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10-MAY-2021 金属スネアドラムシェルの切断と整形

(01) 4月某日、ツイッターで教えて貰った中古楽器店のジャンク箱情報に気にもそぞろ、月末のあれにいくらそれにいくら、足して引いて…よしそれ行け、という感じで、翌日買いに出かけました。

このシリーズのドラムシェルは、もともと開けられている部品取り付け穴が他一般よりも大きめで、その部品が廃番・入手困難になった今、こうやって楽器屋さんのジャンク品コーナーに置かれているというのが経緯で、ジャンク品コーナーに置かれるともなればシェル自体が表面なり形状なりがボロボロの状態でもおかしくないわけなのですが、これはすごく綺麗です。

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立派なドラムシェルです。この会社(YAMAHA製です)はここにロゴとシリアル番号を残してくれているので、「やるのか? 本当にやる気なのか!?」というプレッシャーもちょっと増す感じもありつつ…。

(しかし、このメーカーの金属胴は、中央横方向に補強の窪みがしぼってある構造が、胴の内側が山になるようにつくられていて、今回はそこがまた大きな魅力だったのです。「何でも良かった」てわけじゃないんですよ、本当ですよ…。)

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おそろしさを覚えつつ(木製胴はさんざんというくらい切ったり削ったりしたいるのでいまさら不遜もなにもないといえばないのですけれども…)、やります。工具はグラインダーです。

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(ンッ!)

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(ンンンンッ!!!)

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一周してしまいました。

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うちにあった棒ヤスリをあててみたらスイスイとバリ取りをすることができました。銅の薄板の、ちょうど良い硬さとちょうど良い柔らかさを感じました。

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さて、この中央にあった「センタービード」という呼称のしぼり・継ぎ目・補強の部分ですが、すでにあるここの形状を活かして端の処理をすれば、経験がない僕でも、いくらか作業がしやすいのではないだろうか? という期待からこういう切り方になっています。

もともと2〜3インチ深さのピッコロ・金属胴・スネアドラムへの関心があったのですが、そのような仕様の製品は(さらに他の要素とあわせて考えると一層そうなのですが)実際にはあまりありません。それで「いつかこういうことをしてみたいな」というふうには考えていたのです。

ただ、金属胴となると、木製胴などとは「空いた取り付け穴を簡単には埋められない」とか「木製胴よりずっと薄いので部品の取り付けも加工方法も同じように扱えない部分がある」というような違いがあり(その他にも表面処理としてメッキが採用されていたりすると素人個人にはそこが手を出せない要素になったりというふうな、機械的な要素以外の話もまた少なくないのですが、この胴に関しては、透明塗料が薄く塗布されているということはあっても基本的にはただの1mm半くらいの薄い銅板ですから、今回はオーケーです)、既製品を流用するといっても制限がありすぎて面白みがちょっと少ないのではないかとかいうことも起こりがちで、なかなか実際の機会はないままでした。

また、スネアドラムには一般に表と裏の作りの差があって、裏側にはスネアワイヤという、皮に当てて雑音をうまい具合に付加しようという部材があるのですが、この胴では、それの当たり具合がよりそれらしくなるように、胴の縁に、通り道・逃げ道のような加工が加えられています(「スネアベッド」とよばれている加工です)。

この金属シェルのスネアベッドを自分ではうまく作れる気がとてもしていなかったので、しかし、それは無いなら無いでそういう個性として「アリ」なものですから、「もしいつか自分がこういうふうに金属胴のスネアドラムを扱うことになってもスネアベッドはなしだろうなー」というふうにも考えていました。

ところが、この胴の下半分を活かせば、もともとのスネアベッドを残したままで、チャレンジできる! というのが今回の大きなトピックのひとつでありまして。

同じスネアベッド形状が今回のものに適切か? という問題はもちろん残るのですが(ベッドのある部分とない部分とで段差が生じているので、ネジで皮の張り具合を調整するときに、皮に目立ってシワが寄って具合が良くないのを避けようとすると、全体としてのチューニングできる範囲が限定されたものになる場合があったり、気配りが多めに必要になったりすることがあります)、まずはやっぱり、スネアベッド付きでやってみたい、ブラジルのサンバ分野のスネアドラムに「 カイシャ」というのがあるのですが、 カイシャとは違う感じの、ドラムキットの流れにあるスネアドラムとしてやってみたいという気持ちがあります。 

