居心地のいいコミュニティを作るには?
質問箱、はじめてみました。
なんとも質問しづらそうな導入で質問募集してみたのですが、
ぽつぽつ質問がきて面白いです。
そこに、答え甲斐のある質問がきたので、note でじっくり返答してみようと思います。
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質問はこちら。
きっと質問してくださった方は、コミュニティを作ってるんでしょうね。あるいは、作りたい、と思っているか。
コミュニティ運営っていうのはとっても難しく、繊細なんだけど、人と人との出会いの場を生み出せるってことで、とってもやりがいのある活動だと思います。素敵なことに従事されていますね。
コミュニティを作る立場だと必ずぶつかるのが、「新しい人にどうアプローチするか」「新しいメンバーをどう参加させるか」という問題です。本当に悩ましい。
僕自身、コミュニティ的なものを作っては失敗して、という経験をいくつか積み重ねたことがあるので、その悩みの難しさはわかる気がします。
僕のライブにきてくださったのですね、ありがとうございます。楽しんでいただけたようで安心しました。
僕が僕のライブで気をつけていること、ちょっと書いてみますね。
ライブは誰のためにあるのか
ライブやるの、僕自身が楽しいのです。で、僕自身が楽しいからやる、っていうのもいいんですが、それだけだと自己満足で終わっちゃうのでその先をやっぱり考えたいと思うのです。
その先、を考えると「ライブは誰のためにやるのか」っていう問いが出現します。
僕としての答えはやはり、「来てくださるお客様のためにやる」というところに落ち着きます。
これ、当たり前で月並みな答えだと思うんですけど、よくよく冷静に考えてみるとこの答えじゃないような場合って、あると思うんですよ。僕の場合はライブですが、コミュニティ運営でも同じです。
「誰のためにやるのか」という問いに対して
・自己承認欲求を満たすため
・「人と人を出会わせる場を作れる自分」に浸りたいため
・その空間で誰よりも優位に立ってる自分が好きなため
みたいな「自分本位」な動機が根底にある場合って、けっこうあると思うのです。
それ自体がいけない、とは思わないですが、「参加してくれる人に楽しんでほしい」とか「居心地よく過ごしてほしい」っていう思いを大切にしたいのなら、この動機が前面に出ちゃうとよくないと考えています。
やはり、どこまでも、「来てくれる人が楽しめるかどうか、リラックスできるかどうか」に注意して、それが達成されることが自分の喜びに直結するような状態がいいんじゃないかなあと僕は思っています。
誰に焦点を当てるのか
「来てくれた人」と一言でいっても、そこにはさまざまな人がいます。
そのさまざまな人物の、どの層に焦点を当てるのかで、コミュニティの空気感は変わってきます。
若者に向けて、年配層に向けて、女性に向けて、男性に向けて、男女という二元論には収まらない性に向けて、都市出身者に向けて、地方出身者に向けて、低所得者層に向けて、高所得者層に向けて、ビジネスパーソンに向けて、子どもに向けて。
焦点の当て方には、さまざまなパターンがあります。
どれかひとつに絞ることで対象層に深く刺さるコミュニティにすることもできるし、満遍なく光をあてることで広く浅くリーチするコミュニティにすることもできます。
また、いくつかの焦点を組み合わせ、それぞれの比率に変化を持たせることもできます。
僕のライブは、僕の肌感覚ですが、初めてきてくださる人の割合が1〜2割、何回かきてくださる人の割合が2〜3割、ほぼ毎回or毎回きてくださる人の割合が5〜7割です。
そういう客層のなかで僕の意識としては、たとえばトークの内容を
初めての方向けの話題を60%
2回以上来てくださってる方向けの話題を30%
ディープなコアファンの方の話題を10%
ぐらいの割合で意識配分をしています。
何回も開催しているライブだと、お決まりのネタや鉄板のトークテーマみたいなものができてくるのですが、こういう話題を楽しめるのは2回、もしくは3回以上ライブに足をくださっている方だと思います。
もちろん「初めてきました!」という方でも、「そのコミュニティに特有の雰囲気」をアグレッシブに楽しめるタイプもいますが、多くの人は初めての場には緊張しますよね。
そこで「内輪受け」みたいなコミュニケーションだけが行われていると、疎外感を感じてしまいやすいのではないでしょうか。てか、僕自身がそう思うタイプだから。
もちろん、ずっと応援してくださる方や、何度もライブに足を運んでくださる方をないがしろにしてもいいと思っているわけではないです。根本としては、その場に集まってくださった全ての方にその時間と空間を楽しんでほしい。
だからこそ、その空間が初めてという方が少しでも早く馴染めるような話題や情報を、なるべく多めに提供しようと思っている、ということです。
で、こういう発想に僕が行き着いたのは、自分のルーツにクラシック音楽があるから。
クラシック音楽は新たな消費者を呼び込むことに必死なのですが、古参のクラシックファンの中には「〇〇版のベートーヴェンを聞いたことないなんて、クラシックファンとは言えない」みたいな思想を持っている方が一定数います。
「あ!クラシック面白いかも!」とか「もしかしたら興味あるかも」と思ってくださった未来のファンの卵がこのような排他的主張に出会うとどうなるでしょうか。
多くの場合、気後れしますよね。けっして気分のいい体験にはならないでしょう。
そうすると、クラシック音楽というコミュニティのファンになってくれたかもしれないその人は、きっと、クラシックのことを嫌いになってその場を立ち去ってしまいます。
これって、とっても悲しいことですよね。
クラシック業界の空気感を僕ひとりで変えることはとっても難しいので、せめて自分のライブ空間だけは、「初めまして」の人に優しい空間にしたいなと思っています。
どんなメッセージを掲げ続けるのか
コミュニティを運営する、となったら、ただ場を作るだけでなく、「その空間をどのようにファシリテートしたいのか」を考えることが大事だと思っています。
「どんな体験をしてほしいのか」
「どのようなスタンスでいてほしいのか」
「どのような緊張感を持ってほしいのか」
「なにを最終目的にしたいのか」
etc....
