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降り落ちる雨は、黄金色#25

 執筆した小説に「シン・桃太郎」と言うタイトルをつけてネット上に作品を発表した。しばらくすると「いいね」が三個ついた。私は反応がもっと増えないかと思い、スマホから何回も自分のページを開いた。

 私の中では「いいね」が十個以上はいくと計算していた。しかし、現実はきびしい。私にはやはり才能がないのかもしれない。憂鬱な気持ちで佳代にこの作品を送った。すると「面白いからもっと続けなよ」と褒めてくれた。

 佳代に認められると「いいね」が百個くらいついた気分だ。嬉しくなった私はその後も、めげずに何本も短編作品を書き続けた。彼女に褒めてもらう為だけに、書き続けるモチベーションを保つことができた。 佳代は私の女神様だ。

それでも「いいね」 の平均数は三〜八個くらいだった。

短編作品を津田に送ると簡潔な感想が送られてきた。

「キャラの魅力がない」
「この短編は売り物にならない」
「これは物語とはいえない」

と辛辣な感想が送られてきた。私はそのメールを読むと一行も書けなくなってしまったが、たくさん寝てよく休んだらやる気が沸いてきた。悔しい。いつか、彼が絶賛するような作品を書いてやる。

 津田からのメールは、返信がない時がほとんどだった。私は彼に頼ることなく作品を量産するために、毎日一時間はパソコンの前に座る習慣をつけた。

 最初の頃は、テレビを見たりマンガを読んでしまったので集中することが出来なかった。私には集中する才能がないのかもしれない。

一時間は書き続けるのは無理なので、三十分は集中して書くと自分で掟を作って取り組んだ。三十分書いたら、十分休憩した。このリズムなら続けて書けそうだ。何も書けない日は絶望して自分を責め、 眠りについた。

「何も書けない。クソみたいな一日だ」

 そんな事を続けると私にある変化が起きた。それは、毎日何かしら文章を書かないと落ち着かない体質になってしまった。時計を見てもスマホを触っていても何をしていても、そわそわしてしまう。書かねばという強迫観念が頭の中に常にあった。

 自分の中の痛みを作品にしなければ、何のために傷ついたのか分からない。受けた痛みを作品に生かさなければ、私が可哀想だ。割に合わない。

 なにより、四百文字の原稿用紙をボールペンで真っ黒に埋めていくと生きている気がする。達成感をかんじた。逆に、原稿が何にも進まない日はスマホに三行ほどのメモ書きをして、執筆を諦めた。

そして、次の日は猛スピードで書き続けた。

つづく、、

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