さらには(これは実際に進めてみるまで確認できなかったことですが)もともとの取り付け穴がドラムヘッド(:皮)で覆われて隠れてしまうということも分かり、これもとてもとても好都合でした。見た目の問題もありますが、胴にあけられた穴は楽器全体としては空気穴として作用しますが、開いていれば開いているなりの、開いていないなら開いていないなりのそれぞれの音になるので、まずは開いていない方の音で確認できるほうが、やっぱり嬉しいなと思って。

(…ね。「この胴だから」という理由が結構あるものでしょう? 「何でも良かった」「ただ切ってみたかった」「適当にそっちとこっちでくっつけてやりたかったのだ」ということでもないんです。だからどうか「あっ、楽器に可哀想なことをして〜〜!」なんてお思いになられなせんように!! よろしくお願いいたしますよ?? よろしくお願いたします! (:自分に言い聞かせてたりして…(笑)。))

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さて、端をぐるっとペンチで掴んで少しずつ内側に曲げるということを、隣へ隣へと繋げていきながら、一周二周とすすんでいきます。掴む口があまり大きくても細かく曲げられませんから、ペンチ自体も持ち手もそう大きくないものです。結構疲れます。作業用の手袋もしたのですが、手のひらにマメができてしまいました。

もともとのセンタービードの形状を利用するとはいえ、一直線上で曲げるということは第一に大切なことなので、念のため、板を当てて進めていきました。

あと、ペンチの口には滑り止めのギザギザがついていますからそれが傷めないように紙を挟んでみたりしてはじめています。

しかし実際には、何周目からかはもう少し口の細いやっとこを紙を挟まず使ったみたり、曲げた部分が平面に近くなるようにいったん曲げ戻してみたり、折り山がもう少し鋭角にならないものか、一様にならないものかと考えてみたり、迷いながら進みました。

というわけで、ここまでが作業1日目かな? 勢いづいてというか、勢いづけたくてというかで、けっこう長く取り掛かっていました。

このあとは、散発的に、さらに何日かにわけて進んでいきました。

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というわけで、ここまでペンチで進めていったのですが、折り山が十分には整わず、「やはりこういう作業は、鍛金というのか、トンカチ作業だろうか?」と、先ずは木槌を試してみるのですが、これが全然ダメで。

思い当たるところはいくつかあるのですが、このときはあきらめて、ペンチ作業に戻って、加工を続けました。

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さて、ちょっとずつ、何日か何回か作業して一応それっぽくなってきたので、用意しておいた 14"カイシャ用のフープ一式を使って仮組みしてみました。「はやる気持ち」って感じです。

感想は…残念! これではダメですね、という感じです。折り山は緩やかすぎますし、山の稜線が綺麗な円とはいえず、上下に左右に、ブレている幅が許容範囲外というふうです。

でも、組めたのは嬉しい。気持ちが盛り上がります。

あと、ペンチでの過酷そうな作業で、端部が避けたり切れたりせずにここまでは進めたのもホッとしました。

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というわけで、初手で選択肢から外していた、より難しそうな手法に切り替え…というか、乗り換えというか、接続というか、そんなふうにすることにしました。

手法は、「焼きなまし」という、いったん金属を高温にしたあとゆっくり冷ますことで、その組成が整って柔らかく(加工しやすく)なるということを利用するやり方です。

そうやって柔らかくして加工したあと、最後に「焼き入れ」ということで、あらためて高温にしたあとで水などに浸けて急冷する作業も必要になります。その焼き入れによって、硬さが取り戻されるということになっています。

加熱方法は、台所の流しの脇に耐熱レンガを置いてのガスバーナー加熱、目指すのは少し黄色っぽくなるという2000℃あたりだというのが、少しだけググって得たにわか知識です。

このときの加熱箇所は、直接加工する折り返し周辺のみ。

また、胴の内側に残っていたメーカーの紙ラベルは、ライターオイルに浸したら剥がれてくれたので、加熱前に剥がしてあります。

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先に試したときにはおそるおそるで木槌でしたが、今度はうちでいちばん大きなハンマーを持ち出しました。

(話は逸れますが、このハンマーは古道具で、それも200円だったみたいです。値段ラベルシールがついたままでした。そんなのばっかりですね…(笑)。 一緒に写っているやっとこも、そんな感じのものです。)