こういったことを意識しながらコミュニティ運営をしていくと、ただ漠然とその場を管理していくよりも学びがあります。
上の問いについて、僕は自分のライブにおいてはこんな答えを自分の中に持っています。
「どんな体験をしてほしいのか」
→ 音楽とつながり、ライブ前の自分よりも少しだけ、音楽が好きになってほしい。
「どのようなスタンスでいてほしいのか」
→ わがままでいてほしい。自由にその空間を楽しんでほしい。
「どのような緊張感を持ってほしいのか」
→ とはいいつつ、他のお客様もそれぞれに楽しめるような気遣いは大事。
でも基本的には、リラックスした空間を作り出したい。
「なにを最終目的にしたいのか」
→ みんなの帰り道での足取りがウキウキするような状態。
そんなことを思いつつ僕は、ライブの冒頭では意識をして「リラックスして聞いてくださいね〜」というメッセージを伝え続けることにしています。何回でも。
「リラックスしてね!」と言われて「はいそうですか、じゃあリラックスしま〜す」ってできる人はほぼいないと思いますが、それでもそう伝え続けることは大事だなと感じています。
なぜなら、ライブも中盤になった頃にもしも、「ああ、もう少し力を抜いて聞きたいな・・・」と思ったときに、「そういえば、リラックスして聞いていいって言ってたな」と思い出せるかどうかで、人間の行動や心理状態は大きく変わるから。
日常生活で同じことを何度も言うと「クドイよ!」と返されてしまうかもしれませんが、ファシリテートする立場だったなら、本当に伝えたいことがあるなら何度でも言い続けることが大事だと思います。
自分も楽しむ
と、いろいろ書きましたが、そういったことに試行錯誤した結果、自分自身がそのコミュニティにいることを苦痛に感じるようになってしまったら本末転倒。
じつはこのパターン、よくあると思うんですよね。
「私はみんなのためにこんなに考えてるのに!」
「こんなにいろいろやってあげてるのに!」
「どうしてみんな私の思いを受け取ってくれないんだろう」
「私、どうしてこんなことやってるんだろう・・・」って思うようになったら黄色信号。
そんな不満を胸の奥に秘めながら頑張ってみても、きっと参加者にはそのネガティヴな匂いが伝わってしまう。それはなんだか、悲しいし、コミュニティ運営の継続性も損なってしまう要因となるはず。
ファシリテーターもその場をちゃんと楽しんでいる、という状態、とっても大切だと思っています。
楽しむというのは「ウェーイ!!!www」となっているべきだということではなく。その時間に携わることで心地よさを感じているかということ。
どんなに小さくてもいいから、喜びや、楽しさや、学びや、ワクワクを感じられているか、ということ。
僕自身の話をすれば、自分のライブというかたち以外でも、ミュージカルのワークショップでの歌唱指導という立場などで、集団の中でリーダーシップをとる場面があります。
このときに、指導的立場、リーダーという立場であっても、その時間や空間を楽しめているのかということがとっても大切になってくると思っています。
前に立つ人間の楽しさやワクワクは、必ずその空間にいる人の身体にも伝播するから。
今回の質問をしてくださったあなたも、わざわざ、辛い思いをするためにコミュニティづくりをしたいと思っているはずではないはず。
「どうやったら来てくれる人が楽しんでくれるか、リラックスしてくれるか」を考えるのが大切だ!という主張と矛盾するように聞こえるかもしれませんが、「どうしたら自分も楽しめるのか」を考えることもコミュニティ運営においてとても大切な視点です。
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けっこう長々と書いてしまいました。
質問の答えになっているかどうかわかりませんが、僕が現時点で考えていることをアウトプットする機会にもなって面白かったです!
質問、ありがとうございました!!!!
読んでくださってありがとうございました!サポートいただいたお金は、表現者として僕がパワーアップするためのいろいろに使わせていただきます。パフォーマンスで恩返しができますように。