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【イラン】強盗前科持ちのタクシードライバー

イランのシーラーズにバスで到着。時間は21:00を過ぎていた。タクシー配車アプリのsnappを使い、運転手を待つこと5分。やってきたのは、ボロボロでガス欠寸前の一般車だった。

通常は行き先をアプリで共有しているため、運転手が道に迷うことはないが、彼は違った。何度も何度も同じような道を通り、途中で車を停めては人に道を聞いたりしていた。彼と話をしていると、今週snappを始めたばかりだそうな。

イランは好きかと聞かれて、何も考えずにyesと答えると、彼はnoと言った。理由は仕事がないから。仕事が見つからず、snappをしているのだと言う。結婚しており、二人の子供がいるらしい。かなりの苦労者だ。

前は何の仕事をしていたのか聞くと、彼は自分の両手首をクロスさせた。逮捕されていたのだ。何をしたのか聞くと、次に彼はピストルと金のジェスチャーをした。強盗犯だった。話をしていくうちに、麻薬の話題になった。

15分程度で到着するはずの道程で、彼は50分も街を彷徨っていた。宿は入り組んだ道の中にあり、辺りには街灯がない。迷っている途中で、彼は車を止めておもむろにトランクに腕を伸ばした。この時、あぁ俺は運が悪かったなと心の中で金を渡す覚悟を決めていた。

彼の手を見ると、長方形の銀紙を持っていた。真ん中は茶色に焦げており、ヤバイぶつであることは一瞬で気付いた。彼は、助手席に体を倒し、銀紙を下から炙りながら、煙をパイプで吸い始めた。嗅いだことのないニオイが車内に充満した。すると同時に、ガクッと自分の脳みそが揺さぶられた。ものすごいスピードだ。副流煙でこんなにヒットするのか。

彼はヘラヘラと楽しそうに一発、肺に吸い込んで、「Iranian cocaine is best」と言った。(後日、サウジアラビア出身の旅行者にこの写真を見せたらコカインではなくハシシとのこと)

無事に宿の前まで到着し、彼から家に泊まってもいいよと招待を受けたが、宿のキャンセル代が勿体なかったため断った。彼の生活には物凄く興味が湧いたが、ジャーナリストでもなんでもない自分がどかどかと深いイランに入り込むは気が引けた。最後には、明日マリファナ持っていくから電話してと連絡先を渡された。

握手した彼の手はとても固かった。

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