ケイト先生はオタク…?俺もだよ! 化学が大嫌いだった私が1冊の本によって化学と仲直りできた話
『さぁ、化学に目覚めよう 世界の見え方が変わる特別講義』(ケイト・ビバードーフ:著、梶山あゆみ:訳、山と溪谷社)が発刊されて間もなく、なんと、大手予備校講師の田中健一さんがX(旧Twitter)にて本書を激賞してくださいました。
「化学だけは生理的に無理」だった田中先生が、本書に惹かれたのはなぜ……? が気になって、本書の読みどころを語っていただきました。
どうせまた、この本もダメだろうな
皆さん、こんにちは。田中健一と申します。
今日は化学が苦手どころか大嫌いだった私が1冊の本によって化学と仲直りできた話をさせてください。
その1冊の本とはケイト・ビバードーフ著、梶山あゆみ訳『さぁ、化学に目覚めよう 世界の見え方が変わる特別講義』(以下、『~特別講義』)です。
私は若いころから勉強が好きな人間で、それが高じて予備校講師になりました。今の本業は英語講師ですが、暇つぶしに世界史や倫理の教科書を読んだり、数学の問題を解いたりしています(自分でもちょっと風変わりなのは自覚しています)。若いころには数学や物理を教えていたこともありました。
そんな私でも化学だけは苦手というか、正直に言って大嫌いでした。英語はもちろん、現代文も古文も漢文も、日本史も世界史も地理も、現代社会も倫理も政治経済も、数学も生物も物理も地学も好きなのに、化学だけは大っ嫌い!!!でした。
話は変わりますが、私は勉強と同じくらいアイドルが好きで、地元名古屋にあるSKE48劇場に通っています。劇場公演では出演メンバーの自己紹介があり、そこではそれぞれのメンバーの個性的なキャッチフレーズが披露されます。大学で化学を専攻していたチームEリーダーの佐藤佳穂さんは、
「水兵リーベ!(ぼくのかほ~!)元素記号Kはカリウムじゃなくてー?(カホリウム~)栄に降臨!理系女子!佐藤佳穂です!」
というキャッチフレーズを使っています。つい最近まで私の頭の中に残っていた化学の知識(?)はこれだけです。こんな私でも楽しく読み進められたのが『~特別講義』です。
これまでにも何度か化学の学び直しに挑戦してきました。色々な本を読もうとしました。そのたびに挫折しました。化学の何が面白いのか全然わからなかったのです。生活のあらゆる場面に関わっている重要な学問であることはわかりましたが、どうにも興味を持てなかったのです。
正直に告白します。
最初に『~特別講義』を手に取ったときも(どうせまたこの本もダメだろうな)と思っていました。
ケイト先生はオタク…? 俺もだよ!
ところが……。「はじめに」の冒頭にこうありました。
そうなんだ! 俺は、アイドルオタクだよ!
「読書とは、読者と著者との対話である」のようなことがよく言われますが、私とケイト先生との間でいきなり対話が成立したのです。化学関連の書物でこうした関係を築けたのは今回が初めてでした。そうか、ケイト先生も俺と同じオタクなんだと親近感を抱き読み進めると、次の記述にハートを鷲掴みされました。
何を言っているのかまったく意味がわからない! だがそれがいい!
理解できないけど、ケイト先生が化学のことが大好きなのはわかった!
オタクが犯しがちな過ちとして、聞き手を無視して早口でまくし立てるというのがありますが、安心してください。ケイト先生は大丈夫です。
『~特別講義』はテキサス大学准教授によるお堅い講義録ではなく、化学オタクのケイト先生が「推し」について熱く語り「布教」する本です。私はそう受け取りました。
ケイト先生は化学オタク、私はアイドルオタクと対象は異なりますが、同じオタクであることには変わりありません。私はこの共通点から生まれた親近感でついに化学への苦手意識を払しょくすることができました。
この文章を読んでくれているあなたも何かのオタクであれば(人は誰しも何かのオタクだとは思いますが)、きっとケイト先生の『~特別講義』で楽しく学ぶことができるでしょう。
心に刺さったフレーズから読んでみてほしい
ここからは『~特別講義』の構成と私が好きなところの紹介をします。
第Ⅰ部「ひと味違う化学の授業」は、化学の基礎知識を解説するパートです。この第Ⅰ部で驚かされるのが、なんかよくわからない記号とか式とか図みたいなやつが必要最小限にしか出てこないことです。
そうしたものを使わずに言葉を尽くしてていねいに説明してくれるので、私のような根っこが文系の人間にはとても馴染みやすいのです。
第Ⅱ部「化学はここにも、そこにも、どこにでも」は、化学が私たちの生活の中でどのように活躍しているのかを解説するパートです。「化学的に正しいコーヒーの淹れ方」「体内の脂肪を効率よく燃やす方法」「アルコール度数の見方」「その気にさせるムードづくり」など、興味深いテーマが山盛りです。
私が特に勉強になったのが「食器用洗剤と食洗器用洗剤」です。つい先日、食洗器用洗剤のボトルに間違えて食器用洗剤を詰め替えて妻に怒られたところだったので、まさに「自分ごと」として勉強できました(この節には、誤って食洗器に食器用洗剤を入れて「泡祭り」が開催されてしまった場合の対処法も書かれています)。
編集部の方にお願いして、下に『~特別講義』の詳細な目次を掲載してもらいました。目を通していただければ、化学が好きな人にも嫌いな人にも、心に刺さるフレーズがいくつもあると思います。
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テキサス大学で文系の学生に向けた授業を担当し、自他ともに認める化学オタクの著者(表紙写真で火を噴いている人物)が、高校から大学の教養レベルで学ぶ化学の基本原理と、日常にあふれる化学反応をわかりやすく、ユーモアたっぷりに語ります。
化学を学ぶ学生にも、学び直しをしたい大人にもおすすめの一冊です。
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