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旧車は文化遺産

消費税増税にも慣れてきたでしょうか。いや、慣れても一年ちょっとすれば、さらに上がる見込みなので、8%を感覚的に慣れる意味はないかもしれません。

さて消費税にかぎらず、増税トレンド。たとえば自動車税は13年を経過したクルマにおいて約15%ほどの重課税と、従来の10%からさらに重くなっております。その一方で新車購入時にかかる取得税を減税したといいますが、エコカー減税で取得税が免税となるクルマが増えている昨今ですから、実質的には無意味な減税。
正直、この取得税減税の恩恵をもっとも受けるのは、エコカー認定を受けない高額車両(いわゆるスーパーカー)を購入する層でしょう。

さて、公式見解としては13年経過車の重課税、いわゆる旧車増税の目的は「グリーン化を進める観点」からといいます。たしかに、NOxやCO、HCといった排ガス規制値が昔は桁違いに高かったことを考えれば納得できない話ではありません。であれば年式ではなく排ガス記号で明確にしたほうがフェアになるだろうにと思うのは自分だけでしょうか。

閑話休題。

こうした旧車増税をして、自動車文化の否定などということもあります。たしかに古いクルマを維持するコストが上がるのは間違いないのですが、見方を変えると、大気がクリーンになっているのは、古い排ガス規制のクルマが減っているからともいえましょう。1000台に1台くらい排ガスが汚いクルマが混じっていても、ひどい大気汚染にはつながらないのも事実でしょうが、そうして旧車を走らせていられるのは999台のおかげともいえ、大気汚染に関してはフリーライドしているという面もある認識は必要だと思うのです。

また、日本の旧車増税のカウンターとして、ドイツの「ヒストリックカー減税」が挙げられますが、ドイツの自動車税[Kraftfahrzeugsteuer]は基本的に排気量とエミッションによって税額が変わる仕組みになっているはずで、その点では日本の「グリーン化を進める観点」からの増税と似ているともいえそう。
つまり、基本的には古いクルマは増税傾向にあって、その中で「ヒストリックカー」として認定される個体について減税しようという仕組み。この仕組みを日本に持ち込むことについてはウェルカムと思うところですが、少なくとも旧車全体を減税するわけではないという認識は必要では?

そして、ヒストリックカー減税のようなシステムを採用するということは、社会全体で自動車文化を守るという意味にもなります。

ここでポイントとなるのは「文化」という言葉の重さ。

いわゆる旧車文化はカルチャー(趣味的な領域)といえますが、社会として保護するということは、旧車は文化財になるともいえるわけです。すなわち個人趣味の範疇ではなくなり、好きなように愛車をイジることはできないということにもなりかねません。

自動車というものは走らせないと無意味な存在なのですが、旧車を文化遺産とするならば、事故のリスクが増える公道走行はできるだけ控えることが求められるかもしれません。ナンバーを切って(ナンバー付きでも公道走行を控えて)、それでいてクローズドコースにキャリアカーで移動するなどして、動態確認をするような保存しておくべきじゃないかとも思う部分もあり。もっとも一時抹消登録などでナンバーを切ると旧車増税は無関係になってくるともいえます。

しかし、抹消登録で動態保存となると、トヨタ博物館やホンダコレクションホールのような世界になってきて、アマチュアが個人の趣味で対応できるレベルではなくなります。ですが、文化財なのですから当然といえるかもしれません。個人で著名な絵画を所有できる富豪が限られるように……。そこまでシビアにならない範囲で旧車を文化として守るためには、はたしてどうすればいいのか。

そんなわけで「文化」という言葉を安易に使うのは、ともすれば息苦しい旧車趣味になってしまうかも、と思うのでした。ただし、個人の趣味のために減税すべし! という主張が社会で認められるはずもありません。趣味としての自由度を守るには、ある程度の負担をしていることが担保になるのかもしれないという見方も考慮しておくべきかも、などと思う今日このごろでありました。



タイトル画像は、あくまでイメージです(汗)


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