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イカナゴの生態、漁獲量の減少(兵庫県水産技術センターリーフレット「豊かな瀬戸内海の再生を目指して」より)

昨日のnoteで水産白書から「イカナゴ漁」について少し触れましたが、その元となったのは、兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センターの研究成果です。
この内容は、次のURLで公開されたリーフレットでその内容を知ることができます。

PDFファイルですが、タイトル未設定、文字もクローラーが読めない形式ですので、私も昨日初めてその存在を知りました。
いかなごのくぎ煮振興協会事務局長としてなんたる不覚(笑)。

ということで、noteでその内容をご紹介します。

以下、特記した場合以外、引用は兵庫県水産技術センターリーフレット「豊かな瀬戸内海の再生を目指して」から、図はそちらからのキャプチャー画像です。

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兵庫県立農林水産総合センター水産技術センターは、2015年から2019年の5カ年に「豊かな瀬戸内海再生調査事業」を実施、イカナゴ漁場の現地調査、既往情報の詳細な分析を行い、過去の環境(栄養塩、水温)を想定したシミュレーションを行ったそうです。
その結果、海域の貧栄養化が、イカナゴ資源の減少の要因と結論づけられたものです。

事業目的は次の通り
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瀬戸内海の水質は大幅に改良されましたが、養殖ノリの色落ちや漁船漁業の漁獲量の減少が続くなど、海の豊かさが失われています。その原因として生物生産に必要な栄養塩の減少(貧栄養化)が危惧されています。そこで本事業では、兵庫県の代表的魚種であるイカナゴを対象に、栄養塩と漁獲量の関係を明らかにすることを目的に調査研究を行いました。
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本事業では、海洋生物学、生態系モデル、水産学の専門家6名で構成される検討会を設置し、検討会の意見を踏まえて調査の実施と成果の取りまとめを行ったそうです。
メンバーは次の通りです(敬称略)
座長:名城大学特任教授 中田喜三郎
委員:高知大学名誉教授 上田拓史
   名城大学特任教授 鈴木輝明
   大阪市立大学教授 相馬明郎
   香川大学教授   多田邦尚
   京都大学名誉教授 藤原建紀

イカナゴの生態

以下の文章は全てリーフレットからの引用です。
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産卵

大阪湾、播磨灘のイカナゴは12月後半から1月上旬に、明石海峡に近い鹿ノ瀬、室津ノ瀬、須磨ノ瀬、沖ノ瀬など、潮通しの良い海底の砂に卵を産みつけます。
卵は約12日でふ化し、仔魚は海中を漂いながら成長します。
全長が3cm〜4cmを超える2月下旬〜3月上旬から「しんこ漁」が始まり、4月ごろまで続きます。
その後「しんこ」は夏眠を経て12月に満1歳となり成熟・産卵します。

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夏眠

イカナゴの生態の大きな特徴は海水温が高くなる夏は砂に潜って夏眠することです。
全長10cm前後に成長し、海水温が20℃を超える6月下旬から7月上旬に夏眠に入ります。

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夏眠場所は、産卵場と同じです。夏眠終了は水温が13℃付近まで低下する12月です。
夏眠期間は5ヶ月間を超えますが、その間は餌を食べません。また、夏眠期間中に卵巣や精巣が発達し、夏眠終了後は速やかに産卵します。子孫を残すためには、夏眠に入る前に餌を十分食べて、体にエネルギーを蓄えることが重要です。

食性

イカナゴの主な餌は動物プランクトン(かいあし類)です。成長につれて餌のサイズも大きくなります。大型種のカラヌス、シニカスが餌生物として特に重要です。

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漁獲量の減少

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播磨灘の主要漁協の「しんこ」漁獲量は減少が続いています。漁獲量と播磨灘の冬季(11月〜3月)栄養塩濃度(DIN)には明確な同調性が見られ、両者の関係は統計的に有意でした。一方、冬季水温は低いほど漁獲量が多い傾向が見られましたが、統計的に有意ではありませんでした。この結果から「しんこ」漁獲量とDINの関連が示唆されました。
※DINとは、溶存態無機窒素のことです。植物プランクトンが育つために必須の栄養塩です。リンも必須の栄養塩ですが、瀬戸内海は一般的に窒素不足とされています。

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釜揚げ「しんこ」の赤腹と青すじ

餌の動物プランクトン(かいあし類)をたくさん食べている「しんこ」は、茹でると腹部が赤くなります。これを赤腹と呼びます。

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餌をあまり食べていない場合は赤くならず青すじと呼びます。

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漁業者への聞き取り調査から、赤腹が少なくなっていることがわかりました。餌が少なくなっているためと考えられました。

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素人が読んでもわかりやすくリーフレットにまとめていただいています。
新聞報道を通じてだいたいは理解していたつもりですが、きちんとデータをみるとより納得性が高まりました。
栄養塩と漁獲高のグラフ、統計学を知らない私でも、相関関係が一目でわかる内容ですね。

とても勉強になります。
明日に続きます。

最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan