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宇宙人よりも宇宙人な、地球の生きものたち

動物といえば、どんな生き物を思い浮かべるでしょうか? 動物園にいるキリンやゾウ、ライオンなどでしょうか。じつは、これらの動物は動物全体から見れば少数派。ほとんどの動物は、背骨のない無脊椎動物=ほねなしなのです。
3月18日発売の『海のへんな生きもの事典 ありえないほねなし』(文 ひとでちゃん、イラスト ワタナベケンイチ)では、そんな知られざる動物たちの、ありえない、奇妙な世界をたっぷりとご紹介します(本記事は、同書籍のイントロダクションからの抜粋です)。

海には不思議な形、驚くような生き方をしている動物がたくさんいます。その多くが無脊椎動物と呼ばれる、背骨をもたない動物です。私たち人間を含む哺乳類や鳥、魚などの、一般的に人が〝動物〞だと思っている生きもの(脊椎動物)は、背中に体を支える背骨(脊椎)をもっています。その脊椎をもたないのが無脊椎動物。背骨がないので、私は親しみを込めて〝ほねなし〞と呼んでいます。

一般によく知られるものとしては、イカ、ヒトデ、クラゲ、カニなどがいます。でも知られているほねなしなんてほんのわずか。みなさんの知らない、ありえない! と言いたくなるような動物がたーくさんいるのです。本書では、奇想天外かつ多様で、姿形も生き方もユニークな海のほねなしの魅力をたっぷりとご紹介します。

分類学では、多細胞動物(以後、動物という)を基本的な体のつくりで約34のグループ(門)に分けます(※1、※2)。背骨をもつことが特徴の脊椎動物門は、その34の動物門のなかの1つでしかありません。残りの33動物門はすべてほねなし。背骨があるほうが珍しいのです。しかし学校の教科書などでは「脊椎動物門(哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類)のほかには、軟体動物門(イカ)と節足動物門(昆虫)があります」程度にしか紹介されていません。くやしい〜!!

でも一般的な実感としては教科書どおりだと思います。どうして世界は脊椎動物だらけのように感じるのでしょう? 理由の一つは、脊椎動物が大きくて目立つから。もう一つは、私たちが陸に住んでいるから。ほねなしの多くは小さく、そして海にいるのです。

よく考えてみると地球の表面の約7割は海。さらに海には深さもあり、平均水深は約3800m です。生きものが生息する場所として圧倒的に海は広いのです。そのため陸で見られるほねなしは全動物門の約半数。みなさんが認識しているのは昆虫、カタツムリ、ミミズぐらいでしょうか。一方、海ではほとんどすべての動物門と出会うことができます。海には奇想天外な生きものがいっぱいいる! ということです。

各動物門は、それぞれユニークな特徴をもっています。私、自分で言うのもなんですが飽き性です。そんな私が飽きない(笑)。へんてこなのがどんどん出てくる。とにかくおもしろい! 門のなかにもまた多様性があり、そのなかには例外といわれるさらにおかしなものもいたりします。

ほねなしは、骨がないからとにかく姿形がユニークです。たとえばヒトデは星形ですね(ちなみにどうして星形に進化したのか未解明です)。背骨がないどころか、顔がない、脳がない、肛門もなかったり。一方で、とても精密な毒針やガラスの体をもっていたり…。動物というと動物園で見るような、顔があって四肢があってという生きものを連想しがちな私たちの常識では、とても生きものとは思えない姿のものがたくさんいます。

また、生き方もなんだってあり! ちぎれて再生なんてお手のもの、雌雄同体なんて普通、一生その場から動かないという生き方を選んだものもいたり。なんだか常識や〝ねばならない〞にとらわれている私たちに、生きものとして生きるとは本来どういうことかを問いかけてくれているようです。どんな形でも生きて子孫を残そうとする、たくましい姿がそこにあります。

本書ではほねなしの、ありえない姿形、ありえない生態、ありえない性の話をたくさんピックアップしてご紹介しています。さらに、Part4では全34動物門を解説したほねなし図鑑を掲載。一般書で全動物門を紹介するなんて、前代未聞の画期的なことだと自負しております。海の生きものが好きという方でも、初めて見聞きする動物がいるかもしれません。

海のほねなしは本当に自由で多様です。そんな形ありなの? そんな生き方ありなの? とその自由奔放さに度肝を抜かれることがもはや快感となってしまいました。そして知れば知るほど私自身の生き方も自由になり(結果、「ひとでちゃん」と勝手に名乗り、このような本を書くに至りました)、生きものを一つ認識するたびに私の世界は豊かになりました。そんな体験をぜひあなたにも。

さぁ、ここからあなたの知らない本当の動物たちのお話が始まります。めくるめくほねなしたちの奇妙な世界へようこそ。あなたもほねなしに脳みそ溶かされちゃってください!

※1 門は動物を分類する最も大きな分類階級。動物で基本的に使われる分類階級は大きいほうから界・門・綱・目・科・属・種の7段階があります。
※2 動物界をいくつの門に分けるかは研究者によって意見が異なります(だいたい30〜35)。本書では34門とします。なお、この分類は今後も新たな発見により変わっていくものです。


ヘンなことってすばらしい!
宇宙人よりも宇宙人な”ほねなし”のありえない生きざま

内容紹介

「口と肛門が一緒」
「頭から足が生えている」
「体のほとんどが生殖器」
「腕一本から体全体が再生」
「あるとき、自分が2つに分裂」

まさに“ありえない”のオンパレード!
宇宙人より宇宙人な生きもの。それが地球にいる無脊椎動物こと“ほねなし”です。

ほねなしは、背骨がないから姿形も生き方も自由自在! なんだってあり! 
ユニークな形態や仰天するような生態をもつ海のほねなしの魅力を、親しみやすいイラストをまじえてたっぷりとご紹介します。

最終章では全34動物門をイラストつきで解説。じつは約34に分けられる動物のグループのうち、33はすべてほねなし。つまり、ほとんどの動物はほねなしなのです。

驚くような生きざまの数々に、あなたの動物観も変わるかも!?
めくるめくほねなしたちの奇妙な世界へようこそ!

著者紹介

文・イラスト(part4) ひとでちゃん
1988年、栃木県生まれ。つくば市を拠点とする自然科学教育普及団体「地球レーベル」代表。ヒトデ研究者。新潟大学理学部生物学科卒業後、ヒトデの研究をすべく東京大学大学院理学系研究科へ進学。博士前期課程を修了し、公益財団法人水産無脊椎動物研究所に。退所後、海の生きものの魅力を伝えるための活動を開始。イベント講師や情報発信、イラストの制作などを精力的に行う。

イラスト ワタナベケンイチ
1976年2月18日生まれ。イラストレーター。右利き。1996年より立花文穂を師事。1999年西瓜糖にて初個展。2000年H Bファイルコンペ藤枝リュウジ大賞受賞。雑誌、広告、演劇ポスター等のイラストや、絵本、書籍などの装画・挿画を手がける。主な書籍に『暇と退屈の倫理学』國分功一郎著(太田出版)、『ギケイキ1・2・3』町田康著(河出書房新社)、『まいにちをよくする500の言葉』松浦弥太郎著(PHP研究所)など多数。





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