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リュックのポケットに。


このあいだ知人の女性と話をしていたら、彼女の口からこんな言葉が出てきました。

常にその欲求を手に持ってると手がふさがっちゃって色々困っちゃうから、リュックのポケットにしまっておいてるって感じ

この時は、恋愛について話してたんだけど、なんかとっても心が動かされたのです、このフレーズに。

彼女曰く、「好きな人に会いたい」っていう気持ちはいつも持っているけど、でもその強い欲求を両手いっぱいに抱え続けていると、他のこととか考えられなくなるしそれは困るから、普段はその欲求をリュックのポケットにしまっている、と。

でもこの感覚って、恋愛だけじゃなくって、人生のいろんなことに通ずると思う。


困っていることとか、辛いこととか、頭を悩まされることとか、そういうことに限らずとも、喜びとか嬉しいこととか待ち遠しいこととか。

自分の心を強く揺さぶるような感情や欲求に、その瞬間を支配されてしまう時。

そのことだけを握りしめてしまって手がいっぱいになって、他のことが手につかなくなったり、集中力がおろそかになってしまったり。

そんなときに、自分を支配するような感情や欲求を、「リュックのポケット」にそっとしまっておく。


けっして、そういう感情や欲求を手放して「自分の外に捨て去る」わけではなく。そして、忘れ去るわけでもなく。

背中に背負ったリュックのなかにひとまずしまっておく。

だけど、入れっぱなしにしておくと、そして、次から次に詰め込んでしまうとすぐにごちゃごちゃになっちゃうから、自分が落ち着いているときにポケットからその思いたちを取り出して、整理をする。

なんて聡明な女性なんだろうと、心の底から感動したのです。



人間、生きていればそれぞれに、いろんな思いを抱えて、いろんな経験をして今日まで過ごしてきているわけで。

それぞれが背負っているリュックサックのなかには、外から見ただけではわからないようないろいろなものが詰め込まれているはず。

だけど、その「詰め込まれたもの」こそが、その人の人間性に奥行きと色彩を与えているわけで。

リュックサックの中身は、全てがポジティブなものばかりってわけじゃないだろうし、「こんな重い荷物は捨て去ってしまった方が楽なのに」って思うことも少なくないかもしれないけれど。

両手さえ空っぽにしておけば、ひとまず目の前の壁をよじ登ることもできるし、ふわふわと飛んでいる幸福を捕まえることもできる。かもしれない。



生きるって、すごい。






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