俳優さん向けの音楽講座

去年の11月から月に1回、俳優さん向けに「音楽講座」というのをやっています。

仰々しい名前ですがなんてことはない、舞台なんかでご活躍の俳優さんたちに、楽譜の読み方をお教えするという講座です。

ミュージカルの現場ではもちろんですが、さいきんではお芝居の現場でも、劇中で歌をうたうってことが少なくないようです。俳優さんの中には、芸大卒の僕も驚くほどに歌の上手い方がたーくさんいらっしゃるのですが、案外みなさん、楽譜を読むということになると「ぜんぜんできないんだよね」とおっしゃったりします。

僕としては、それでも問題ないっちゃあ問題ないんだろうなと思ってて、だって、これまでそうやってお仕事をされてきて、その歌にお客様は心を動かされ、満足して劇場をあとになさっているのだろうから。

とはいえ、楽譜がもし読めたとしたら、そこから広がる新しい世界というのは、たしかにあるわけです。

音楽家にとっての楽譜は、役者にとっての台本とおなじ存在です。

役者さん、俳優さんのみなさんが台本の一語一句に注目し登場人物の性格や心情、戯曲の意図、時代背景を200%読み解き理解しようとするのとおなじように、音楽家はその楽譜にあるおたまじゃくしの組み合わせや、♯・♭といった記号から、そのキャラクターの性格や心情、作曲家の意図、その作品の世界観などを発見しようとします。

プロのクラシックの音楽家が楽譜から読み取る情報の、たとえば50%でも理解することができたら。俳優さんたちが劇中で歌をうたう際の、アプローチの根拠として、少しでも助けになるのではないかなと、そんな思いがあったので、この講座をやらないか?と誘いを受けたときに二つ返事で引き受けました。

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今日でこの「音楽講座」は第6回目を迎えたことになります。

じつは先月までの第5回までは、かなりハードでした。楽譜を読み解くときに知っていたい基本的なルールを、なかなかのハイペースで扱っていたからです。具体的にはこんなかんじ。

第1回 「音楽とはなにか」
第2回 「音符の種類とリズム」
第3回 「音と音の距離(音程の読み方)」
第4回 「音階と調性」
第5回 「和音の仕組みとコードネーム」

これを、各2時間でお教えしました。この無茶さ、音楽家の方ならわかっていただけますよね?笑

ただ、この進め方には意図があったのです。

僕としてはまず、楽譜を読むための「武器」というか「道具」というか、基本的な装備を真っ先に手渡してしまいたかったのです。

アルファベットが読めないのに、英字新聞が読めないのは当たり前。ゲームをスタートしたばかりでひのきのぼうしか装備してないLv.1なのに、最終ダンジョンで戦えないのは当たり前。

楽譜を読むときにも、まずは基本的なルールにひと通り「触れて」しまってから、じっさいの楽譜に向き合うことがとっても大切だと思うのです。基本的なルールに触れて、その存在を知っていればいいのであって、そのルールを一発で完璧に理解する必要はありません。

なぜこういうやり方をチョイスしたかというと、僕がそうやって楽譜を読むことを覚えたからです。

弾き語りをしたい一心でドレミも読めないのにコードネームと指の形だけでギターを覚えました。そのままずっとコードネームと雰囲気だけで歌をうたっていましたが、高校時代に音楽で大学受験をすると決めて、そこから正式なやり方で楽譜を読めるようになる必要ができてしまったのです。

ただ、僕がそこで救われたのは、ギターを弾くのに歌本みたいなやつをたくさん見ていたことで、音符の読み方ぐらいはその時点で理解できていたのと、コードネームと合わせて、和音の構造みたいなものもなんとなく知っていたということです。

この2つの知識だけを武器に、クラシックの声楽曲の楽譜をつっかえつっかえ読んだり、あるいは気に入った管弦楽曲のフルスコア(オーケストラの全部のパートの譜面が一緒になっている楽譜)を買って、曲を聴きながらそれを読み、分析なんかをしていました。そうやってくと、わからない箇所が何個も出てきて、その都度、どう理解したらいいのかの方法をそこで調べて学んだのです。

ちなみに、そんな風に書くと僕はすごい人みたいに見えがちですが、どちらかというと今でも人と比べれば、僕は楽譜を読むのが苦手で、遅いです。でもその作業が好きだし、楽しいです。

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楽譜を読むのって、すげえ難しいことだと思っている人、たくさんいると思うんです。読めないからって、音楽に触れることに強い精神的抵抗を感じている人も、少なくないと思うんです。

でも、たとえば、ドレミが読めなくても、五本線が引いてあるうちの、上の方に音符が集まってるのか、それとも下の方に音符が集まってるのかぐらいなことなら、誰でも読み解けると思うのです。

たとえば日本語の歌詞の曲で、その1曲のうちでいちばん高い音に、なんか白丸の音符が当てられていて、白丸はなんか音を伸ばす時間が長い音符だって知識を持っていたとして、そこの歌詞が「愛」とかだったら、ああなんか、愛ってことをすげえ強く言いたいんだな、みたいなことぐらいは読み解けると思うんです。

これがわかるって、すごいことだと思うんですよ。
ドレミ読めなくても、わかることって、本当はすごくたくさんあるんです。

だからこそ、ドレミを読めたらわかることって、それ以上にたくさんあるんです。

僕は、俳優さんが台本を読むのの、せめて50%ぐらいの精度で、楽譜も読めるようになってほしいなと思います。

あるいは俳優さんじゃないにしても、Twitterを流し読みしてるぐらいの気軽さで、いろんな人に楽譜と親しんでほしいなとも思います。

もし、楽譜を読むことに興味がある俳優の方がいらっしゃったら
y.unyou.y@gmail.com まで気軽にご連絡ください。相談受けます。


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