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「表現には正解がない」の危うさ



ツイートした通りなんですけど。

僕があんまり好きじゃないフレーズに

表現には正解がない

っていうやつがあります。

確かに一理あるな、と思わなくもないのですが、やっぱりその言い方は正確じゃないと思います。


正しくは、

表現には(絶対的な唯一の)正解はない

だと思います。

もう少し細かく言うなら、

表現には絶対的な唯一の正解はなく、その表現が成立する正解が複数存在する可能性が常にある

というのがいいと思います。

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「表現には正解がない」っていうフレーズを使う危うさは、その裏に「だから、どんな表現も間違いじゃない」っていう物言いが潜んでいることです。

これ、嘘じゃないですか。

表現のチョイスとしての間違いは、確実にあります。

ライオンキングのシンバが新演出でヘビになってたらおかしいじゃないですか。忠臣蔵の大石内蔵助の喋り方がギャルみたいだったら、それは違うじゃないですか。

そう思うと、表現に正解は「ある」のです。そして、「間違い」もある。


ただし、表現には「正解」が複数あることが多く、またその数も多いので、一見すると「これもアリだけど、これもアリなの!?」みたいな全然違う正解が同居できちゃうことが多い。

そこを抽出して「正解なんてないみたいなもんだよね〜」と認識されるのかもしれません。


あと、これまでの話は「完成形」の話でしたが、稽古場や準備の段階であれば、「表現には正解がない(いまのところは)」というのが成立します。

むしろ、「稽古場でのチャレンジにおいては間違いという概念はない」というのが正確でしょうか。

稽古場や準備の時間は、その作品や表現の正解を見つけるための大事な期間。そこではありとあらゆるアイディアが試された方がいい。

だから、アイディアを出して行動する前に「これは間違いだ」とジャッジしてしまうことをなるべく排除し、どんなにつまらないと思うアイディアもまずは試してみるというアグレッシブな姿勢が求められます。

稽古場での失敗は、失敗ではないのです。準備中の間違いは、間違いでないのです。


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「表現には正解がない」っていうフレーズを使う危うさは、その裏に「だから、どんな表現も間違いじゃない」っていう物言いが潜んでいることだ、とさっき書きました。

これを、意図的にないし、無意識的に使っている場合があります。

「表現には正解がない」んだから、「どんな表現も間違いじゃない」んだし、僕がやっていることも正しいよね

みたいな。

常に、シビアに、表現の正解を追い求めている人が言うのなら説得力がありますが、表現の正解を探索することに怠惰だったり、そもそもそれを探そうとしてない人が「表現に正解はない」的なことを言い出すと、僕の「キナ臭さレーダー」がピコピコ反応しちゃいます。

表現者同士、制作業界、そしてなによりお客様のためにも、「表現には正解はない」というすごーく誤解を生みやすいフレーズは、なるべく使わないようにしたいなーと、個人的には思っています。


表現には常に、複数の正解が存在する可能性がある。同時に、明らかな間違いも存在する。


そういうことだと思います。





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