10ホールズハーモニカで『Rollin' And Tumblin'』を演奏するためのレクチャー動画を観ました


先日知人から「これをハーモニカで吹くのが目標」と聞いた『Rollin' And Tumblin'』、タイトルをみてすぐに歌えたりはしなかったのですが、マディ・ウォーターズだけではなくて、クリームとかクラプトンの演奏からも聴いて知った、とても有名なやつでした!


もちろん、もとのマディ・ウォーターズによるものも、やっぱり、すっかり、聞き馴染み、あるある。

なるほどこれか〜。


はじめこのお話を聞いた折りには、「ブルース(ブルーズ)は、おもにふたつの和音をまだらに行き来しつつ『ここかな?』というところと『ここでひと区切り』というところにみっつめの和音を使う」っていうやり方で演奏に参加出来るっていうよ」「その和音っていうのは I・IV・V っていう呼び名がついてて、曲が key of C でハーモニカでやるということなら、ひとまずやっぱり Key of C のハーモニカを選べば大丈夫だよ」という世間話をしたりもしていたのですが。

でもこの曲・この演奏は、そこで話した内容にあったような「ブルース進行」なんていうフレームには沿っていない・準拠していない曲の枠組みや進行じゃなくて、それよりももっとシンプルなものでした。

この『Rollin' And Tumblin'』について(分析的なことなしの)印象だけで書いてみると、曲や演奏の骨組みに「ブルース進行」というふうに紹介したような構造があって、たとえば「その構造をなぞるように振る舞えば演奏になんとなくの振り付けがつく」というふうなものではないみたいです。

それとはどう違っているかというと(例えば、ずいぶん実務的な話になるのですが)これはスライドギターでのボトルネックを用いた演奏だとか、ある種のテクニックにおける10ホールズハーモニカの演奏だとか、そいういう、わりと単純で少し癖(:きっと魅力的な癖)もあるような動きと一緒になって良い感じに運動するような種類のもので、これは「ブルースの12小節進行」なんかよりも、もっとさらにシンプルな構造で、もっと直接的な感覚が曲のかたちになっているというふうなことかもしれません。

だから、これに取り組むにあたってはいったん「ブルースの12小節進行」みたいな話はいったん脇に置いておいて、あれはまた今度の目的や楽しみや、別の曲のために使ってくださいね、てところで。

で、さて。

そんななか、この時代に、スライドギターやハーモニカのための「Rollin' And Tumblin' 」の解説動画が無いなんてことはないんだろうな…と検索してみたら、出てきましたよ出てきましたよ。


■動画1


まずこちらを。



この動画も、クリーム/エリック・クラプトンがやった雰囲気をもとにしたものです。

ご存じの話も少なくないかもしれないけど、せっかくの機会ということで用語なんかも紹介しますね。

これの動画の初めの方で「C調ハーモニカのセカンドポジションで」と言ってるのは、C調(ハ長調)じゃない曲にあえてC調ハーモニカを使うって方策のことです。

それは何でかっていうと、演奏にあたって口がより忙しくなったとしても、曲とは別の調の向けのハーモニカに備わった音の並びを活かしたほうが演奏が面白くなるから(これは旋律に関しても、和音に関しても、それぞれに着眼点があります)というふうな理由などでそういうことがされます。それで、そういうやり方にはパターンもあって、それにおける曲の調とハーモニカの調の組み合わせで呼び名がついていたりもするのです。

それで、一番素直な組み合わせとして曲の Key of C とハーモニカの Key of C とを組み合わせるのに対して、「曲がCのときにハーモニカはF」とか「曲はGのときハーモニカはC」というパターンが、この動画で用いられている「セカンドポジション」というふうにいわれています。「この動画では『Rollin' And Tumblin'』を Key of Gで演るよ、セカンドポジションの吹き方を活用するからハーモニカは key of C を用意してくださいね」というのがこの、出だし部分の話です。

また、動画解説の中で「タングブロック」っていってるのは、たとえば「大きめに咥えて4穴を同時に吹くけど、並んだうち真ん中の2穴は舌の先で塞いで両側の音しか出さない」とか(:今回はこれです)、「同時に3穴を吹ける口の形にするのだけど左の2穴は舌で塞いでおいて、残った右の穴から音を出す間にも音を出さないままでとっておけるようにする。それで、咥えた右端の穴からの音ではひと繋がりの旋律を吹くけれど、左側2音はそのあいだに間欠的に開けたり塞いだりをやることで伴奏や合いの手などを表現して立体的な演奏にする」とか、そういうやりかたのことです。

もしタングブロックに取り組むのが目的でなかったら、今回はタングブロックのところもつなげてちょうど良い旋律になる1音ずつだけを吹いて簡易化するという楽しみ方もありだと思います。

また、逆に、4穴のタングブロックならその4穴全部、3穴のタングブロックならその3穴の間にある音全部を同時に使って吹き吸いして演奏してしまうのも、にぎやかで楽しいかもしれないです。

以上のようなことがあって、この動画の他の部分はもしかしたら口の訓練がされてないと同じように真似してみるのはキツいかもしれないけど、でも3:30ころからのリフの部分(穴番号の並びで 2322232 と演奏するところ)は、ちょっと同じ感じが楽しめるかもしれません。だから、ぜひチャレンジしてみると良いんじゃないかと思います。

(ただ、「3穴を素早い動きのなかで吸って下げてbシの音までベントしてね」ということになってるのと、そのあとに「2穴吸音でbシを演奏した次に2穴吸音ベンドでファをあらためて演奏してね」となっているのは大変だし、そのさらに後に「3穴吸音ベンドでbシを演奏するよ」だけど、この吸音ベンドで出すファや、とくにbシの音は、歪んだ質感でここがまたブルースっぽくてかっこいいし(:このあたりがさっき書いたセカンドポジションで演奏する美点のひとつみたいです。セカンドポジションにすると、演奏するフレーズ上に、吸音でのキメの音がたくさん出てくるようになるのですね)自分で楽しむことに関しては動画ほど早く演奏する必要はないんだし、楽しみがいがあるあたりだと思います。)

ここでは、ダックコールのときにも使った、手の開閉のワウも使えます。これもブルースっぽい! 楽しい!


■動画2


こちらの動画は、同じくC調のハーモニカで吹くためのレクチャーをしてくれていて、キーとポジションの設定も同じです。

こちらの動画では、動画1でタングブロックを使った厚みのある雰囲気を出していた部分を、単音の移動する旋律にアレンジしています。取り組みやすいのはこちらかもしれないけど、こちらを試したあとで両者をくらべてみると、「和音でやる動画1のアプローチもできたら楽しいだろうなあ」みたいな気持ちになったりもします。

用意してくれているチャート(譜面)の流儀もそれぞれですね。

こちらの動画の3:30くらいでは、4穴吸のレを、ベンドしながらレよりも低い音から入ってきて、レまで上がったと思ったらその次の音が2穴吸音のソということで、あいだの3番をかすめる音がしてもいいからレに上がってレからソまで雰囲気良く落ちる感じを、ていねいに見せてくれています。

その他にも動画2の方では、リフをハーモニカで演って歌のところを自分でやるときの感じとか、フレーズの部分に注目させてくれるところとかといった感じで、とくに後半ではさまざまな視点で丁寧な解説もしてくれています。

ふたつの動画それぞれを見比べられて、一層「なるほど~~~!」っていう感じが深まりました。


良い機会をいただいたな。



(おわり)

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