見出し画像

過去の自分より、いまの自分


いちど「自分が決めたこと」を変更するのって、勇気がいることですよね。

特にそれに、「誰かを説得した」という事実が付随していると余計に。

--------

たとえば、仕事のことや進路のこと。

「大学に入る前に医者になると決めたのだから」とか
「大学を卒業するときにこの会社で3年は頑張ると決めたのだから」とか。

あるいは、

「家族を説得してはじめたお店だから」とか
「親を説得して決めた進路だから」とか。

でも、生きていると何が起こるかなんてわかんなくて、昔そう決めた「そのとき」と、数年後の「いま」の自分はまったく違う人物のはず。

経験を重ね、人との出会いも重ね、さまざまな知識や知恵も得たときに、「昔のまんまの気持ち」でいられることの方が、稀です。

社会の状況も刻々と変わっていくし。


そうやって社会も自分も変わっているはずなのに、「あのときにああ決めたから」という事実に固執して、自分の目標や夢を変えなかったとしたら。

「決めた夢」と自分の現状とのギャップに、苦しむことがあるかもしれない。

--------

僕は、高校時代に「声楽家になる」と決め、音楽での受験勉強を開始し、東京芸術大学に入学しました。

在学中も、「一流のオペラ歌手になってやる(そして金を稼いでやる)」という思いを頑なに捨てずに、昔決めたでっかい夢を無理やり担いで、いま振り返れば苦しい思いをしていました。


大学卒業間近に、「いまの自分の実力だと、そのままオペラ歌手にはなれないかもしれない」という(自分にとっては恐ろしく目を背けたい)現実を受け入れ、「オペラ歌手」という夢に固執することをやめ、その夢を一旦脇に置くことにしました。

そこで改めて考えたときに気づいた気持ちが、「オペラじゃなくても、表現の世界には携わっていたい」という思いでした。

それで、モデルをやったり、ミュージカルをやったり、役者をやったり、シャンソンを歌ったり、ジャズバンドとライブをしてみたり、いろんな「表現」の場にチャレンジするという踏ん切りがつきました。


あのまま、「オペラ歌手になりたい」という昔決めた夢に固執していたら、出会えなかったことばかりです。

それに、あらためていま考えるとわかるのですが、大学卒業間近の頃の僕は、「そこまで、いますぐオペラ歌手になりたい」と思っていなかったようです。

いまの僕の正直な気持ちは、「40歳になるころからオペラ歌手としてのキャリアをスタートしたい。それまでに体を作ったり、人生経験を積んだり、歌の技術を磨いたり、他の表現の場で活躍したりしたい。」です。

バス歌手の僕が、20代そこそこで、王様や老貴族という役に対して自分の納得する声や演技でアプローチできるかというと、絶対そんなことないからです。

「全然ダメだ、全然ダメだ」という自己否定ばかりを抱えたままオペラだけに拘るより、自分の特性や能力を生かして、他の表現の場で研鑽を積んだ方が、未来の自分にとっての投資になると確信しています。

----------

ちょっと話がずれましたが、

僕があのとき「何が何でもオペラ歌手」という過去の夢に固執して、自分の現状への認識と抱くベき夢をアップデートしなかったら、ここ2〜3年でしてきたような経験は、できていなかったでしょう。

一度決めたことを完遂することも、大事ですが、それは、「自分の本当の心」から目を背けてまでやるべきことではないと思います。


昔の自分が決めたこと、の呪縛からは、一目散にのがれましょう。

いつも、その瞬間の自分に問うてみましょう。

「あなたは、本当は、なにがやりたいの?」

その答えが、昔と一切変わっていないなら、そのまま昔の夢を現在の夢としてアップデートして、ゴリゴリ突き進めばいい。

もし、答えが昔と変わっているのなら、昔の夢はさっさと脇に置いておいて、新しい夢に向き合うべき。行動をアップデートするべき。


いまの自分をないがしろにして、昔の自分を大切にするなんて、いまの自分がかわいそうすぎるので。


いまの自分を優先できない理由が、「昔、夢を実現させるために誰かを説得したから」だったなら、その呪縛からも自分を解き放った方がいい。

これだけ目まぐるしく社会が変わっている時代に、いつまでも考えが変わらないだなんてこと、ありえないはず。

昔といまと、自分の考えや思いが変化していることに気付いたら、昔説得した親や家族や友人にも、「いまはこう思っているんだ」ってことを正々堂々もう一度説明したらいい。


みんなで一緒に、いまを生きましょう。




読んでくださってありがとうございました!サポートいただいたお金は、表現者として僕がパワーアップするためのいろいろに使わせていただきます。パフォーマンスで恩返しができますように。