鍛金というと、「金床(かなとこ)」とか「当て金(あてがね)」という丈夫な支えの上でトンテンカントンテンカンとやるっていう印象を僕は持ってはいたのですが、木造アパートでそういうふうな作業もしかねるものでして、加工物全体を腿で支えて、叩く箇所は特別に裏側からはとくに当てずにやる、ということでひとまず始めてみたところ、「意外とこれでもやれなくはないのかな?」というふうだったものですから(もし当て金的な作業となると、そういう装備を持ってどこか河原とか広い公園とかにでも出かけることになるのかなあなんて考えていたのですが、それはすぐにはできないことですから)勢いを得た気持ちで、そのまま進めてしまいました。

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それで、少しペンチで曲げ戻したりもしながら叩きました。
微妙に斜めにあたる感じがコツかな? なんて感じつつ、うまく当たった感じがしたりしなかったりしつつ、いったん、それっぽいところまで進んだ頃のが次の写真です。

ペンチでの作業よりもハンマーでの作業のほうが表面もきれいに整う…どころか、ペンチ作業で生じたガタガタをあらためて整え直すくらいのところでもあって、もちろんもともとのセンタービード + ペンチ作業でここまで形状が出来ていなければハンマー作業も簡単ではなかったということも思うのですが、初手の選択は必ずしも正解でもなかったかもしれないです。

(きっとどちらだというのは難しいところだなー…。ま、今回は成り行きと、成り行きの記録ですので!)

それで、真っ直ぐっぽいものを当ててみても、横から見るところでは、割と真っ直ぐが続いています。

これ、良いのでは? 良いのでは??

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ところが、実は、問題がありました。

上からみたときの真円さ(真円度)が大きく損なわれているのでした。既成のドラムヘッドがスッとはまらず、無理をすればはまるけれどもこれじゃあね…というふうになっています。

スネアベッドがある下側は大丈夫なままです。

それと、ハンマーとやっとことで作業していて感じていたのですが、特にとても柔らかくなっている部分と、そうでもない部分とがありました。

というか、実はすごく柔らかい部分のほうが少なくて、実際は全周の一部分だけがそうでした。このことから、どうやら焼きなまし作業における、加熱が十分でなかったことも予想されていました。

それで、次の選択としては、「再加熱」・「再焼きなまし」ということにしました。それと、今度は全体を熱することにもしました。真円さを向上させるために、全体に体重をかけて押してみるというふうな作業も予想されたからです(ところがこれは、今回にはあまり良い形の整え方ではないようでした。コントロールが効かず、その前に整えたつもりのところまでダメにしたりしました。ハンマー作業中心で進めるのが良かったふうな印象です)。

というわけで、そんなこんなで、再ハンマー作業をしました。やはり、やっとこで差し戻しをしつつ、折り山上はハンマーの平たい側を主に使いつつ、折り返した面の上はハンマーの凸になっている側を使いつつ、ドラムヘッドをゲージ代わりに使いながら、作業をしました。

そうやって、木造アパートの台所でまたトンテンカントンテンカンだったのですが、ちょうどその日はアパートの他の部屋に改修の工事が入っていてそちらは電動工具ですから結構うるさい昼間でした。

ただ、うちだけがうるさいのとは違って、結果として、うるささも中くらいで済んだりしたのではないでしょうか? もちろん、ずいぶん自分に好意的な解釈をしていますけれども…。

そんな感じで、行きつ戻りつ、なんとかかんとか、既製品のドラムヘッドをゲージとした真円度判定ではまあまあ合格、折り山上の平滑度や直線度も(もちろんこれはニコニコ緩やかな基準ですけれども)オーケーのところまで進めることができました。ヤッター。

これで、焼き入れをしたら、形が歪んで、またダメになるというようなこともあるのかなあ。ないと良いなあ、こわいなあ、というのが、まだ焼き入れに進んでいない今の気持ちです。

(下のは記念写真というか、メモ写真というかで、実際には耐熱レンガの上でハンマー作業はしていないです。)

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話は変わるのですが、下の写真は「イブリック」というコーヒー用の小鍋です。うちではIHコンロをメインにするようになってから、よく使っていた頃のまま特別には大掃除もせずに放ってあったので見た目は汚れているのですけれども。

