きょうは朝から冬の雨が陰鬱に降っていて、何処にも行きたくない。

　しかし、年末のテレビは、毎日何かしらお祭りのように特番がやっている。そのため、家から出なくても退屈しないで過ごせる。

しほちゃんはテレビを見るのがすきだ。

　彼女の部屋はとても垢抜けていて、テレビを見るための最適な環境がつくられていた。白い壁紙の部屋には、シンプルな布張りのソファーが置かれていた。

　しほちゃんは、一旦ソファーに座ると動かなくなる。テレビのリモコンを操作しながら、クリスマスの特番をみる。きょうの「ちびまる子ちゃん」にはパフィーがゲスト出演していた。彼女はゲラゲラ笑いながらそれを見ていた。

　お気に入りのマグカップを片手に、冬休みの間はじっとテレビをみて過ごしていた。

まるで、外の世界に対して反抗するかのように、しほちゃんは部屋から一切出なかった。やがて、テレビに飽きるとiPhoneを少しいじると、再びソファーに座りまどろんでいた。

　彼女はおなかがすくと、両親に見つからないように台所に立ちお湯を沸かした。

しほちゃんは、毎日ぶっ倒れるまでテレビを見ている。おかげで、昼夜逆転の生活をしていた。そのせいもあり、両親と食事することは極めて稀だった。

　テーブルの上には、しほちゃん用の食事が用意されていた。彼女はその料理を電子レンジで温めた。その間に、マグカップにコーンスープの粉末を入れ、お湯を注いだ。白い湯気が立ち上り、彼女は一気のスープを飲み干した。彼女は全身リラックスした気分になった。

　再び部屋に戻り、テレビをつけた。バラエティー番組の「イッテQ」では、出川哲朗が「ワオパリス！」「ナイスヒップ！」と叫んでいた。

　サングラスをしたパリス・ヒルトンがものすごいテンションで腰を振っている映像を、彼女はしばらく眺めていた。