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【考察】あしたのジョー2と出崎統演出

 最近「Netflix」でテレビシリーズの「あしたのジョー2」を一気に全話見ました。監督は昭和のアニメの演出に革命をもたらした出崎統。もう何十年も昔のアニメなのに、その奇抜な演出は見るものを今も魅了します。

 あしたのジョーは、少年院あがりの少年「矢吹ジョー」が、ボクシングジムの会長「丹下段平」と運命的に出会い、泪橋の住民たちに支えられ、ボクシングでライバルの「力石徹」達と死闘を繰り広げる物語だ。

 何故、出崎アニメはこんなにも魅力的なのでしょうか?今日はその出崎演出の魅力の一部を紹介させて頂きます。

1.光る吐瀉物
 あしたのジョー2で、リング上で矢吹丈が吐瀉物(ゲロ)を吐くシーンがありますが、アニメで見るとこのシーン。なんと!矢吹丈は、キラキラした吐瀉物を口から吐きます。

 初めてこのシーンを見た時は衝撃を受けました。吐瀉物がキラキラ光っている。このような演出をアニメの世界に持ち込んだ監督は、今までに見たことがありません。

 汚い吐瀉物を、あえてそのまま描かずに吐瀉物に透過光処理をして、キラキラにさせたのにはどんな狙いがあったのでしょうか?。

2.人間讃歌
 あしたのジョー2は、矢吹丈の永遠のライバル「力石徹」が死んだ後の世界の話です。矢吹丈は、「力石徹」が死んでから、戦う意味を無くし抜け殻のように過ごしていましたが、トレーナーの丹下段平やドヤ街の仲間達に支えられ、再びボクシングの世界に戻ってきます。

 何度も何度も殴られても、血まみれになりながら立ち上がる矢吹丈のその姿は、リングの上でしか生きれられない男の哀しみと崇高な生き様を感じさせます。

3.アンチヒーロー
 現在のハリウッドでは派手なCGを使った、ヒーロー映画がとても人気ですが矢吹丈の様に、哀しい眼をしたヒーローは見た事がありません。

 ボロボロになりながら生きる。人間矢吹丈をせめて、アニメの中だけでも美しく描きたかった。だから、そんな願いを込めて吐瀉物に透過光処理を施したのではないかと推測されます。

4.斬新な演出
 出崎アニメはこの他にも、止め絵や、反復、画面分割と今見ても色あせない斬新な演出がたくさんあります。アニメ業界でも、影響を受けた方も多いのではないでしょうか。

ぜひ、あなただけの好きな出崎演出を探して見て下さい。

text数:約900文字

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