ダンススクールも増えた。この街出身の踊り子は全世界で活躍するようになった。


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