例えば、こんな男がいた。
　『俺がさ、良かれと思ってだよ。空気悪くなるリスクを充分鑑みたのちの口出しを咎めようとするやつ。お前が言うから空気悪くなるだろって。こっちもそのセリフの続きがあるのに。余韻も待たずにこの場を収めよう、収めようって。それに頭に来ちゃうんだ本当に。』

　それに私はこう答えた。
　『それは彼の思う壺だよ。いわゆる咎めフェチだね。そういう人は君みたいな口出しする人が大好物でね。場の空気を平穏に保つことに快感を覚えるんだよ。くちばしを入れさせたあとに自分が美味しいところを啄むってわけさ。まあ、私が彼から一番恩恵を受けてるんだけどね。』

　　　　　　　ブルーノ・ファイドゥッティ