これは、内側は錫引きですが、全体は銅製です。それで、胴の部分に、タガネで掘ったような素朴な模様が入っているのです。 

これがね、好きな感じでして。

できたら今回のドラムもこれをヒントにした感じの装飾をできないものかなあ、なんて考えているのですが。

技術的なこと、ドラムシェルの薄板厚みからの適当さ(不適当さ)、それこそ形状歪みの原因になりはしないだろうか? ということ、今回のドラムシェル高さが小さすぎて装飾が入るには細長すぎて、似合う模様が見つかるだろうか? ということなど、問題ばかりなのですが、これがあるので、まだ焼き入れには進みません。 

もしかしたら検討したり検討しなかったりしているうちに、ぼんやり諦めてしまうかもしれませんけれども。

ひとまずは、表面に黒マジックペンで葉っぱ模様っぽいものを描いてみたりして、具合を想像してみたりしています。

(そうそう、どこだかのタイミングで、表面にはいったん荒くサンドペーパーがかかっています。特別強い理由はないです。お試し・成り行き、です。)

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話は戻って、ふたたび仮組みです。

今度は(もちろんドラムヘッドもスッとはまりますし)音も、前よりもずっとしゃっきりしています。折り山の形状(ドラムの用語としては「ベアリングエッジ」といわれます)が向上したことが良いふうにあらわれています。

フープ一式も、スネアワイヤも、何よりドラムヘッドも使い古しの品なのでそこからのこともありますが、ある程度ドラムヘッドを強く張らないと裏面の薄いドラムヘッドにスネアベッドまわりに大きくしわが出るとか、全体として整わないということは指摘できます。これらのパーツ同士がより馴染むとまた多少違うかもしれませんが、いまのところは、ハイピッチめのチューニングでしか「音にならない」というところがあるのです。

(話は逸れるのですが、ここにはありませんが、実は切ったもう半分もそのまま組んでみたのですが、そちらは切りっぱなしの板端そのままでも、またとても良かったです。そして「カッパーシェルのローピッチ」的なのが美味しそうでした。そちらはもともと、別の用途を考えていたのですけれども、「エー、これスネアドラムにするべき??」というような誘惑を感じてしまいました。どうしましょうねえ…。)

しかしですね、今回のこれは、なかなか良さそうですよ。ドラムセットの楽器としては、もしかすると音の性格として「オープンすぎる」というふうなことはあるかもしれません。だから、「これが2mm厚とかさらに厚いとかの板材だとどんなふうになるかな?」なんてことも考えてしまいます。それは、これがすでに悪いものじゃないからですね。つい、欲が出るというか…。

ただ、それならまず、これに、カイシャのフープ一式ではなく、ラグを使ったフープのインストール方法などを検討するのが先かなと思いますよね。ラグの、胴の内側には木製の薄板が当ててあるなんて感じの、オールドスタイルも悪くない話かも、とか。

そうだとしても、10テンションは嫌だな、ラグは8組か6組で、とか。

ラグは、木製で自作ということを視野に入れて部材の検討などはしていたのですが、pearl社の、リズムトラベラーや練習台に使われているこれなんかでも悪くなさそうですよね、とか。

シングルフランジフープ一式を揃える甲斐性はないなー、このカイシャ用のものを使ってラグ式にしても良いけど。トリプルフランジフープを避ける理由は、今回は特にないですしね、とか。

スネアベッドがあるからか、スネアワイヤは、キツめに張っても緩めに張ってもそれなりに「音になる」予感があります。そうなると、スネアスイッチの導入も考えたくなります。フープに金属板を当ててネジかリベットで付けて、そこにスネアスイッチが載るというふうなのはどうかしら? なにより、スネアワイヤのオンとオフとが使えたら嬉しいだろうもんなー、とか。

そんなこんなで、まだまだ意外と、出来上がりまでには、何も決まってないて感じです。

ただ、ここまではなんとか近い日程の中で進めて来たものの、ここからは放置が長くなるかもしれません。

だから、ここでいったん、成り行き作業をメモしておきます。「備忘録」という感じです。

けっこう長くなっちゃった。

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(16-MAY-2021 追記)

試しに、8穴のウッドフープをそれっぽく組むというか並べるというかしてみたのですが、これもまた、なかなか良い響きになりそうだなーというふうです。

ウッドフープなら、仮に、その周上にスネアスイッチがインストールされるということになっても、加工の大変さは低めで収まるかしら?

嬉しい悩みです。

どう進みましょうかしらねえ!

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(いったんおわり。)

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